大垣市議会議員

田中たかのり

TAKANORI TANAKA

平成23年6月議会

一般質問表題

「子育て日本一の名にふさわしい教育の振興について」
「少人数教育の推進について」
「ふるさとの風土・文化に根ざした教育の推進について」

一般質問詳細

◯議長(石川まさと君)
次に移ります。
5番 田中孝典君。

〔第5番 田中孝典君 登壇〕

◯第5番(田中孝典君)
 私も一刻も早い被災地の復興を心よりお祈り申し上げます。さらに私は、今回、教育問題に絞って質問をさせていただきますが、その前に、被災地の子供たちのこれからの夏に、ぜひ想像力を働かせていただきたいとお願いを申し上げます。
 本市の被災地支援、残念ながら、私はどこの自治体もやっている横並びの支援だというふうに感じております。子育て日本一を掲げるならば、子供たちを中心に据えた受け入れや、あるいは支援を、本市が全国に率先して進めるべきであろうと、私はそう考えております。これから疫病の発生、あるいは非常に暑い夏を迎えた中で外で遊べない夏休みなど、非常に困難な状況が子供たちに生じてまいります。本市が子育て日本一を掲げるならば、名前だけのその日本一になるのではなくて、本当に支援の内容を本市ならではというものを工夫して、ぜひ温かい手を差し伸べていただくよう心からお願い申し上げます。  それでは、通告に従いまして、3点質問をさせていただきます。
 第1点目は、子育て日本一と教育の振興であります。
 市長は、平成23年5月16日に大垣市情報工房で開かれた大垣商工会議所主催の大垣市長を迎えての議員定例会で「平成23年度の市政について」と題して講演をされました。その大半は本年度の事業を網羅的に説明したものでしたが、私は1点だけ強く心に訴える部分がありました。それは、子育て日本一プロジェクトとして教育の充実を目指す、特に人づくり教育に力を尽くすと述べられたことです。私は、本市の活性化、特に子育て日本一の柱は、実は教育の充実、文教のまち大垣の復興にあると考えており、先ほどの市長の意欲の表明を強い期待で迎えるものです。実際のところ、やっと出てきたかという思いでいっぱいです。
 しかし、その一方で、私はその期待ゆえに、次の不安にさいなまれます。1、子供の視点に徹底して立っているか。2、日本一を目指すはずなのに、やることは中央政府の方針への追従になってしまわないか。3、大胆な取り組みには大胆な発想が必要なのに、従来のやり方の改良だけに終わってしまうのではないか。市長は講演の中で、単なる教育の振興と言われたのではなく、子育て日本一まちプロジェクトとして本市の教育の充実を図ると発言されました。これは事実上、日本一の教育を目指すと発言されたことと同じです。  私は、日本一を目指すという限りは、これまで日本がたどった二つの教育の流れを見直していただきたいと思います。歴史的に近い部分から振り返ると、1番目が戦後教育、2番目が明治教育であります。戦後教育は、これまた日本国家という概念を国民の心から外し、アメリカ型の個人主義による大量消費社会を日本に形成するというものでした。国民にもたらされたのは、すべてを徹底して消費し尽くす自由でした。また、明治教育は、藩を中心としたそれまでの「クニ」という概念を国民の心から外し、英、米、独、仏に倣った強力な中央集権体制の日本国家を形成するものでした。しかし、今、歴史の大きな流れは、大量消費への反省はもとより、中央集権国家の見直しまで求められるようになっております。時代は今、個性豊かで自立マインド旺盛な地方の復権と、その連合体としての国家の再形成を求めて揺り戻し期に入ったと言わざるを得ません。平成23年3月11日は、日本の歴史に明治維新と同列で刻まれる歴史的刻印となりました。今なお続く自然災害、人災としての原子力災害、そしてさらに今、疲弊した国家制度がさらに災害を深刻なものに拡大させています。東日本大震災に対して、世界は日本経済にも日本国家にも称賛を送っているわけではありません。辛酸極まる状況の中にあってなお、身勝手に振る舞わず、自分よりまだ困っている人がいると他者を気づかう東北地方の人々の姿の中に、来るべき世界の姿を感じ取っています。消費から極限的に切り離されても暴動も略奪も起こさない強さ、国家の救済のおくれが文字どおり致命的になりつつある中で、国家は頼りにならないと明言し、自力で必死に復興の道を探る地方自治体の苦悩と決意を見るとき、それらの姿に共通する生きる力の原点は、消費を美徳した戦後教育でも、中央集権を国是とした明治教育でもなく、隣同士助け合う、自分たちでまず何とかする、みずからをはぐくんでくれたふるさとを今度は自分たちが支えていくという心であり、それはふるさとの持つ根源的な教育力から生まれると私は確信しました。
私は、このように考えたとき、市長が子育て日本一のまちとして教育の充実を図る、すなわち、日本一の教育のまち大垣市を築くという発言をされたことに極めて大きな期待を抱くものであります。改めて市長の考えておられる日本一の教育とその実現への意欲をお聞かせください。
次に、それらを踏まえて、教育長に二つお伺いします。
昨年までにまとめられた教育振興基本方針とそれに基づく教育振興計画は、年次型計画としては細かいことまで気配りし、ほどよく新しいチャレンジも盛り込んで、よく頑張って作成されていると思います。しかし、私は、子供にとって最も受けたい教育という根源的な視点が軽んじられていないか心配です。どれほど巧妙に表現しようと、子供たちの目は正直です。子供たちの言葉にできない行動は正直です。親の欲目と行政の打算は、見事に子供たちに見抜かれます。私は、紙芝居のボランティアで小学校やサークルを回ったとき、子供たちの声が聞こえてくるような気になります。それは、おじさん、私を見て、先生、お父さん、お母さん、私の声を聞いてという声です。子供たちにとって最悪の状況とは無視されることであり、最悪の環境とは無視され続けることです。どれほど施設を充実し、どれほど制度を充実させようとも、私が無視される1日は容易に私が無視される365日となり、私が無視された6年間に容易に転化していきます。こんな中からは、先ほど述べたような子供の生きる力は育たないと思います。日本一の教育とは、日本一教師のまなざしが届けられる教育だと私は考えます。徹底的に子供の立場に立つことを子育て日本一と呼ぶならば、子育て日本一の教育の大黒柱は少人数学級の実現にある、どの子も教師から温かいまなざしが注がれる教育環境づくりにあると考えます。本市の見解と今後の方針についてお伺いします。
 また、子育て日本一教育の制度の柱が少人数学級ならば、学習カリキュラムの柱は、ふるさとの風土、文化に根差した教育の推進と考えます。小学校児童にとってのふるさととは、彼ら、彼女らの日常生活圏、すなわち小学校区ととらえます。学校の敷地を包むように広がる3世代の人の輪、季節の美しい変化を感じさせる風土、先人たちが縄文の昔から重ねてきた生活文化や歴史、こうしたものは、目前の幅60cm程度の机の上だけを見ていては決して得られない人間としての根源的な学びを子供たちに提供してくれています。東北の被災地の人々の姿を見るときに、この人たちは教室だけではなく、人生の多くのことを、ふるさとの風土、文化から無意識のうちに吸収し、同じ共同体の仲間として、あの困難に遭ってなお他人と助け合う強さが育ったのだと頭が下がります。小学校区を単位としたふるさとの風土、文化としっかりつながった教育は、いざというときでもへこたれず、他人を責めず、支え合う生きる力を子供たちの心にはぐくみ、彼ら、彼女らがやがて大きくなったとき、それぞれの人生においても、また本市を構成する社会人としても大きな財産になると信じます。ふるさとの風土、文化に根差した教育の推進について、本市の見解と今後の方針についてお伺いします。

◯議長(石川まさと君)
市長。

〔市長 小川 敏君 登壇〕

◯市長(小川 敏君)
子育て日本一の名にふさわしい教育の振興について御答弁申し上げます。
近年、核家族化や地域の子育て力の低下により、子育てに対する不安や負担感が高まる中、次代を担う子供と子育て家庭を社会全体で支援していくことが求められております。
こうした中、本市におきましては、子育て日本一のまちづくりを重点プロジェクトに掲げ、子育て総合支援センターを開設し、子育て相談や子育て情報の提供などに取り組むなど、子供が健やかに育ち、子育て世代が安心して子育てができる環境づくりに努めているところでございます。とりわけ、次代を担う子供たちの能力や個性を育てるためには、多様な学びや活動の場を充実させていくことが必要であると考えております。
本市は、古くから人づくりに力を入れてまいりました。今後も未来を担う子供の教育を大切にし、社会がどのように変化しようとも、みずから考え行動することができる生きる力をはぐくむとともに、地域を愛し、地域に誇れる人づくりに力を入れてまいりたいと思います。そのため、大垣市教育振興基本方針に基づいて、ふれあい、学びあい、深めあう文教のまち大垣を構築し、一人一人を大切にし、ふるさとを愛する心を育てる教育を推進してまいります。落ちこぼれをなくし、すぐれた人を育成する教育を進めてまいりたいと思いますので、よろしくお願い申し上げます。

◯議長(石川まさと君)
教育長。

◯教育長(内田一之君)
少人数教育の推進について御答弁を申し上げます。
少人数教育には少人数学級と少人数指導があり、少人数学級は一人一人の実態を把握し、個に応じたきめの細かな指導を行うよさがございます。人間関係の固定化や表現力の低下も指摘されているところでございます。本市は、小学校1・2年生と中学校1年生において35人学級を導入し、学び合いを通して考えを深め合うことを大切にした指導を行ってきております。また、少人数指導におきましては、小学校1年生と5・6年生の30人以上の学級に学習指導補助講師を配置し、チーム・ティーチングや習熟度別の学習を行うなど一人一人にきめ細かな指導を行い、確かな学力の定着を図ってきております。今後は子供たちの学習状況を確認しながら、一人一人の子供にとってより効果的な指導体制を確立するために、適切な人数を見きわめながら少人数教育の充実に努めてまいりたいと存じます。
次に、ふるさとの風土・文化に根差した教育の推進について御答弁を申し上げます。
将来の地域を担う子供たちに郷土の伝統と文化を大切にし、郷土を愛する心を育てるために、各学校におきましてそれぞれの特色を生かし、地域社会とのかかわりを大切にした教育に取り組んでいるところでございます。このため、夢づくり21事業を推進し、校区の探索、それから史跡めぐり、伝統・文化などの体験学習や副読本の活用など、発達段階に応じた学習を通して、自分たちの住むまちに愛着と誇りが持てる教育を進めてきております。
 今後も、地域の特色を生かしたふるさとの教育を充実させるため、身近な校区の学習を大切にし、さらに大垣市全域に目を向け、歴史や伝統文化について幅広く学ぶ機会をふやしてまいります。こうした取り組みを通してふるさとのよさを再認識し、将来に夢と希望を持ち、地域とともに力強く生活していく子供たちを育ててまいりたいと存じます。御理解賜りますようお願い申し上げます。

◯議長(石川まさと君)
5番。

〔第5番 田中孝典君 登壇〕

◯第5番(田中孝典君)
ただいまは、答弁ありがとうございました。
正直言いますと、残念ながら、これほど日本一というところに力を入れて質問をさせていただきましたが、本当に日本一を目指そうというのが伝わってきたかというと、私にとってはちょっと疑問でございます。また、はっきりしておきたいのは、子育て支援日本一と子育て日本一とは違うということでございます。子育て支援日本一というのは、子育てをしている家族、あるいは団体、グループを支援することでございます。子育て日本一というのは、大垣市がやる子育ては日本一であるということを宣言することであります。子育て日本一の中に子育て支援日本一は含まれるというふうに行政は整理をすべきだというふうに私は考えます。
 続いてまた、私がいろいろと聞かせていただいた中では、一人の先生がプロとしてその家の家庭や親子関係、また性格、兄弟・姉妹、そうしたものを見て適切な指導が、プロとして言葉一つずつ選べるというのは20人ぐらいだ、一人の先生がプロとして温かく言葉をかけられるのは20人ぐらいだと。ですから、世界的な流れとして、大体1学級というのは20人であれば、先生が非常に細かくその子供に対して同じことを指導するにも、子供の顔を見て指導ができるというふうに聞いております。そうしたこともしっかりと検討していただければと思います。
そして、私は、改めて具体的な提案として一つ提案をさせていただきますので、見解をお聞かせください。
少人数教育、かつ、ふるさとに根差した教育というものを一生懸命推進して、結果的に学力もトップであり、また産業における知的生産力も世界のトップクラスという国としてフィンランドが今世界的に注目をされています。日本一の教育を目指すのであれば、もう国内のどこかの自治体の二番煎じを羅列するのではなくて、市民と議会と行政、教育、産業、各分野からそれぞれ構成される視察団をこの世界一のフィンランドへ派遣して大いに刺激を受け、その結果を本市の教育に反映させてはいかがでしょうか。日本一を目指すのであれば、それぐらいの投資は本市の市民の皆さんは喜んで理解してくださると私は考えます。こうした思い切った施策に取り組む覚悟はおありではないか、私は市長の御意見をお伺いしたいと思います。

◯議長(石川まさと君)
市長。

〔市長 小川 敏君 登壇〕

◯市長(小川 敏君)
まず、少人数学級でございますけれども、1学級20名程度というようなことを言われましたが、私は、多様な人間関係を考慮して、少人数学級には賛成でありますけれども、25名程度、もう少しやはり多い人数のほうが適正ではないかというふうに考えております。
そしてまた、フィンランドの教育が各方面で注目されていることは存じております。御提言にもありましたように、人づくりやふるさとを思う心をはぐくむような温かい環境を整備することは、これからの教育にも大切であるというふうに思っております。今後はフィンランドでの教育も参考にし、より一層教育の充実に取り組んでまいりたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

田中たかのり
大垣市議会議員