室蘭市議会議員

小田中みのる

MINORU ODANAKA

小田中みのるの市議会レポート
VOL.64

平成30年10月23日から26日まで会派による先進都市行政調査を行いましたので報告いたします。

高知県 室戸市

 

調査項目~海洋生物飼育展示施設 むろと海の学校
愛称:むろと廃校水族館について

むろと廃校水族館は、海洋生物の飼育や行業関連資料等を中心とした展示・調査研究および体験学習を通して、自然環境への意識の高揚を図るとともに、観光客等の誘致及び交流人口の拡大を促進することにより、地域の活性化を図ることを目的に、平成18年3月末で廃校となった旧椎名小学校を改修し水族館として再利用したものであり、平成30年4月26日にオープンしたものであり、指定管理者は、NPO法人 日本ウミガメ協議会であるが、委託料はなく入館料のみで運営。職員体制は4名でうち3名が学芸員。11月から1名増員する予定。

日本ウミガメ協議会では、2001年から室戸岬周辺での定置網にウミガメ類が数多く混獲されていることから、定置網漁師さんの協力を得て、日本沿岸に回遊するウミガメ類の生態の解明や環境保全の取り組みなどを進めていた。

そのような中、日本ウミガメ協議会では、平成26年8月に骨格標本の展示や調査研究・体験学習の場として旧椎名小学校を博物館や水族館としての利用することを市に提案。また、地元からも、集会所や避難所、高齢者の活動の場として利用したいとの要望もあったことから、平成27年6月に旧椎名小学校活用検討委員会を立ち上げ協議。

平成28年1月、3月、9月にそれぞれ関連予算が議決。事業費は総額549,664,399円で、財源は、国から「空き家対策総合支援事業補助金」192,062,000円、高知県から「観光拠点施設等整備事業費補助金」45,772,000万円、一般財源17,230,399万円で、294,600,000円、起債(過疎債)294,600,000円となっており、「室戸市まち・ひと・しごと創生総合戦略」及び「高知県産業振興計画地域アクションプラン」においても重要な地域振興策として位置づけられていた。

施設の概要としては、校舎内に円形大型水槽3基、小型水槽16基を配置、屋外の25mプールや小プール、図書室や理科室(標本約100点)、研修室を活用し、室戸の海域で生息し、獲れる海洋生物(約50種類1,000匹以上)の飼育・展示・研究のほか、ウミガメ等の給餌、測定体験など、見るだけでなく海洋生物と触れ合えるミニ水族館としての活用、骨格標本づくり体験、ウミガメ放流体験や調査研究などが行われていた。プールには海水(330m管を敷設)を取り入れていることから、季節(海水温度)によって展示する海洋生物も変わることも魅力のひとつとのことであった。

入館料は、一般大人600円、子ども(小中学生)300円、市民は大人500円、子ども250円で、いずれも未就学児は無料。入館状況は、4万人/年を目標としていたところ、10月23日現在で97,785人と大幅に上回っており、近隣の小中学校のほか修学旅行や教職員研修、専門学校や大学等の研修の受け入れも多数行われていた。

また、プレスリリースは一切しないということあったが、廃校水族館というネーミングや取り組み、展示方法が話題となり、多数のメディアにも取り上げられており、視察当日もテレビ朝日報道ステーションの取材が来ていた。

むろと廃校水族館は、日本ウミガメ協議会の熱い思いとプールや手洗い場を利用した飼育、理科室などを利用した展示など、学校ならではの特性を生かすとともに、様々な工夫により目標を大幅に上回る入館者となっていたが、今後はさらに博物館としての登録を目指すということであった。

むろと廃校水族館は、廃校施設の新たな利活用の一例であり、地域の活性化を図るという目的も見事に果たされていた事例であった。

高知県 高知市

調査項目~こうちこどもファンドについて

高知市では、「高知市民と行政のパートナーシップのまちづくり条例」に基づき、市民のまちづくり活動を支援・促進するため3,000万円を四国銀行に出捐し民間資金も活用する公益信託として平成15年に「まちづくりファンド」を創設し市民活動を活動資金面からも支えてきた。当初、年間助成金が300万円で10年間限定でスタートしたことから、10年目を迎える平成24年度を前に成果を検証し、この事業を継続するのか中止するのかを判断するために検討委員会を立ち上げた。

まちづくりファンドについては、資金面での支援にとどまらず、まちづくりの知識・経験豊富な運営委員からの意見などにより、活動の問題点や課題について話し合う情報交換の場となっており、共同のまちづくり推進に有益な事業と評価され継続するとともに、助成実績の1/3を「子ども」を対象とした事業が占めることから、新たに「子ども」に関する助成制度を創設することとし、子どもの主体的なまちづくり活動(体験)を支援する制度として平成24年度に「こどもファンド」を創設した。

こどもファンドの概要

○助成対象団体~①18歳以下の子どもが3名以上参加していること。②子どもをサポートする大人が2人以上いること。③高知市在住または在学で、複数世帯で構成されていること。

○助成対象事業~子供たちのアイディアで、住んでいる地域等をより魅力的で水御井町にするための活動、子どもたちの活動によって、誰かが喜んでくれる活動を応援するための制度。

○助成金額~1事業あたり20万円(10/10)まで
事業に必要な材料費・文房具代・チラシ印刷費・講師謝礼金等

○審査制度
書類審査~事務局である行政の担当部署が、申請内容や助成金額について審査
公開審査~公開プレゼンテーション→子ども審査員と大人の審査員による質疑応答→審査員による協議し助成団体を決定

○審査員の構成と審査基準
子ども審査員~9名以内(小中高各3名)で、子どもの視点で申請内容を審査
大人の審査員~7名以内で、子ども審査員をサポートし、公益性、発展性、意欲、手段の効率性などを審査

○活動発表会~3月には1グループ5分以内での発表を行う。

○財源~市が2,000万円を基金に積み立てたほか寄附金(平成24年度以降約900万円)による。

○助成実績~平成30年度までの7年間で53件、934万円

○事業の効果と課題~「こども」を中心としたまちづくりの活性化、将来の高知市のまちづくりを担う人材の育成、子どもにやさしい高知市の実現などの効果が挙げられる一方、葛生継続に向けたサポート、広報の仕方、年々減少している寄付の集め方が課題。

今回調査した「こうちこどもファンド」は、成果でも言われているように、子どもたち自身の純粋な想いを実現するためには、父母やPTA、教員、地域の各種団体の協力が不可欠であり、協力する大人もまちづくりを考えるきっかけとなるなど、地域におけるまちづくりの活性化につながる可能性が大きい。また、事業を実施した子どもたちも自分たちの手で自分たちのまちをよくする実体験を踏まえ、コミュニティ能力やふるさとに対する愛着心を芽生えさせることに繋がる、本市としても取り組むべき素晴らしい取り組みであると感じた。

神奈川県 横須賀市

調査項目
1.エンディングプラン・サポート事業

事業実施の背景として、横須賀市における一人暮らし高齢者が1万人を超え増加傾向にあること、身元が分かっていながら引き取り手のない遺体も年間50体に上がっていたこと、さらに民生委員や町内会からひとり暮らし高齢者の終活課題について相談に応じてほしいとの意見が寄せられていたことから、ひとり暮らし高齢者の葬儀・納骨・リビングウィルなどを支援する「エンディングプラン・サポート事業」を平成27年7月より開始した。

事業の対象者は、原則として、ひとり暮らしで身寄りがなく、収入が月額18万以下、預貯金が100万円以下程度の高齢者。

事業内容は、市が相談窓口となり、葬儀・納骨・死亡届出人・リビングウィル(延命治療意思)についての事前意思表示、かかりつけ医や定期訪問の希望などをまとめ書面に残し保管するとともに、相談者自身が協力葬祭事業社1社と生前契約を結ぶ。契約者には、市が登録カードを2枚発行し、万が一の時には、医療機関等から市や葬儀社に連絡が行き、葬儀社が契約に従って手続きを進めることになっている。生前契約にかかる費用は、生活保護受給者の葬祭扶助基準に合わせた20万6千円以内で予納となっている。

現在までの相談者は378人で、登録件数は35件、プラン実施は6件となっていた。

懸念事項としては、本人が予納した場合の葬儀社の倒産リスクがあるが、火葬する者がいない場合は、墓地埋葬法で自治体が火葬義務を負うことから、事業を実施しない場合は、火葬する者がいない場合の全ての費用を負担することになるが、事業を実施した場合は、葬儀社の倒産リスクだけを負うこととなり、倒産リスクより事業未実施リスクの方がダメージは大きいとのこと。

エンディングプラン・サポート事業において生活困窮者の終活を支援する一方で、近年、ご本人が倒れた場合や亡くなった場合に、せっかく書いておいた終活ノートの保管場所や、お墓の所在地さえ分からなくなる事態が起きていることから、こうした”終活関連情報”を、生前に登録し、万一の時、病院・消防・警察・福祉事務所や、本人が指定した方に開示して、本人の意思の実現を支援する事業「終活情報登録伝達事業(私の終活登録)」が平成30年5月から開始されていた。

対象は希望するすべての市民であり、登録できる項目は、本籍・筆頭者、緊急連絡先、リビングウィルやエンディングノートの保管場所、葬儀・納骨などの生前契約、お墓の所在地等のほか自由に追加できるものであり、市は、名前と連動させた個別番号だけをPCにて管理し、詳細については紙ベースで保存することから、必要経費も職員の負担も極めて少ないとのことであった。

事業開始から半年足らずであるが、相談件数222件、登録件数は32件となっており、今後ともニーズの高い事業であるとの認識であった。

本市としては、横須賀市以上に高齢化が進んでおり、また、ひとり暮らし世帯や夫婦や親子などの複数居住の世帯であっても、老々介護、認々介護といわれる世帯が増加している時代である。さらに子供や身内がいない、または、いても疎遠になっているなどにより、自分の死後について様々な不安を抱えている方が今後さら増加していくものと思われる。

そのような中にあって、横須賀市の取り組みは非常に参考となるものであり、身寄りのない高齢者の終活を支援することや、全ての人を対象に終活情報を登録できる事業は、本市が取り組むべき事業だと考える。

2.「コンパクトシティの取り組み」について

横須賀市は、1871年の横須賀製鉄所開設以来、軍港都市として発展し、約100㎢の面積に現在約40万人弱の人口の中核市である。

社人研の推計では、1990年に約43万3千人いた人口が2040年には31万2千人に減少するとの推計が出されており、横須賀市においても人口減少への対応したまちづくりが求められており、平成28年3月には都市計画マスタープランを改訂し、現在は、立地適正化計画を策定中である。

都市計画マスタープランでは、「豊かな暮らしと、いきいきした交流をはぐくむ都市」~都市魅力で選ばれる横須賀~を目標に、拠点ネットワーク型都市づくり、都市魅力の創造に取組むとし、立地適正化計画では、地形特性等によってまとまりのある市街地が形成されてきた経緯があり、コンパクトな居住地としての素地があるため、将来的な人口減少低下において一定の人口密度の低下を許容しつつも、現在の各拠点での利便性の高い都市機能と公共交通サービスについては、横須賀市が有する多様な地域特性や地域資源を最大限に活用しながら各種取り組みを進めることで、居住地の規模と生活利便性の維持を目指すとしている。

都市機能誘導に資する施策

1.市街地再開発事業の推進
都市拠点(横須賀中央駅周辺)、地域拠点(追浜駅周辺、京急久里浜駅周辺)

2.「地方再生コンパクトシティ事業」による魅力ある都市づくり
塩入駅周辺~ヴェルニー公園内に(仮称)横須賀市近代遺産ガイダンスセンターの整備、追浜駅周辺~生浜公園の横浜DeNAベイスターズの総合練習場誘致に伴う都市公園のリノベーション

3.「JR久里浜駅周辺の土地利用方針」の推進

4.市民病院(うわまち病院・市民病院)の再整備の推進

5.PPP/PFI手法の導入による魅力ある公共施設の整備

6.まちづくり協定による拠点内の質の向上(地元主体の取組支援)

居住誘導に係る施策

1.子育て世代の居住促進の後押し
  「子育てファミリー等応援住宅バンク」掲載物件を購入する際の助成~50万円   市外に住む子ども家族の市内転入促進策として、親世代と子ども世代の2世帯同居に必要なリフォーム費用の助成~30万円

2.谷戸地域居住促進に向けた支援
  谷戸とは、リアス式海岸のように谷が入り組む地域に開発された、横須賀特有の住宅地であり、空き家の増加、高齢化が進んでいることから、谷戸地域を拠点に創作活動を行う芸術家等の誘致や関東学院大学と協働して、空き家を活用した地域の交流拠点の創出を図る~リフォーム150万円、シェアハウス半額補助等。 また、公共交通に資する施策として、地域公共交通導入に向けた検討も進められていた。

横須賀市におけるコンパクトシティの取組については、現在、立地適正化計画が策定中であったが、具体的な施策については今後の検討とされていること、また実施中の子育て世代の居住促進施策については、年に数件程度の利用にとどまっている状況であり、今後の更なる取り組みを注視する必要がある視察であった。

小田中みのる
室蘭市議会議員