八王子市議会議員

相沢こうた

KOHTA AIZAWA

相沢こうたの使命

こんにちは、八王子市議会議員の相沢こうたです。

2019年12月

〇令和元年12月議会の議員提出の意見書に「地球温暖化防止のため温室効果ガス抜本削減を求める意見書」が共産党から提出されました。この意見書の主旨は、日本の温室効果ガス削減目標を大きく引上げて、そのために石炭火力発電所の ①新設を中止 ②輸出を中止 この2点について実現せよ、というものでした。ちなみにこの意見書は12月17日の議会で反対多数で否決されました。

世の中はやっとCO2削減という課題に本格的に視点を向け始めましたが、具体的に何を実行すれば良いのかということを正しく理解していない方が多いので、例えば石炭火力発電のCO2排出量が多いらしいと、この意見書のようにそれを悪玉扱いし石炭火力を全廃するべきと騒ぎ、あたかもこれが最善の方法だという世論がはびこると、「そうかな・・」と思ってしまう人が案外多いのだろうと思います。しかし事はそれほど単純なものではなく、石炭火力に依存する日本や世界の電力事情を理解せずに答えは出せません。ついでに申し上げておけば、世論が正論だったためしは無いと私は思っています。
良い課題をいただいたのでCO2削減と石炭火力について私の思うところを記します。

〇2017年の数値で、日本は石炭32%、天然ガス40%、石油等8%でここまでが火力発電、全体の80%を占めています。原子力は3%、水力8%、新エネルギーとして東日本大震災以降に世間が導入に対して積極的であった太陽光や風力などは8%程度の割合となっています。このように日本だけを見ると「石炭火力が32%もあるのか、火力発電が全体の8割を占めているとは・・、日本は本気で取り組むつもりがあるのか」と思われる方が多いと思いますが、この傾向は世界に目を向けて比較すると実は全く異常な数値ではないのです。

相沢耕太議員

・世界の電力事情は各々の国で主力として利用している発電種別が異なっています。特徴的な国を挙げると、フランスは原子力発電で全体の7割以上を賄っており、更にこの電気を近隣の原子力発電撤廃政策を謳っている国に輸出しています(原子力発電撤廃は自国で原発を使わないだけというズルい考えの国があるのです)。また水が豊かなカナダやブラジルは水力発電が全体に占める割合がそれぞれ60%、63%と大きいなど、国情によって大きく異なります。改めて石炭火力に限ってそれが占める割合を見てみますと、中国は68%、アメリカは31%、インドは74%、石炭火力全廃を宣言しているドイツでも現在は39%を占めています。これらを世界全体の数値にすると石炭火力は38.5%、天然ガス23%、石油他3.3%となり、発電全体における火力発電の割合は65%近くになっているのです。

相沢
耕太議員

・世界の国々によってその内情は違いますので一概には言えませんが、現在ある発電システムだけで今後の電力事情を考えると石炭火力を急激に無くすことは無理だと思います。現代社会において電気は空気や水と同様に生活していく上で必要なものです(電気がいらない生活をしている国はもうほとんど無いのでは・・)。途上国で電化が進み使用量が増大していること、これをある程度貧富の差無く生活に密着して利用できるものと位置付けなくてはならないことを考えると、電気料金は安価でなくてはならない、この条件は外せません。石炭は安価であるため、これを使った電気代は高い価格設定にはなりません。中国は埋蔵量が豊富なため自国で原料調達がいくらでも出来て安価な電気が得られることになるので70%近くが石炭火力なのです。更に中国は10~20年先の自国の電力設備整備計画を打ち出していますが、見た目では石炭火力が50%を下回る絵になっていますが、全体の電力使用量が2~3割増加する予想の、その増加分を他の発電方式で賄うだけで、現行の石炭火力発電は継続して利用し全体に占める石炭火力の割合を減少させたように見せかけただけのものです。インドなども急激な人口の伸びに対応するために、設備的にも安価で建設工期が短い石炭火力導入による電力需要対応を図った結果、全体の3/4が石炭火力だという現状にあるのだと思います。

また再生可能エネルギーとして世間に期待された太陽光などの発電割合が伸びて来ないのは、発電が不安定であったり広大な敷地を要する割に発電量が少ないなど実用に向いていない部分があり、それを払拭することが出来ないからで、現状以上の普及にはコンパクトで大容量で安価な蓄電池が開発されるなどの画期的な技術革新がされるなどが必要で、この条件が短期間で劇的に改善されることは考え難いことだと思います。

・石炭埋蔵量が豊富であったり、生活レベルや様式など様々な理由から、この国では未だに暖房にコークスを使用している家庭が多くあります。CO2排出量はもの凄い数値だと想像します。

相沢
耕太議員

・さて日本の環境の現状を見てみますと、大気は随分と綺麗になったと思っています。私が子どもの頃、もう50年近くも前ですが、夏はいつも光化学スモッグ注意報や警報が発令されていましたし、川崎市などの工業地域での大気汚染がニュースになっていました。また工業地域の海は汚く、臭い川も多かったと記憶しています。渋谷工務所に入社した時分(昭和50~60年代)は都区内を流れる目黒川や神田川などはかなり臭かった印象があります。現在は火力発電所の排気システムの性能などは当時とは比較にならない厳しい基準を更に上回る性能を誇っていますし、その発電効率に関しても1970年代の姉ケ崎火力が42.7%だったものが、2008年の川﨑火力1号系列58.6%、2016年の同2号系列では61%と向上しています。この川崎火力2号系統では従来のタイプに比較して30%のCO2排出量を削減したと発表しており、総じて発電効率の向上はそのままCO2排出量の大幅な削減に直結します。様々な分野での技術革新が汚染されていた当時からの環境改善につながっています。ちなみに世界の火力発電所の発電効率はインド30.6%、中国32.7%、米国38.1%です。

・ここで温暖化問題を冷静に考えてみていただきたいのは、これは日本温暖化防止ではなく地球温暖化防止、地球環境問題である、ということです。この点を視野に入れて考えると、日本が保有する効率的な石炭火力発電技術を世界的に活用することが出来れば世界的規模でCO2排出量を減らすことが可能になります。石炭火力発電の効率を世界的に改善することで、地球規模でCO2排出量を効果的に減らすことができるということになる訳です。資源エネルギー庁の試算によれば、中国・インド・米国の3カ国に日本の石炭火力発電のベストプラクティス(※ある結果を得るのに最も効率のよい技法、手法、プロセス、活動などのこと)を普及させるだけでCO2排出量は年間15億2300万トン削減させられるという数値が示されています。この排出量は2015年度の日本の温室効果ガス排出量13億2500万トンの115%に相当するのです。地球環境問題解決のためには日本の技術が必要であるということが言えますので、意見書にある「石炭火力発電所の輸出に反対」という発想は愚かなことだと言えます。

・近年の日本で課題となっている国内での新たな石炭火力発電所建設反対についても触れておきます。石炭のほぼ全てを輸入に頼っている日本では、その燃料費を極力削減する目的があるので燃料効率改善など石炭火力発電に対する技術革新が進み、それがCO2削減にもつながっているのです。高効率発電技術を向上させた石炭火力発電所を国内に建設し、その技術革新を更に進めることが地球温暖化防止対策に役立つことになります。国内に新たな石炭火力発電所建設を許さないということは、世界を救える技術革新をストップさせることとなりますので、その議論は成り立たないのです。そもそも新たに建設される火力発電所は既存にあるそれらよりも遥かに高効率でCO2の排出量は少ないので、原子力発電所停止に伴って仕方なく稼働させている老朽化した火力設備よりも余程環境問題に有利です。目先のことにとらわれて課題全体を見る目を逸している世論に左右されてはいけないと申し上げておきます。

・原子力の言葉が出ましたのでこれにも触れておきたいと思います。東日本大震災以降、ほぼ全ての施設が停止している原子力発電の現在の日本の全電力に占める割合は3%程度です。原子力発電はCO2の排出量はゼロであり、膨大な電力量を生み出しますので地球温暖化防止の視点からは推奨されるべき発電方式です。政治家や環境省、経済産業省もそろそろこの問題に背を向けてばかりでは済まない時期だと腹をくくって議論していただきたいと思います。そもそも原発再稼働の見通しが全く不透明であることが石炭火力新設計画の背景に大きく影響しています。将来の日本の電源構成を明確にして地球温暖化防止問題にも適確に対応するためには原発を含めた幅広い視点での検討が必要です。

・理想論ばかりを述べていても世の中は良い方向には進みません。人々の生活という現実があり、そこに理想論をどこまで反映できるのか、地球温暖化防止やエネルギーの課題はまさしくそういう視点での議論が必要なのだと思っています。

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