八王子市議会議員

相沢こうた

KOHTA AIZAWA

相沢こうたの使命

こんにちは、八王子市議会議員の相沢こうたです。

2019年9月

〇9月8日から9日に掛けて関東地方を直撃した台風15号により広域停電が発生しました。この原稿を書いている9月13日現在でも千葉県の20万世帯が依然停電しています。渦中におられる方々に対しましては電力に携わる者として申し訳ない気持ちでおります。

全県に渡って停電した千葉県の停電が、まさかこれほど長期間に及ぶと予想出来た人はいないと思います。千葉県の過去数十年の災害を見ると、昭和62年の千葉県東方沖地震で大きな被害が出ていますが、数年ごとに台風による河川の氾濫、浸水被害は出ているものの、割合い穏やかな印象のある地方です。何よりも東京都に隣接しているという土地柄もあり、住んでいる方々にしても長期間停電はまさかの出来事でしょう。停電になると当然ですが電気で稼働している設備は停止してしまいますので、水道、電話、下水道などのライフラインが止まる他、ガソリンスタンドなどポンプが動きませんので給油も出来ません。自家発電がある施設もその燃料をこれほどまでの長期間を想定して準備していませんのでほとんどのところが停電当日に燃料切れしてしまっていると思います。一般の人が普段の生活の中で普通に使用している照明、テレビはもとより、空調はクーラーに止まらず扇風機すら使えません。台風が来るという時には、ある程度の停電や交通機関の障害、樹木の倒壊などはあるのだろうと覚悟しますが、今回のようにこの生活が1週間以上も続くことは「そうなるかも知れない」と言われていても本気で受け止められないと思います。

相沢こうたの使命

・送電鉄塔2基の倒壊があったものの長期間停電の原因はほとんどが配電線の損壊によるものです。電柱は風速40mの風が10分程度継続して吹いても耐え得る強度を持っているとお聞きしますが、今回千葉県で観測された最大瞬間風速は57.5mであり、また風の吹き方は地形や建築物によって渦を巻いたり向きや角度が変化したりと一定ではないため基準値を遥かに超えた力が加わった場所があったことは想定できます。また電柱が単独で損壊した場所に加え周辺の樹木が倒れて電柱をなぎ倒したり電線にもたれたりした場所も多いようです。倒木は電気設備を損壊させてだけではなく、道路上にも多く倒れているため設備事故現場にたどり着くことすら難しい場所も多くあると想像できます。山林の管理はなかなか手が回るものではないのはどこの自治体でも同じですので、道路沿いの山林の管理は今後災害対策上の大きな課題となるでしょう。いずれにしても現地では東電や関電工などの東京電力管内の手のみならず全国の電力会社や協力会社の方々の応援をいただき、寝ずの復旧作業にあたっておられますが、これだけ長引くと現場作業にあたられている方々の安全や健康が心配になります。現場での事故がないことを祈っています。

相沢こうたの使命

〇なぜこれほどまでの被害が出てしまったのか、テレビのワイドショーなどでは「四国や九州ではもっと台風が来ているのに大丈夫じゃないか、東電はきちんと仕事をしていないのではないか」「福島原発の処理に金が掛かっていて東電は地域の保守点検に掛ける費用が無いのではないか」etc・・ などと勝手なことを言っていますので、少しきちんとしたことをお話ししたいと思います。

・9月12日の日経新聞に「東電が送配電関連の設備投資を抑制したことが電柱の老朽化を促進し今回の倒壊を増やした原因」という記事が載っていました。確かに設備投資額は激減していますが、そもそも電柱の老朽化はどのように判断しているのだろうか、とまずはこのことから触れたいと思います。
 私は配電部門の出身では無いため、その部門の優秀な後輩にお話しをお聞きしました。 耐用年数は42年という話しもありますが、これは原価償却の年数で電柱の性能とは違います。電柱の性能上の寿命はある文献によると53年とも言われていますが、設備の設置環境や使用環境によって異なり、電柱を形成しているコンクリートの中性化やヒビ、内部の鉄筋の腐食などによる強度の低下は一概に何年と言えるものではないということです。地震などで折れはしなかったがヒビが入った、というような場合、この部分からの浸水などにより劣化が進み、予想している年数持たない場合も当然ありますので、日常の点検などで電柱のヒビや敷設地状況などを把握しておくことは大事なことのようです。もしかしたら千葉県は海に近く普段から海風が吹く土地であるためコンクリートや鉄筋の劣化が基準よりも早いのかも知れませんし、過去の地震や台風の影響で目に見えないところで劣化が進んでいたものがあるかも知れませんが、それは今後の検証の結果を見ないと何とも言えないことだと思います。

・東電の設備投資額は全社で25年前の5分の1程度に減少しています。これは東日本大震災の福島第一原子力発電所の事故のせいだと考える人がほとんどだと思いますが、そのせいだけではなく政府の電力自由化という悪政が大きく影響しているとはっきり申し上げておきます。2014年1月に安倍総理はスイスのダボスで次のように発言しています。「昨年終盤、大改革をいくつか決定しました。出来るはずがない、そういう固定観念を打ち破りました。電力市場を完全に自由化します。」この話しの時には同時に医療を産業として育てるとか、コメの減反を廃止するなどとも述べ、既得権益の岩盤を打ち破ると威勢の良い事を言っています。要するにエネルギーや医療、農業などを外資に開放することをしたかったのでしょう、国民の安心安全な生活のことなど全く考えていない無謀な政策に舵を切ってしまいました。これによる電力自由化、発送電分離、発電・小売りの競争市場化、これが電力の安定供給が不可能な状態を作ったのです。電力が自由化される以前の日本の停電時間は年間6分程度と世界最高水準の安定を誇っていました。設備投資せずにこの数値は得られません。電気の価格が高いということであれば、電気のそれはその昔から電力会社の勝手では決められない制度設計になっているのですから国が電力会社と調整して下げる努力を強いれば良くて、国民の安心を脅かしてまで自由競争にする必要があったのか、今でも納得がいきません。発電、小売り参入者は中間の設備に責任は持ちません。託送料金という設備を使用する料金を払うのみで、送配電設備の維持管理は全て既存の電力会社の責任です。既存の電力会社はお客様を取られることで電気の売上高は減少の一途をたどり、設備の維持の負担のみならず、系統計画などに全く無関係・無責任に作られる新たな参入者の送配電対応や、これも構わず導入される自然エネルギーの不安定な部分のバックアップなど、本来は計画的に行ってきた系統運用に基づく設備形成や設備更新などが全て崩され、お金も無く、安定供給のための取組みが全くできていません。

・今回の千葉県の停電に対して安倍総理は、全力を尽くして早期復旧に努めるとおっしゃっておられましたが、そもそもは自分が舵を切った電力自由化と今回の大停電は無関係ではないことをお考えになられるべきだと思います。来年はオリンピックですが、都内の電源線は地中ケーブルだから大丈夫、などと考えない方がよろしいかと思います。何しろ設備投資出来ていませんので古い年代の設備が相当残っていますし、万一設備事故が起こったら地中設備は事故復旧に架空線の数倍から数十倍の時間を要します。もちろん私も何事もない事を祈っています・・祈ることしかできない状況ですから。

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