「森林医学と温泉を組み合わせ本市独自の健康施策の構築を」
私は、これから市民の健康と福祉のために、かみいしづ温泉・湯葉の湯と里山地域を活用する施策を提案します。
遊びたい、食べたいという元気な市民たちばかりでなく、病気の不安におびえる多くの高齢者、寝たきりになるまいと必死にリハビリに励む介護受給者、将来の生活が医療費の負担で崩壊してしまう不安にさいなまれている若者夫婦、がんや糖尿、高血圧などの苦しみを少しでも和らげたい患者さん、このような市民の方々も大勢注目して今回の私の提案を聞いてくださっています。市長の目にそうした人々の姿が映っていると信じて提案いたします。
2012年9月10日午後8時、テレビ東京をキー局に「主治医が見つかる診療所・大反響!元気で病気知らずの免疫力アップ法」という番組が全国放映されました。そして、大きな反響を呼び起こしました。ここで紹介されたのは、森林医学研究会代表で日本医科大学准教授の李先生の御研究です。李先生の御専門は環境免疫学で、番組で紹介された内容は、森林浴を定期的に行うことによって、人の血液中の免疫細胞であるナチュラルキラー細胞、略してNK細胞の活性が高まり、その結果、抗がんたんぱく質の量が人の血液中で増加することをフィールド研究で証明したものでした。今、私はフィールド研究と言いました。李先生は、一般的に森林浴は体によいと感覚的に語られる中で、それが実際にどのような内容でどれくらいの効果があるのか、また森林に特有の成果なのかなどを、東京都内の大手企業3社の男性会社員12名、35歳から55歳の協力を得て研究を進め、具体的に数値として成果を示されました。それは、2時間から4時間程度の森林浴を2日間行うことによって、先ほど述べたNK細胞が活性化し、その効果が1ヵ月間続くというものです。そして、さらに条件が整うならば、森林浴後、温泉に入ることを勧めるというものです。
私は、去る11月19日に李先生にお話を直接伺うことができました。この日は前日にロシアの招待講演から帰られたばかりで、午前10時から大学で打ち合わせ会議を行い、午後からは学生の実習に入るというハードなスケジュールでしたが、その合間を縫って貴重なお時間を割いていただきました。先生は、これまではイメージが先行していた森林浴が今や森林医学として研究が深まってきていること、アメリカ、カナダ、ドイツ、北欧など世界各地で森林浴の健康効果を科学的に検証する研究活動が盛んになっていることを述べられました。
ここで、改めてかみいしづ温泉・湯葉の湯の泉質について確認させていただきます。平成19年7月8日に地元市民の学習会において、下呂温泉博物館名誉館長で温泉学の第一人者である古田靖志先生はこう話されています。「かみいしづ温泉「湯葉の湯」は、適度な食塩と少量の重曹」、すなわち炭酸ですが、これを含む「弱アルカリ性の温泉であるため、身体にべとつくことがなく、温まりやすく湯冷めしにくい理想的な療養温泉です」。また、オフレコとして、効能は恐らく下呂温泉の数倍になると話されました。温泉のプロである古田先生のこのような言葉を聞いて、湯葉の湯は必ず16万大垣市民の役に立つと確信したのです。足湯を体験したお客様の中から何名ものリピーターが生まれ、それらの方々は異口同音に、この湯はよい、いつまでも体がぽかぽかする、足湯から家に帰ってもずっと温かい、足湯だけでも全身が温まり汗が出てくる、手足の先までずっと温かい。ある方などは毎回わざわざ瑞穂市から新大橋の足湯体験に来ているとのことでした。このような人々の声は、まさに古田先生の温まりやすく湯冷めしにくい理想的な療養温泉という言葉にぴったりと重なるものです。体を温め、毛細血管を拡張し、全身の隅々まで血液を循環させる効果が、専門家からも利用者からも証明されているのがかみいしづ温泉・湯葉の湯です。森林医学で血液中のナチュラルキラー細胞の活性を高め、抗がんたんぱく質の量を増加させる。湯葉の湯入浴で血行の促進と持続性を高めて、それらの抗がんたんぱく質を体の隅々までたっぷりと届ける。市民の自己免疫力を高める理想的な組み合わせではないでしょうか。
さて、私がこのように自己免疫力の強化を提言する背景には、本市の医療費の伸びがあります。平成19年度から23年度の5年間だけをとってみても、市の医療費にどのような変化が生じているでしょうか。まず、国民健康保険による医療費の変化です。患者の負担額はこの5年間で約2億3,600万円の増加、率にして9.89%の伸びとなっています。市の負担額は約9億3,200万円の増加、率にして10.59%の伸びとなっています。次に、本市の重要な施策、垣老です。市の支出額はこの5年間で約6,100万円の増加、率にして20.84%の伸びとなっています。これは受給者が14.67%伸びたことによるものです。続いて、介護サービス提供分保険給付費です。利用者の負担額は、この5年間で約1億8,100万円、率にして23.11%の伸びとなっています。市の負担額は約17億1,700万円の増加、率にして22.95%の伸びとなっています。
ところで、本市の人口の伸びと高齢者数、要介護認定者数の推移はどうなっているでしょうか。基準は毎年3月31日現在の人口です。総人口はこの5年間で2,654人の減少、率にしてマイナス1.59%です。65歳以上の高齢者はこの5年間で2,402人の増加、率にしてプラス6.84%です。そして、要介護認定者数はこの5年間で954人の増加、率にしてプラス17.58%となっています。
薬と手術で伸びた医療費を早期発見、早期治療で減額しようとしてきたが、それだけではいまだ医療費削減の効果が薄いという事実に21世紀の課題があると私は考えます。また、介護サービスの拡大は介護費用の増加と表裏一体となっています。従来の発想にはなかった取り組みを始めなくては、医療費の伸びはとまりません。総人口が減少に転じる中、若年人口右肩上がりで設計された現行制度のままでは、急速に減少する若い世代の家計が負担増加に耐え切れなくなって、やがて崩壊します。市の財政に極端に依存するか、制度の崩壊か、いずれにせよ、これまでの病気の治療という概念だけにとらわれていては、医療費の2桁増の現状を打開することはできません。病気にならない体づくり、病気になっても悪化させない体づくり、悪化しても押し戻す体づくり、すなわち自己免疫力の強化が、第三の医療として近年急速に注目されている理由がここにあります。また、最近では、森林医学を通じての自己免疫力の強化が、がん予防、がん負担の軽減だけでなく、ストレス軽減による鬱病対策や、精神的に追い込まれている子供たちの心の負担の軽減、糖尿病や高血圧などの生活習慣病対策、さらにはアンチエイジング効果につながるとして研究がどんどん拡大していると先ほどの李先生は述べられています。
去る10月27日に、上石津の時地域を会場に開催された里山ウオーキング並びに湯葉の湯エキスポというイベントで、たまたま知り合いの全日本ノルディックウォーク連盟の公認指導員の方から興味深い提案がありました。その内容は、山裾に入って林間コースを設定していただけたら、とてもよいノルディックウオーキングコースになり、各種の大会も開催できるということでした。そのとき私が学ばせていただいたのは、このノルディックウオークというのは2本のポールを使ってウオーキングを行うもので、筋肉の約90%を使う全身運動であり、かつ極めて安全であること、普通の市民にとっての健康維持の側面からだけではなく、世界各地で高齢化に伴う身体機能の低下を食いとめる運動、日本ではこれを介護予防と言われていますが、この運動として注目されています。また、入院されている方々の機能回復として、病院や介護の現場でどんどん取り入れられているということでした。そうした方々にとっては、病院だけでなく、このような自然豊かな場所で療養に励めるとしたらとてもすばらしい体験になる、療養になるという内容でした。まさに森林医学と見事に一致する内容です。
先ほど述べさせていただいた市の5ヵ年の医療費負担の伸びについて、国民健康保険と介護保険の合計額は26億4,900万円になります。第三の医療として、森林医学、温泉、ウオーキングを組み合わせた大垣オリジナルの積極的な市民健康増進政策を構築し、26億4,900万円のたった3%でも改善できれば7,947万円の経済効果が生まれます。これは、これからふえるであろう垣老の伸び、6,100万円を補ってなお余りある金額です。市民は健康を強化でき、大垣市は医療費増加を抑制し、かつ垣老を維持でき、地域には大勢の方々が訪れるようになる共存共栄施策として文字どおり発展させることができます。私は、行政に真剣に検討してほしいとの思いを込めて今回の提言をまとめました。16万市民全ての健康と福祉の向上に貢献する施策としてしっかりと検討していただきたい。市長の考えをぜひお聞かせください。
◯議長(岡本敏美君)
市長。
〔市長 小川 敏君 登壇〕
◯市長(小川 敏君)
森林医学と温泉を組み合わせ、本市独自の健康施策の構築をについて御答弁申し上げます。
かみいしづ温泉・湯葉の湯は、上石津地域の住民の方が健康福祉に役立てるとともに、将来の地域活性化への期待を込めて旧上石津町に掘削を要望し、平成17年1月に湧出した温泉であり、同年12月に温泉スタンドが整備され、平成18年3月の合併により本市に引き継がれました。こうした中、上石津町時地区の住民の方が主体となって設置されたかみいしづ温泉開発推進委員会が発起人となり、かみいしづ温泉入浴施設建設推進協議会が組織され、また、上石津地域全域の住民の方により木の駅上石津実行委員会やかみいしづ温泉入浴施設運営検討委員会が組織され、各団体において温泉入浴施設の整備に向けたさまざまな取り組みが活発に行われております。
本市におきましても、かみいしづ温泉・湯葉の湯が貴重な地域資源であり、地域活性化に向けた活用などが期待されることから、かみいしづ温泉入浴施設建設推進協議会に参画するとともに、各団体の取り組みを支援しているところでございます。また、温泉活用の調査研究及びPRの一環として、上石津地域の市民活動団体などに委託して入浴体験事業を実施するとともに、さらに本年度は、これまでの経緯を踏まえながら、上石津地域の豊かな自然、烏帽子岳や牧田川などの美しい景観など、地域の魅力を生かした温泉入浴施設とその運営方法などに関する計画づくりを進めております。
御提案いただきました森林医学と温泉を組み合わせた健康施策につきましては、既に県内には多くの温泉施設がございますので、各地での取り組みなどを参考に研究させていただきたいと考えております。
いずれにいたしましても、かみいしづ温泉・湯葉の湯を活用した温泉入浴施設につきましては、御提案の内容も含め、さらに計画の検討をしてまいりたいと存じますので、御理解賜りますようお願い申し上げます。
◯議長(岡本敏美君)
5番。
〔第5番 田中孝典君 登壇〕
◯第5番(田中孝典君)
今の御答弁の中で、1点、どうしても強調しておきたいことがございます。健康施設と温泉と医療と、県下各地であるというふうに市長の御答弁にありましたが、私の勉強してきた森林医学というものと医療を組み合わせている、温泉と組み合わせているという施設は、岐阜県下は今のところどこにもないと聞いております。それは森林セラピーと呼ばれる施策で、三重に1ヵ所、これが最新版で48番目ですが、それまでにつくられた中で最も先駆けて取り組んでいるのは長野で、たしか6ヵ所ぐらい先行して取り組んでいると聞いておりますが、岐阜県下の中では本市が参考になる施設はありません。それは、温泉病院とか温泉療法とかというふうに呼ばれているもので、全く考えが誤りです。もう一度しっかりと森林医学というものを検討していただいて、しっかりと部下に検討させていただいて、それを岐阜県下で初の施策として本市で取り組んでほしいというのが私の提言です。
さらに、そうした、まだ岐阜県下どこも取り組んでいない森林医学、森林セラピーと温泉とを組み合わせることで、まさにこの地域の中核の健康施策ができます。それを固めれば、今度は民間企業と共同してさまざまなビジネスへ展開していくことが可能になります。今、血液検査は病院ではやっていません。
血液検査会社が全て受託して、非常にコンピュータを使った、あるいはセンサーを使った、物すごい精密な検査が今競われるようになってきています。例えば定期的に市民が月2回、この健康施策の基地を訪れるようにしてくれれば、その温泉に隣接して検査センターを開設しデータだけをとって本部へ送る。そのデータを例えば大垣市民病院のデータセンターに蓄積し、必要に応じて医療機関やスマートフォン、タブレット等で閲覧することができたり、さらにそのデータの変動を見て、専門機関から本人に直接アドバイスが得られる。例えば今回の数値データに異常があるから、どこどこの病院の○○科にかかりなさいというようなアンサーがもらえるようになります。そうすることによって、未然に病気になること、あるいは今の持病が悪化することがないように食いとめることができます。例えば今、漢方薬が注目されています。漢方薬等の会社や薬局が温泉の隣で移動漢方薬相談所を定期的に開設し、治療という視点からではなく、体質の改善と自己免疫力の向上という点から漢方薬を活用する行動を起こしていくことが可能になります。また、拠点施設の建築そのものを、例えば地域木材と風土を組み合わせて独創的な建築を全国で展開している黒川哲朗東京芸術大学名誉教授のような方々にお願いすれば、温泉と森林と建物が空間として心地よい緊張関係を生み、その雰囲気だけでリピーターが誕生すると考えられます。森林医学、温泉、ウオーキングを組み合わせた大垣オリジナルの積極的な市民健康増進政策は、こうした新しいビジネスへ発展する大きな可能性を秘めています。実際、先ほどの日本医科大学の李先生は、森林医学と温泉を組み合わせて真剣に設計していけば、国内だけではなく海外からお客さんが来るようになるでしょうと。むしろ、日本人よりも海外の人の方が先に動くと思いますとおっしゃっていました。
どうか市長さんにお願いがあります。先ほどの医療と温泉を、いかにも手あかにまみれた、新聞でばーっと書かれているだけの温泉医療とか温泉病院とかという発想で凝り固まるのではなくて、まさに一度、その今進んでいる未来型の、今勉強しているところ、開発されている原点に職員を当たらせて、それを大垣市の施策に取り込めないかという発想で調査をさせてください。こうしたことは未来志向と言われる分野です。こうした未来思考が発想の根底にない限り、何事も将来のビジネスに発展するように向かっていくことはありません。
どうか未来志向で施策に取り組んでいただきますよう強く要望して、私の質問を終わります。