こんにちは、八王子市議会議員の相沢こうたです。
11月
・10月12日15時頃、都心の大停電がありました。原因は新座方面から都心へ送電している地中ケーブルが何等かの原因で火災を起こし新座~練馬、新座~豊島の間を結ぶ27万5千ボルト地中送電線の2ルート6回線全てが損傷したことによります。
地中送電という部門は私の専門だったので今回はこの事故に関連してお話をしてみたいと思います。
地中送電線という名前はなんとなくわかる方も一般的には通常あまり目にするものではありません。送電線として普段目にするのは鉄塔に布設している高圧(6万V,15万V,27万V,50万Vなどの電圧階級があります)送電線ですが、地域事情などで鉄塔による設備形成が出来ない地域には地下に管路やマンホール、洞道(どうどうと読みます)というトンネルなどを作りこの中に送電線を布設します。
前者の鉄塔を含めた一連の設備を架空送電線、後者の地中にあるものを地中送電線と呼びます。
両者の違いはいろいろとあります。架空送電線は被覆の無い裸線で空気が絶縁体ですが、地中送電線は設備が直接様々な物に触れてしまうため特殊な紙や油、ポリエチレンなどで絶縁されています。架空送電線はほぼ目視が可能ですが、地中送電線はほとんどが地中ですので目視できる範囲は限られます。布設のためには地中に前述した管路やマンホール、洞道などを作らなくてなりませんので建設費用は10倍から数十倍以上高くなります。また設備事故時の復旧時間や作業などを含めて双方を比較すると架空送電線の方が様々な面で有利なのですが、鉄塔の用地や電線下の保障などの地域事情、景観などから特に都市部では新たな架空送電線の建設はほぼ不可能な状況にあります。
そういった背景から電気の大消費地である東京都心への供給は地中送電線が主力で行われており、今回の事故はそのうちの重要線路が火災により切断されてしまった訳です。火災原因などは現在検証中、復旧方法も同様のようですが、復旧までには相当の時間が必要でしょう。
私が会社に入社した昭和50年代は日本の技術革新は凄まじく、間もなく突入するバブル期まで都内の電力需要の著しい伸びと都心の大きな建築物への電力供給に対応したりと地中送電線の布設がたくさん行われました。私はその当時、布設工事を担当する仕事をしていましたので寝る間もなく働き続けたことを今でも思い出します。今回火災を起こしたケーブルは35年が経過しているとマスコミで騒がれましたが、その当時に私が担当して布設した設備もそろそろ30年を越えようとしています。地中ケーブルの耐用年数はその種類や使用状況(電気をフルに流し続けていれば当然劣化は早くなります)、布設環境などによって違いますから一概には言えませんが、多くの地中送電線工事が集中した時期を考えると「そろそろ引替えが必要な」対象線路は山ほどあるのだろうと推測します。本来であれば計画的に引替えをすべきものであったはずが、バブル崩壊後の景気の低迷や福島第一原子力発電所事故の影響などにより進んでいないのが現状です。今回の事故に危機感を抱いているのは私だけではないはずです。
行政では最近、今後既存の行政財産をどのように維持していくのか、ということが徐々に課題となっています。向上させてきた市民サービスの質を下げないためにも公共施設を維持して行きたいところですが、そのためには莫大な改修費用が必要となるため非常に悩ましい課題となっています。また既に相当の年数を経過ししまっている水道や下水道の設備維持・更新は前述の電力設備と同様に莫大な設備量の敷設替えを視野に入れなくてはならず頭の痛い問題となっています。
生活向上や便利さを追い求めて様々に整備されてきた設備が徐々に世の中を圧迫し始めていることは紛れもない事実で、人口減少社会などの背景と合わさって今後の重たい課題となるのでしょう。都心部の電力供給信頼度向上のために整備を進めてきたもののレベルを下げるという選択肢は果たして許されるのだろうか、一度向上させた生活レベルを下げるという選択肢を国民は受け入れられるのだろうか、そういった判断が必要な世の中が目先まで迫っていると古巣での事故に鑑み強く感じた次第です。
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