「防災事業としての広葉樹林若返り事業の推進について」
「防災事業としての透水性舗装の推進について」
これより一般質問を行います。
順次、質問を許します。
1番 田中孝典君。
〔第1番 田中孝典君 登壇〕
◯第1番(田中孝典君)
皆さん、おはようございます。
9月議会一般質問のトップバッターということで、どうぞよろしくお願いいたします。
また、本日から、大垣市議会もクールビズも可ということで、思い切ってノーネクタイにチャレンジさせていただきました。クールビズというのはクールビジネスウエアということで、地球温暖化防止に貢献しようということでございますが、私はこのクールビジネス、市の新しい産業が起きることを祈る、その願いを込めて、またこのクールビジネス、クールビズに取り組んでいただけたらと思っておりますので、よろしくお願いをいたします。
それでは、通告に従いまして、2点の質問をさせていただきます。
まず最初に、防災事業としての広葉樹林若返り事業の推進について質問をさせていただきます。
今、揖斐川水系の上流域の森林では大変な事態が進行しております。それは、ナラ、ミズナラ、コナラなどの広葉樹に爆発的にナラ枯れ病が拡大しつつあり、ほとんど有効な手が打てていないということであります。既に杉やヒノキなどの針葉樹は、間伐等の不足で、豪雨に対して極めて低い保水力しか保てなくなって久しいのですけれども、これまでは広葉樹が保水力の高い土壌を維持してくれているおかげで、極端な荒廃を食いとめているのが現状でした。しかし、その広葉樹に病が広がり、災害を防ぐような力が急速に失われつつあります。
議員各位のお手元に配付した写真資料をごらんください。
〔資料を提示〕
◯第1番(田中孝典君)
この資料でございます。この左側が平成19年度作成の岐阜県の資料の表紙でございます。右側が本年3月に改訂されたものの表紙でございます。こちらのほうが揖斐川町、揖斐川の上流、揖斐川町での写真でございます。こちらの本年のものが郡上市の写真でございます。この本年のものを見ていただくと、ナラ枯れ病が進行して既に白く枯死、いわゆる枯れ死にですけれども、枯死した部分が相当程度拡大しているのが見てとれます。左の写真の中で赤茶けた木というのが、実は最後はこう白くなって立ち枯れていきます。ナラ枯れ病の直接の原因はカシノナガキクイムシという虫が持ち込むラファエレア菌という病原菌で、その菌によってナラ類の木が急激に枯れてしまう病気の通称がナラ枯れ病です。中でもミズナラ、コナラ類は特にその影響を受けやすいのですけれども、それらは実は私たちの住む揖斐川水系の水をはぐくむ森林の中心となる樹種でございます。
先ほどナラ枯れ病の原因を病原菌によると説明しましたが、それは表面的な原因であって、実は私たち流域の人間と森とのかかわりが途切れてしまったことによる当然の結果とも言えるものでございます。ナラ、ミズナラ、コナラ類は良質のまきや炭となり、西濃地方では揖斐川本流・支流の水系に沿って人口集中地、すなわちこの大垣市へ供給されていました。ナラ類は切り株から自動的に次の本体の再生が始まります。比較的暖かいところで25年、寒いところで35年程度で大人になります。この特性を利用して、苗を植えるという手間をかけることなく、伐採を計画的に回転させていくことで、質のよいまきや炭が毎年安定して大垣を中心とした都市部に供給されてきました。結果的にこのような循環利用されている森は常に若く、エネルギーのある状態で維持され、病原菌が入っても樹液などで防御し、大規模に枯れて死んでいくようなことはありませんでした。
しかし、戦後、急激に進んだ燃料革命により、日本ははるかかなたの中近東から膨大な資金とエネルギーをかけて運ばれてくる石油に燃料を依存するようになりました。その結果、ナラ、ミズナラ、コナラなどの広葉樹林はまきや炭として活用されなくなって山にそのまま放置され、高齢、超高齢の林となり、病原菌に耐えられず、まるで伝染病が広がるかのように今枯れつつあります。ナラ枯れ病は幹が太く大きな木、すなわち高齢木から枯れて死んでいきます。今、ほとんどが高齢、超高齢の林となっています。人間が使うことによって維持されてきたこうした広葉樹林は、人間が使わなくなれば、当然死滅するなどして別の形態に変わっていきます。それだけならば何の問題もないように見えます。しかし、このような広葉樹林は、針葉樹に比べて豊かな腐葉土を形成することや深く根を張る力を備えていて、実は長い長い間、豊かで清冽な水を私たちに供給し続けてくれましたし、急な斜面の崩壊を防いできてくれました。この点について、人間は余り気づくことも感謝することもありませんでしたが、私たち揖斐川水系の住民はナラやミズナラを燃料として定期的に利用を循環させることで、実は豊かな水と安全という恵みを受け続けてきたのです。
その一方で、113年間で最高と言われる猛暑にも見られるように、気候の変動が目に見える形で私たちの前にあらわれるようになってきました。2年前にナラ枯れ病について一般質問をいたしましたが、正直に言って、これほど急激に拡大するとはそのときは思っていませんでした。薬剤注入という対症療法では、もちろん焼け石に水程度の効果しかないとは思いましたが、対策を何か打つ時間はあるだろうと思っていました。しかし、先日、地域の山を巡回し、そして県のパンフレットを見て、その進行の早さに愕然としました。このままでは地盤と豊かな水を安定させる力を失い、大きな災害となって私たちに返ってくることは確実です。もはや産業振興だけではなく、防災事業の視点からも急務の課題となっています。高齢化した広葉樹林を伐採して若返りを図ることを、防災施策として早急に展開すべきと考えます。本市の考えをお伺いします。
続いて、二つ目の質問をさせていただきます。
先ほど、この夏の記録的な猛暑について述べました。しかし、私が最も危惧しているのは、雨の降り方が変わってしまっていることです。今回、たまたま台風9号は本市を直撃することがありませんでした。市民生活の現場では皆ほっと胸をなでおろしました。しかし、防災行政の分野では、それでよしとは言えない数多くの教訓を示唆するものでした。既に忘れ去られようとしている台風9号について、少し振り返ってみます。
台風9号は今月8日に北陸に上陸し、東海地方を南下して進み、静岡県内で熱帯低気圧に変わりました。台風の勢力そのものは弱かったにもかかわらず、熱帯低気圧になってからも記録的な大雨を各地にもたらしました。例えば、東京都心の大手町では、9月観測史上3番目に多い1時間に68.0mmの雨量を記録しました。静岡県の小山町付近と神奈川県山北町付近ではいずれも1時間に120mm、山梨県富士吉田市付近では同じく100mmの猛烈な雨が降ったと見られています。山北町の8日夜までの24時間雨量は、観測史上最多の495.5mmに達しました。静岡市の井川で1時間に77.5mm、これは9月観測史上最多でございます。千葉では同じく67.5mmで9月史上2番目となっています。私が危惧するのは、毎年毎年観測史上最多とか史上2番目と聞かされるようになっており、もはやこうした亜熱帯地方のような短時間に集中して雨が降る事態に日本の気象が変化していることです。しとしとと降る長梅雨などは、はるか過去の話となってしまいました。雨の降り方が短時間に極めて大量の雨が降るスコール型になった今、都市部において新しい災害が指摘されるようになりました。内水面はんらん、あるいは内水はんらんと呼ばれる現象です。側溝や排水路から水がまたたく間にあふれ、あたり一帯で同時に床下浸水等が発生する現象です。先日もテレビで新宿の小売商店の方の話が紹介されていました。このお店では玄関からの水の侵入を防ぐため、常日ごろは板と突っ張りを準備している。しかし、調理場の排水口から水があふれ出し、10分もかからない間にあっという間に店内は水浸しになった。玄関から水が入ってくるというのではなく、あたり一帯、側溝と言わず、排水口と言わず、一斉に水が吹き出してきてなすすべがなかったと話されていました。
現在の都市は、こうしたスコール型のいわゆる日常化した集中豪雨は想定しておりません。根本的な排水対策は、迅速な排水と側溝や排水路に流れ込む水の量を少なくすることですが、次善の策として急激な水位の上昇を緩和することが重要だと考えます。公共施設にあっては、大垣競輪場や市民会館などの大きな面積の駐車場、民間施設にあっては、大規模商業集合施設等の駐車場などについて、計画的、年次的に透水性の舗装に切りかえ、雨水の地下浸透を促進することによって内水はんらんの危険性を低くするとともに、水のあふれるスピードを抑えることによって、市民の浸水対策、あるいは避難の時間を確保することは有効ではないでしょうか。本市の考えをお伺いします。
以上で1回目の質問を終わります。
◯議長(岩井哲二君)
市長。
〔市長 小川 敏君 登壇〕
◯市長(小川 敏君)
皆さん、おはようございます。
防災事業としての透水性舗装の推進について御答弁申し上げます。
近年の降雨に対応するには、降雨の流出を抑制する施設が有効であり、透水性舗装はその中の施策の一つと考えられます。そのため、青墓地区センターの駐車場では透水性舗装を実施してまいりますが、本市の地質の特質として、地下水位が高く、水の浸透が難しいなど、この工法が適さない場合がございますので、市の公共施設や民間の大規模開発時には降雨を一時的に貯留する治水施設の設置、または指導を行っております。また、内水はんらんによる浸水被害の対策としましては、平成16年の台風23号により発生した浸水被害を軽減するため、学校グラウンドに雨水を貯留するなどの治水施設の整備を鋭意進めているところでございます。
引き続き、安全・安心のまちづくりのため、治水施設の整備、維持管理に努めてまいりますので、御理解賜りますようお願い申し上げます。
◯議長(岩井哲二君)
経済部長。
◯経済部長(伊藤亮一君)
防災事業としての広葉樹林若返り事業の推進について御答弁申し上げます。
本市の森林面積は約1万1,000ha、市面積の約53%を占めており、そのほとんどが上石津地域に集中しております。このうち広葉樹林は約5,600haを占めております。この広葉樹林で発生するナラ枯れは、カシノナガキクイムシが持ち込む病原菌によってナラ類の木が急激に枯れてしまう病気であります。県内では、平成8年に揖斐川町で発生が確認されてから年々被害が拡大し、本市では上石津地域において平成19年に目視調査で約50本が確認され、昨年の調査では約600本が確認されております。こうした中、本市では平成21年度から被害木に薬剤を注入し、病原菌の殺菌処理を行う森林病害虫等駆除事業により被害の拡大防止に努めております。
いずれにいたしましても、今後とも被害状況調査や駆除事業を継続実施するとともに、防災事業としての広葉樹林若返り事業の有効性につきましても、県や森林組合など、関係機関と密接な連携を図りながら検討してまいりますので、御理解賜りますようお願い申し上げます。
〔第1番 田中孝典君 登壇〕
◯第1番(田中孝典君)
ただいまは丁寧な御答弁をありがとうございました。
再質問をさせていただきますが、ちょっとその前に、今、ナラ枯れ病のケース調査のデータをいただきましたが、一けた違うんじゃないかと思いますけれども、50本とか600本という程度は、それは単位面積を調査した場合の数でありまして、恐らく5,600haに推計されていないと思いますので、今の本当にその数値でよいかは再度確認してください。今、上石津の地域、あるいはほかのこの発生している地域を見ていただいても、見てぐるりと1周見渡しただけで、100本、200本という単位のナラ枯れ病の本数ではございません。本気で今この600本しか上石津にないということであれば、それはもう一度担当者に現地へ行って全周写真を撮って、その写真を1本ずつ調べてみてください。とてもこんなレベルの調査をしていたら、大洪水があってから、あの調査は間違っていましたとしか言いようがありませんので、再度調査をぜひしてください。これは要望です。
今度は少し視点を変えて再質問をさせていただきます。
市長は昨年から、民間企業が厳しいときこそ行政が率先して行動すべきと繰り返し発言されています。私は、不要不急の公共事業は悪かもしれないという意見、そこにうなずくこともありますが、実は今こそ真の公共事業が求められていると考えております。災害の変化に対する新たな公共防災事業の推進は、今まさになすべき公共事業の柱だというふうに考えます。実は本市では、平成15年12月22日に大垣市の災害応援協力に関する協定書というのを社団法人西濃建設業協会と結んでいます。第2条に応援協力として細かく書かれていますが、平たく言うと、災害のときには建設機械を貸してください、資材を提供してください、労力を提供してくださいというものです。しかし、今、この不況の中でどういったことが起きているでしょうか。実は、廃業、または規模の縮小です。仕事が極端に少なくなったため、従業員、すなわち労力を解雇し、仕事が入ったときだけに来てもらう家族労働に変わりつつあります。建設機械については、年間維持管理の費用が負担できず手放し、高額になるとわかっていても、仕事が入ったときだけリースで借りるという形に泣く泣く変えつつあります。災害時に真っ先に駆けつける地域密着型の小規模零細企業は、どこも今ぎりぎりの状態に追い込まれつつあります。いざ災害というときに応援したくても、建設機械も、それを運転するオペレーターもいない状態になる、この現実を市長は直視しておられますでしょうか。さらに、ある小さな食堂ではこんな懇願を受けました。私たちはほとんどワーキングプアの状態で、働けば働くほど赤字が拡大しつつある。お客さんの客足も戻らず、アルバイトを雇う余裕もなくなって、仕事もきつくなり、営業時間も短くせざるを得なくなってきた。手当をもらっても、皆将来が不安で外で使おうとしない。行政でうちの店を使ってくれと言っているのではない。世間に仕事を出してもらえば、皆安心して働くことができ、トラックの運転手さんや近くの現場や工場で働く人の昼御飯、そして休日には家族そろっての外食として私たちサービス業のところにもお金が回ってくる。仕事を出してこそお金は回り始める。とにかく世間に仕事を出してくれと。そのためには苦しくても、子ども手当がもとに戻ってゼロになっても我慢できると必死の形相でした。この声が市長の耳に届いておりますでしょうか。
今、市民生活の実態を二つ述べさせていただきました。経済的に厳しい環境に置かれている家庭や零細企業にとっては、ほとんど悲鳴に近い声です。市民は、もはや標語ではなく、文字どおりダイナミックな行動を求めています。健全な勤労家庭や民間事業者がつぶれてしまう前に、素早い行動を強く求めます。このまま見過ごして手おくれになるようなことがあれば、行政の怠慢と言わざるを得ません。既に緑と水からは災害発生の警告が発せられています。防災事業として、中山間地域にあっては広葉樹林の若返り施策、都市域にあっては内水面はんらん対策を新しいタイプの仕事として展開すれば、防災効果と経済効果を同時に確保することができます。市長の言われる行政が率先して行動すべき事業の具体的な柱としてふさわしいのではないでしょうか。改めて市長の決意をお伺いいたします。
◯議長(岩井哲二君)
市長。
〔市長 小川 敏君 登壇〕
◯市長(小川 敏君)
本市では、災害から市民の生命や財産を守るため、安全・安心のまちづくりに積極的に取り組んでいるところでございます。議員御提案の防災事業としての広葉樹林若返り事業につきましては、関係機関と連携し、その有効性を検討してまいります。また、透水性舗装につきましても、本市の地質の特質を考慮しながら、適する場所については積極的に採用してまいります。御理解賜りますようお願い申し上げます。