大垣市議会議員

田中たかのり

TAKANORI TANAKA

平成23年12月議会

一般質問表題

「迅速な地震対策事業の実施について」
「大垣国際俳句学術賞(仮称)の創設を」

一般質問詳細

◯議長(石川まさと君)
次に移ります。
5番 田中孝典君。

〔第5番 田中孝典君 登壇〕

◯第5番(田中孝典君)
未曾有の大災害をもたらした東日本大震災は、発生以後9ヵ月がたとうとしています。現地では、今なお苦しみが続いています。厳しい冬の到来を思うと、一刻も早く復興対策が進むよう心から願うものであります。
それでは、通告に従いまして、2点の質問をさせていただきます。
第1番目に、迅速な地震対策事業の実施についてお伺いします。
冒頭に述べました9ヵ月間というのは、全国の自治体に従来の防災対策では不十分だと認識させ、新たな対応策を構築するよう迫る期間となりました。この間の本市の対応についてお伺いしたところ、主要な成果として次の内容が挙げられました。1、地域防災検討委員会の設置と地域防災計画の改定、これは平成23年度、24年度の事業です。総合防災訓練の見直し、災害時の情報伝達手段の充実、衛星電話等の防災資機材の配備、防災教育や啓発の推進、遠隔地との災害時応援協定の締結、これらの中のほとんどが、9月補正により防災担当課で着手されたものです。しかし、各部各課で迫り来る大震災に備えてやれることは直ちに対策を打っていくという緊急意識は共有されているのでしょうか。もし平成24年度に策定される新しい地域防災計画待ちという空気があるとしたら、具体的な対策はさらにその後になり、市民の安全はどのように確保されるのでしょうか。近隣県に広く被害が及ぶ超広域大災害、大規模な液状化、原子力災害など、これまで想定していなかった事態への対応策の構築は、ある程度時間が必要なのはわかります。しかし、新しい地域防災計画を待つまでもなくやるべきことは多数あると思います。多くの課題の中から、今回私は次の2点を取り上げ、今後の取り組みをお尋ねします。
一つ目は、学校等緊急避難施設の非構造材の防災対策はどのように進めるのかという点です。特に天井材の剥離と落下、照明器具の落下、窓ガラスの飛散、テレビやスピーカー、棚などの壁面固定物の衝撃移動の対策を講じないと、建物の崩壊は防いだけれど、中にいた児童や避難者の被害を防ぐことはできなかったという事態になりかねません。
二つ目は、防災上、効果の薄い屋外型スピーカーにかわる緊急情報伝達システムの構築です。これは全国の災害のたびごとに、防災スピーカーは機能しなかったという声が寄せられています。情報都市をうたう大垣市として、率先してこの課題に取り組むべきです。ちなみに、9月の防災の日、実験も兼ねて防災意識の向上を呼びかける屋外スピーカーの使用がありましたが、平時の日中であるにもかかわらず、よくよく耳を澄ませないと声が聞き取れず、また何を言っているかは耳を澄ませてもほとんど聞き取れませんでした。これが、混乱と喧騒の中で、テレビやラジオから情報を得ようとしているときなどには全く機能いたしません。緊急性の高いこれらの点について、今後どのように取り組んでいくか、本市の考えをお聞かせください。
次に、大垣国際俳句学術賞、これは仮称でございますが、この創設について提案をさせていただきます。
景気低迷、デフレ、震災、豪雨、TPPなど次々と苦難が押し寄せていて、市民にとって未来への不安が増すばかりです。国全体が非常時という感覚の中で、行政は防災事業と同時に地域振興事業を行っていかなくてはならない困難な状況に直面しています。しかし、景気の気は気分の気であり、このまちの未来に何か明るいことが待っているぞと感じるところから景気の拡大が始まると言われています。
こうした中で、来春に予定されている奥の細道むすびの地記念館の開館は久々の明るい話題で、奥の細道むすびの地として、本市が俳句という日本が世界に誇る文化の振興にどう貢献するかを示す絶好の機会となります。日本の復興は産業と文化の両面の振興でなし遂げられると信じます。明るい未来のためのメッセージを、被害を受けなかった各自治体は工夫をこらして発信すべきであり、奥の細道むすびの地記念館の開館は、その役目を本市が率先して果たす本当によい機会であると信じます。むすびの地として本市に託されているのは、芭蕉の功績の顕彰だけではなく、芭蕉が次の時代に託した俳句の心を未来へ広げていく、言わば俳句の振興にあるのではないでしょうか。むすびの地を奥の細道という旅の終わりの土地、あの有名な芭蕉がうちにも来ているんですよととらえていては、単なる芭蕉ゆかりの地の域を出ることはできない自己満足に終わってしまいます。先般、自民クラブの視察で江東区の芭蕉記念館を訪れました。小さいながらも充実した運営、そして嘱託の職員の方、1時間かけて通勤しておられましたが、非常にしっかりした説明をされ感銘を受けました。 俳句は日本では日本人にしかわからない独特の文化のようにとらえられがちですが、世界に目を転ずれば、今まさに花開こうとしている文化の一つとなっています。芭蕉の有名な「古池や」の句は、外国語訳が100種以上に上るそうです。「奥の細道」は9種類の英語訳のほか、フランス、ドイツ、ロシア、スペイン、ポルトガル、イタリア、中国、韓国の各国で翻訳、出版されているそうです。また、西暦2000年からは、世界俳句大会がイギリスを初め各国で開催されてきています。しかし、海外の俳句研究者の方々は苦心に苦心を重ねて翻訳や研究に携わっているそうです。日本国内では、文芸各界、文芸誌、各種団体が表彰や奨励を競っていますが、国外の若い研究者たちは、日本という俳句文化の原点を体験する機会もない中で研究を重ねる一方、その研究が評価を得る機会も少ない中で、世界各国で俳句のすばらしさを広める役を担ってくれています。むすびの地として本市が来年の記念館の開設を契機として、支援が一番手薄な国外の若い研究者たちへ感謝を込めて、ささやかな日本体験の機会の提供を始めてはいかがでしょうか。
具体的には、大垣国際俳句学術賞、これはあくまで仮称です。もっとすてきな名前にできるかもしれません。ただし、略称は大垣賞としたいです、として次のような内容を提案します。海外の50歳未満の俳句研究者の研究著作や学術論文を大垣賞の対象にする。俳句作品のコンテストは行わない。賞として提供するもの、ここが大事ですが、海外現地から空港を経て大垣駅までの往復旅費、航空運賃、鉄道運賃等、最大4回分、大垣市内における滞在費、ホテル、旅館、民泊など、1週間4回分、最大4週間分、移動にかかる日数は本市滞在分に含めず、大垣市の実滞在数を1週間確保する。基本的には、これは大垣市の四季を、それぞれ日本の春、夏、秋、冬として1週間ずつ味わってもらうことを想定するものです。しかし、夏の間4週間、あるいは冬の間4週間という特定の季節における集中滞在も可能とします。その場合の往復旅費は1回分のみ支給とします。受賞者に提供するのは金銭や物品ではなくて、大垣市に滞在する体験を提供するものであります。大垣市が管理するデジタル空間に受賞者の部屋を設け、受賞者の紹介をインターネットで行うとともに、受賞対象著作を公開し、その後も随時研究や著作を公開できる場として提供していく。また、受賞者がホームページを開設している場合はリンクを結ぶ。さらに、奥の細道むすびの地記念館単独でホームページを構成し、運営するのが望ましいと思います。
第1回目の手法、あるいは初回のスケジュールとして、奥の細道むすびの地記念館のオープニングにあわせて大垣賞の創設と募集開始を発表します。2ヵ月間の募集と1ヵ月間の審査を経て、7月に表彰式を開催、これは世界の大学や研究機関が圧倒的に夏期休暇に入る時期に表彰式を行うことで、受賞者の参加と大垣滞在を容易にするものであります。第2回以降は通年となるため、改めてスケジュールを設定すればよいと思います。
大垣賞のポイントは次のとおりです。国際俳句交流協会によれば、海外俳句研究者への支援は、日本でどの自治体も実行していないとのことです。今、大垣賞を始めれば、文字どおり大垣オリジナルとなります。あくまで学術研究や著作を対象とするものです。俳句のコンテストにしてしまえば単なるイベントになり、日本各地で同様の外国俳句大会の一つとなってしまいます。表彰を、めでたしめでたしで終わらせてはなりません。功成り名を遂げた大家の表彰ではなく、これから研究を拡大していこうとする若い研究者を対象とします。さらに、行政が肝に銘ずべきは次のとおりです。大垣賞を国際的に一級と認められる賞に育てるために、審査に行政は一切口を挟まない。奥の細道むすびの地としての責任、使命として取り組む。受賞者に体験を提供する。日本の四季に身を置き、自身の五感で、自然の移ろいや人々の暮らし、時の流れを、この大垣の地へ来てもらって体験してもらう。
この大垣賞を10年続けたら、大垣市はまず世界の俳句研究者の間に知られるようになります。大垣の自然や人情のすばらしさが口から口へ広がって、やがて世界で俳句を学ぶ人、研究する人、そして俳句づくりを楽しむ人が一度は訪れたいまちになると信じます。大垣賞、大垣国際俳句学術賞の創設について、市長の見解をお聞かせください。
 以上で第1回目の質問とさせていただきます。

◯議長(石川まさと君)
市長。

〔市長 小川 敏君 登壇〕

◯市長(小川 敏君)
大垣国際俳句学術賞(仮称)の創設について御答弁申し上げます。
本市では、中心市街地に新たな憩いとにぎわいの空間をつくり、奥の細道むすびの地を俳句文化の振興拠点とする周辺整備に取り組んでいるところでございます。来年4月にオープンする奥の細道むすびの地記念館では、市民を初め多くの来訪者が大垣の歴史文化と先賢の功績を学ぶとともに、俳句文化や奥の細道紀行に対して理解を深めていただけるものと考えております。
また、これまで本市では、俳句文化の振興に向けて、芭蕉蛤塚忌全国俳句大会を初め、16万市民投句や東西全国俳句相撲など、奥の細道むすびの地・大垣ならではの事業を実施してまいりました。
海外の研究者を支援する大垣国際俳句学術賞の創設につきましては、世界的な俳句文化の広がりを背景とした俳句を生かした地域づくりに寄与できるものと考えておりますので、今後、調査研究させていただきたいと思います。よろしくお願い申し上げます。

◯議長(石川まさと君)
 教育委員会事務局長。

◯教育委員会事務局長(坂 喜美和君)
迅速な地震対策事業の実施について御答弁申し上げます。
学校施設につきましては、児童生徒の人命を守るとともに、地震等の災害発生時には地域住民の避難所となることから、その耐震化を最優先事業として取り組んでおります。このたびの東日本大震災におきましても、多くの被災住民の避難所として利用され、その重要性を改めて認識しているところでございます。
こうした中、学校施設の天井やガラスなどの非構造部材の地震対策につきましては、平成19年度から耐震化事業にあわせて、天井材や照明器具の落下防止、強化ガラスやサッシ改修等に順次取り組んでいるところでございます。また、テレビやスピーカー、棚などの壁面固定物の衝撃移動につきましては、東日本大震災後、各学校に点検を依頼し、転倒防止の措置を行うなど対策を講じております。今後も、計画的に非構造部材の地震対策を実施してまいりたいと存じますので、御理解賜りますようお願い申し上げます。

◯議長(石川まさと君)
生活環境部長。

◯生活環境部長(社本久夫君)
屋外型スピーカーシステムの見直しについて御答弁申し上げます。
災害発生時での市民への情報伝達につきましては、防災行政無線による放送、広報車での巡回、自治会長への電話による伝達などで行っております。災害時には防災行政無線設備の被災や電話の不通、あるいは防災行政無線が聞き取りにくかったなどの課題が伝えられており、多重的な情報伝達手段の確保が必要であると考えております。
 防災行政無線屋外型スピーカーシステムにつきましては、大垣地域に85ヵ所、上石津地域に38ヵ所、墨俣地域に10ヵ所を設置しておりますが、今なお難聴地域があるため随時追加整備を行い、充実に努めております。さらに、防災行政無線による情報伝達を補完するため、放送内容を電話で確認できるテレホンサービスや、携帯電話に強制的に災害情報を発信するエリアメールを今月15日から導入いたします。災害情報をより確実に伝えることができるよう、情報伝達手段の整備につきまして、新たな手法も含め調査研究を進めてまいりたいと存じます。
 いずれにいたしましても、災害情報伝達の充実に努めてまいりますので、御理解賜りますようよろしくお願い申し上げます。

◯議長(石川まさと君)
5番。

〔第5番 田中孝典君 登壇〕

◯第5番(田中孝典君)
ただいまは、答弁ありがとうございました。
まず、第1番目の迅速な地震対策事業の実施についてでございますが、非構造部材等の地震対策については、本当に一刻も早く進めていただきたいと思っております。また、屋外型スピーカーにつきましては、どうしても防災対策の管理下は今ある施設に引っ張られてしまいますが、そうではなくて、もう昭和30年代、20年代から実はあのスピーカーシステムというのは変わっていない。本市は情報都市をうたっているわけですから、本当に根本的にもっと違うやり方で確実に情報を届けられる方法がないかということを、情報セクションできちっと考えていただけるとありがたいと私は考えております。
さらに、次の点を再度お伺いいたしたいと存じます。
岐阜県では、7月に東日本大震災震災対策検証委員会報告書というのがまとめられ、10月には第二期岐阜県地震防災行動計画の改訂版が発表されました。これらを参考に、本市の地域防災計画の改定を待って取り組むべき事業と、改定を待たずとも取り組むべき事業を取りまとめ、先ほど述べさせていただいたような緊急性の高いものはどんどん対策を進めていくべきと考えます。質問で述べさせていただいたものはほんの一端であり、そのほか、耐震化された小中学校校舎の屋根を逆に人工の地盤と考えて、液状化等で緊急車両の通行が不可能なときに、屋上からヘリコプター等を使って避難や病人、けが人の搬送を行えるように昇降口等を整備して、屋上へ本当に容易に避難できるような、そういう対策をとってほしいという市民からの要望もお聞きしております。そうしたことは、改めて申しますけれども、防災計画がなくても取り組むべき実務的な内容です。計画策定と並行して進めることが可能です。必要事業の抽出と実施のための実務者の会議を、各課横断組織として機能させる必要があると思います。今後どのように取り組んでいくかお聞かせください。
次に、大垣国際俳句学術賞(仮称)の創設について、こちらは要望いたします。
今回、可能な限り具体的に提案をいたしました。これまでもそうしてきたつもりではございますが、ぜひ具体的な検討のまな板に乗せていただいて、聞いた、終わったということのないように、ぜひ検討していただければと思います。フランスにバルビゾンという小さな村があります。ここは、ミレー、コロー、クールベといった印象派の画家たちが暮らして作品を制作していたまちです。そのまちは、その風景を丁寧に残しているだけで、大勢の観光客が世界じゅうからやってきます。大垣市が、この芭蕉に始まる季節感豊かな俳句の世界をヒントにして、食べ物や生活素材の中の地産地消を拡大して、地域全体の暮らしと景観を調和させていけば、世界の多くの人々にこの大垣市が魅力的に映るようになると思います。大垣賞の創設は、直接的には世界の若い研究者への体験支援が目的ですが、これをまじめに真剣に取り組めば、その波及効果によって、10年後には俳句の世界を味わうために多くの人々が海外から大垣へやってくるようになると信じます。大垣国際俳句学術賞、大垣賞の実現を心から望みます。
以上で2回目の質問を終わります。

◯議長(石川まさと君)
生活環境部長。

◯生活環境部長(社本久夫君)
各課横断組織としての実務者会議について御答弁申し上げます。
地域防災計画の見直しの素案づくりのため、本年11月に外部委員による地域防災検討委員会を設置するとともに、庁内各課を横断した組織として防災計画改定庁内連絡会議を設置いたしております。この会議は、地域防災計画の見直しを迅速かつ円滑に進めるための情報共有や、各課からの課題の洗い出し等を行うことを目的として設置したものでございますが、今後、各課において対応できる緊急性の高い課題から対策を実施するよう取り組んでまいりますので、御理解賜りますようお願い申し上げます。

田中たかのり
大垣市議会議員