政府の成長戦略を踏まえた農地の集約化の推進について
◯第5番(田中孝典君)
私も自民クラブの一員として、市長に御当選おめでとうというふうに申し上げさせていただきます。また、少し違った面から私はお祝いの言葉を述べたいと思いますが、それは、正直に申しまして、退職金とかそうしたちまちまとした金額のことではなくて、私の周りでは、市長、今度の4期目、ぜひしっかりとした仕事をしてほしい、お金に見合った金額、あるいは私たちはお金を、ぜひ市長、24時間365日働いているんだから、ぜひその金額を市民に2倍、3倍に還元できる、そうした仕事をしてほしい、そういう声が大いにあるということを伝えさせていただきたいと思います。お金に見合ったというよりも、それを2倍、3倍にする仕事をぜひしていただきたいということをお願いして、私は質問に入らせていただきます。
安倍総理は、成長戦略の第2弾として、企業の設備投資70兆円、新技術創出企業への規制緩和、農家所得、農産物輸出の倍増を発表されました。これらの中で、特に農家所得の倍増について、その根幹となるのが、小規模農地を集めて生産コストを減らす取り組みだとされました。農地の貸し借りを仲介する新しい機構、(仮称)農地中間管理機構を2014年度までに都道府県単位で創設、各地域で散らばっている狭い農地や耕作放棄地を所有者から借り、広い農地に整理して、農業参入意欲の高い企業、団体や経営拡大意欲の高い農業経営者に貸し出すというものです。私は、この施策を何としても実現していただきたいと願うものです。
現在、農地集積の機能は、岐阜県では一般社団法人岐阜県農畜産公社が担っています。全県下を対象にしての実績は、過去5ヵ年の平均買い入れ面積が0.74ha、売り渡し面積が1.1haとなっています。この間の移動には、長期保有地0.6haがこの数字の中に含まれています。全県下ですよ、全県下を対象にして、たったこれだけです。また、本市の農地の売買実績はその中には全くありません。これでは機能しているとは言えません。社会的ニーズの高まりと組織、制度が全く現状ではマッチしていません。
その一方で、日本の農業はTPP参加、不参加に関係なく、今や衰退の一途をたどっています。農業にかかわる人は減り続け、就業者250万人の平均年齢は66歳を今超えています。39歳以下の若い新規就農者は、数ではふえていても、低い収入などを理由に離職も早く、定着するのは年に1万人ほどです。この数字は、農業が産業としてこの国に継承されているとはとても言えない状況にあることを示しています。本市の状況に目を転じてみれば、例えば平地の農業では、水田機能の基本である用水と排水の分離がいまだ進んでいない水田が随所にあります。今回の政府の打ち出した農地集積は集積後の農地機能の拡大への支援も含んでおり、日本の財政状況を考えれば最後の構造改善事業になるかもしれません。今回の農地集積施策は、用排水を完全分離した1町歩ないし3町歩程度を基準面積とする農地を形成する最後のチャンスではないでしょうか。
本市の耕作放棄の状況は、平成20年度24.80ha、21年度22.89ha、22年度21.2ha、23年度14.86ha、24年度16.7haとなっています。一見減っているように見えますが、そこに耕作放棄という用語のマジックが隠されています。農業委員会の必死の要請を受け入れて、ぼうぼうに生えた雑草の刈り払い等を行っていただいた場合は、耕作の意思がありとされ、放棄の対象から外れます。草は刈り取られて一見きれいになりますが、耕作行為依然としてなし、耕作行為なしの状態は続きます。本市だけでなく、全国的にこうした隠れ耕作放棄地は拡大していると考えられます。隠れ耕作放棄地は、土地所有者が土地の草を刈ろうとする善意であるだけに悲しい結果を生んでいます。周りに迷惑をかけてはいけないという思いで草刈りや除草、水路維持等をされますが、作物を栽培していないので一切収入はありません。支出がただ重なるだけです。善意であればあるほど家計は細っていきます。放棄してしまえば、家計面では税金を除けば支出はありません。
そして、さらに中山間地域では獣害が倍々でふえているのに、対策が後手後手に回っています。岐阜県において、鹿の害だけをとってみても、2007年度が1,900万円余りだったのに対し2011年度では4,200万円となっており、この5ヵ年で2.5倍にふえています。これは作物の被害額ですが、これに防護柵などの資機材、おりなどによる捕獲駆除費は年々かさむ一方であり、農家の体力も気力も奪われつつあります。
また、温暖化による気候の変動は、過去になかった規模の集中豪雨を引き起こしています。時間当たりの雨量も、年間の発生回数も、統計をとり始めて以来初めての規模で毎年発生しています。ことしも、統計をとり始めて以来初めての規模という言葉も何度も聞くことになるかもしれません。単純に言えば、毎年毎年前年を上回る規模で、温帯から亜熱帯に日本が突入しつつあるということです。
こうした状況にある中で、耕作の縮小や放棄、この放棄というとあたかも従事者に責任があるようで問題の本質がそれてしまいます。正確には、農業からの離脱、あるいは転業、廃業が正確だと思います。それは農地の荒廃、山地の崩壊を生み、河川の崩壊を通じて、やがて都市部に被害が拡大していくことは自明の理であります。
昨年9月の集中豪雨による甚大な被害を受けた上石津地域では、本当に皆様の御理解、御支援を得て今46本の災害復旧工事が進められてきました。その中で、公共河川の復旧工事は13件、率にして28.3%を占めています。新聞等で谷間の急傾斜地の土砂災害が大きく載って山の被害のようにイメージされていますが、実は今、河川もぼろぼろに痛めつけられています。公共河川の被害は、下流域における農地や居住地の被害に直結するものであります。このような災害が全国で頻発するようになっているのが現実です。
近代産業成立の過程で、日本は農業や林業、水産業の持つ国土の保全、安定のための機能を忘れ去り、ただただ商品生産をするだけの視点でしか見なくなりました。どこからであろうと安く買えればよいという短絡的な思考が国内農林水産業を衰退させ、国土の崩壊を加速させています。国土の防衛という視点を含めて農林業を産業化しない限り、山林、平野、河川の崩壊はますます進行するでしょう。そして、このままではさらにTPPが追い打ちをかけることになってしまいます。
農業を維持し、所得を倍増させて、若い就農者をふやすためには、農業を農産物の生産だけにとどめず、加工、販売まで手がける、いわゆる六次産業化が注目されています。消費者と生産者が直接意見を交換して、双方の思いが商品として結実するとてもよい取り組みです。しかし、今までの農業はその視点も仕組みも必要としてきませんでした。さらにこれからは農業体験ツアーの運営や太陽光発電などの循環型エネルギー事業への展開、国内外の観光客の積極的な受け入れ、健康、福祉、医療事業への農業の連携を進めなくてはならないと述べられています。これらも今までの農業には全くなかった分野です。全く新しい発想で農業を経営することが求められています。これまでは農業機械の操作や効率化、優秀なオペレーターの育成ばかりに心を奪われてきましたが、想像できないほど圧倒的な規模の差が海外とはあります。
今、農業に必要なのは、この規模の差を直視し挑戦する意欲があり、かつ新しい分野を開拓し、継続し、やがて収益を上げる経営能力を持った若い農業経営者、あるいは農業会社です。その経営が成立するには、小規模高齢農家の分散のままでは余りにも条件が違い過ぎて、到底未来志向の農業経営など実現できないというのが現状です。ここに小規模農地の集約の根本的な必要性があります。規模拡大とコスト減が最終目標ではなく、意欲ある経営者に農地を、目指す経営に必要とする規模でスムーズに提供し、雇用と収益を生む新しい農業に道を開くことに真の目的があります。すぐれた経営者抜きにこれからの農業は考えられません。政府のこうした成長戦略を踏まえた農地の集約化の推進について、本市の見解と今後の取り組み方針をお伺いします。
◯議長(林 新太郎君)
市長。
〔市長 小川 敏君 登壇〕
◯市長(小川 敏君)
政府の成長戦略を踏まえた農地の集約化の推進について御答弁申し上げます。
現在、政府では、雇用と所得が拡大する強い経済を取り戻すため、大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略という三本の矢を同時展開しております。農業分野の成長戦略では、今後10年間で農業・農村の所得倍増を目標とし、六次産業化の推進や農林水産物、食品の輸出額の拡大、農地の集積・集約化による生産性の向上に取り組むことなどが示されております。
こうした中、本市におきましては、認定農業者経営支援事業や耕作放棄地解消事業などにより担い手への支援を行い、農地の集積・集約化や耕作放棄地の解消に努めているところでございます。また、昨年度からは、国の施策により、地域の農業者が主体となり担い手への農地の集積・集約化を具体的に進めるため、市内20地区において人・農地プランの策定を進めております。今後は各地区の人・農地プランにより担い手の育成を図るとともに、農地の集積・集約化による生産性の向上に取り組んでまいります。
いずれにいたしましても、政府の成長戦略の中で農地の集約化を含めた具体的な施策が検討されており、こうした動向も注視し本市の農業施策を進めてまいりますので、御理解賜りますようお願い申し上げます。
◯議長(林 新太郎君)
5番。
〔第5番 田中孝典君 登壇〕
◯第5番(田中孝典君)
ただいまは、御答弁ありがとうございました。
ただ、若干のずれがあると思います。というのは、政府がなぜ今回成長戦略の第2弾の中に根本的な農業のあり方を変えようというふうにしているかというと、これまでの農業では、今市長の答弁の中にもありましたが、効率を上げる、あるいは生産能力を伸ばすということでありましたが、今求められているのはそれをどう伸ばすか、どの方向へ伸ばすか、何を売るかということです。
そうした力が必要です。ですから、優秀なオペレーターは今日本全国にいますが、この農地の中で何を生産し、今ある所得を1.2倍、1.3倍にどう伸ばして、それを土地所有者であったり農地の提供者に還元していくか、そうした発想のできる、そういう農業が今必要とされている。優秀なオペレーターをどのように一番最適に配分してどのようにつくっていくか、何をどうつくっていくかという、まさに会社経営する能力が今農業に問われているということです。それをしない限り、本当に今まで1反当たり6俵つくっていたのを8俵、8俵を10俵、10俵を12俵という生産効率競争だけに陥ってしまう。ところが、それがカリフォルニアなんかでは右から左まで見渡す限りが農地で、1日の作業が8畳・8畳の16畳の機械が片道を行って、お昼に昼御飯を食べたらそのまま戻ってくる、それが1日の作業だというような農地が平均的な農地です。そうしたところと戦っていかなければならないということを直視すべきです、私たちは。農地の集約化の推進は、そうした単なる集約型の農業に対して、日本ではどういう農産物をつくって人々に買っていただくか。そのために工夫のできる意欲と能力のある農業経営者、あるいは企業が大切であり、それをいかに本市に呼び込むかが今課題になっていると私は考えます。
若くて有能な農業経営者や企業は、全国で今取り合いとなっています。そしてまた、各種の施策の中で、例えば鳥取県倉吉市では、遊休農地解消に市単独で助成を上乗せしています。よそがやってから、岐阜県が指示してからでは私は遅過ぎると考えています。農地の集積化に本市独自の支援施策を上乗せして、日本で一番農業をやりやすいところが大垣だ、だからみんな、大垣で農業をしてみないかという、それぐらいの意欲で取り組んでいただきたい。そうでなかったら、全国から優秀な人材は集まりません。国の施策に追随するだけではなくて、本市独自の上乗せ施策を検討すべきだと考えます。この点について見解をお聞かせください。
◯議長(林 新太郎君)
市長。
〔市長 小川 敏君 登壇〕
◯市長(小川 敏君)
農地の集約化の促進ということにつきましては、今も認定農業者経営支援事業ということで、国に対し市の上乗せ補助もさせていただいているわけでございますが、競争力のある農業が必要でありますと同時に、また工夫と意欲のある農業経営者が来てもらえる、そういった市独自の施策を今後とも研究してまいりますので、御理解いただきますようお願い申し上げます。