4月16日から19日まで会派による先進都市行政視察を行いましたのでご報告いたします。
1 鳥取県鳥取市 「鳥取市スマートエネルギータウン構想」について
鳥取市では、H20年のリーマンショックに加え、H23~H24年度にかけて誘致企業の事業所閉鎖や規模縮小により地域基幹産業の基盤が崩壊したため、市民生活安定の基盤となる雇用の確保・創出を重要課題として位置づけ、4年間で2千人以上の雇用を創出することを目標にする「鳥取市雇用創造戦略方針」をH22.6に策定。
その中で、成長産業である環境・エネルギー分野を中心に地元企業の技術を結集したビジネスモデルの創出・雇用創造に取り組む「スマート・グリッド実証実験支援事業」を重点事業(H23~H26年度)として実施。
※スマート・グリッドとは、電力の流れを供給側、需要側両方から制御し、最適化できる「次世代送電網」
鳥取市スマート・グリッド・タウン構想によるH23年度以降の実証実験の実施、H25・26年度の分散型エネルギーインフラプロジェクト導入可能性調査、マスタープラン策定事業による事業計画の策定により、環境エネルギー産業に市としても関与することによる地域活性化の準備が整ったことから、その継承としてH27.8に「鳥取市スマートエネルギータウン構想」を策定しました。
鳥取市スマートエネルギータウン構想では、前構想の知見を踏まえ、産学金官の連携のもと「エネルギーの地産地消」の推進を通じて成長分野である環境エネルギー産業を一層振興し、地域経済への具体的な波及効果を創出することによって地方創生を実現するもので、「エネルギーの地産地消」を推進、地域内資金循環の活発化、鳥取市のエネルギー産業の第2ステージ(具体的ビジネス化の展開)を目標に、低炭素社会の実現、資金・資源の地域内循環、地域エネルギー産業にけん引された地域経済の成長、雇用の創出・個人所得の向上、UIJターンの促進を転出抑制(人口減少対策)、防災的な課題を見据えたまちづくりなどの効果が期待されるとしていました。
中でも特徴的なものが官民連携による地域電力会社である「㈱とっとり市民電力」の設立です。設立の背景には、電力小売りの自由化があり、また、地域エネルギー企業の創出、エネルギーの地産地消、地域内資金循環、地域経済の成長戦略・雇用創出、具体的には、エネルギーコスト削減、防災拠点機能の強化、地元住民や企業等への地産地消の電力購入機会の提供、新事業展開によるその他事業への波及効果、地域環境・エネルギー産業の振興、温室効果ガスの削減、公共施設光熱費削減など、地域振興都市域課題の解決に寄与することが挙げられます。
㈱とっとり市民電力は、鳥取ガスが創業100年を機にガス事業だけでなく多様なエネルギーを供給したいとのことからH28.4.1から操業開始されており、資本金2,000万円、鳥取ガスが90%、鳥取市が10%出資の株式会社です。
実績としては、H28.4から市所有75施設(年間622万kw)に供給を開始し、H29年度28施設、H30年度10施設を追加(約750万kw/年)、市所有施設への更なる供給拡大に向けて連携中とのことです。鳥取市の電気代の削減効果としては、H28年度280万円、H29年度490万円となっている。民間施設や工場にも顧客開拓をしているそうです。また、H28.12月1日からは一般家庭向け電力販売も開始しており、H29.3月末現在の低圧契約件数は2,400件となり、電力販売量は1年前の約2.5倍に拡大し、第2期決算では大幅増加の経常利益(約1,800万円)を確保していました。
一方、地元電力からの調達割合は、H28年度約40%程度からH29年度は約22%と低下しており、さらなる電源開発による「地産地消」率の向上が課題とのことであり、そのため、エネルギー供給に必要な電源開発支援、環境エネルギーベンチャーの立ち上げ支援等を実施するため、民間企業主体により「とっとり環境エネルギーアライアンス合同会社(TEEA)」をH27.12.1に設立しており、再生可能エネルギーの研究、開発をはじめ環境エネルギー全般に係るコンサルティング業務を行っているとのことでありました。
本市では、室蘭市グリーンエネルギータウン構想を策定し、昨年度実行計画を策定していますが、市民電力については検討が始まったばかりであり、他市の市民電力についてさらに検証する必要がると感じました。
2 鳥取県倉吉市 「円形校舎活用事業(旧倉吉市立明倫小学校)」について
旧明倫小学校は、昭和30年に旧絵鞆小学校を同じ建築家の坂本鹿名夫氏が設計し、S30年に建設された学校であり、円形校舎としては3番目、国内で現存する中では一番古い校舎です。小学校としては、S52年に移転するまで使用され、H18年まで地区活動の拠点や放火度児童クラブ施設として活用されていましたが、施設の老朽化及び今後における行政による活用の計画がなかったことから使用が禁止され、解体の方針が表明されました。H26年には解体に関する予算を提案もされたものの、同年度に予定していた中心市街地活性化基本計画を策定する中で、地元からの活用希望等の意見を考慮し、再度吟味した上で、活用及び解体の方針を出すよう予算凍結の付帯決議がつけられるなど、時間をかけての議論が行われました。
一方、存続を求める市民団体等は、H26年12月に国内最大手フィギュアメーカーである㈱グッドスマイルカンパニーの製造工場の誘致の実現、倉吉市が舞台モチーフとされる作品であるデジタル配信コンテンツ『ひなビタ♪』との連携、白壁土蔵群・赤瓦との連携による「新たな観光資源」の創出、また㈱海洋堂からの助言も受け、倉吉市によるレトロ&クールツーリズム、鳥取県による「まんが王国」施策の展開をすべく、円形校舎を活用したフィギュアミュージアムを開設するため、地元主体でも商業まちづくりを行うためH29.3月に㈱円形劇場を設立し、同年6月に施設の無償譲渡の議案が可決されました。(土地は有償貸付)
円形校舎改修及びリニューアルには、平成29年度経済産業省助成事業である「地域・まちなか商業活性化支援事業(中心市街地再興戦略事業)」の採択を受け、国補助1億円、地元金融機関からの融資約1億2千万円が掛けられ、「円形劇場くらよしフィギュアミュージアム」として4月7日にオープンしました。
1階は、㈱グッドスマイルカンパニーによる萌え系手のひらサイズサイズフィギュア・工場内の製作工程の無料展示、2階は、㈱海洋堂によるジオラマ展やプロの造形師による作品展示、3階は、米子ガイナックス㈱によりジオラマによる大型フィギュアの展示及び様々な体験メニューの提供となっており、季節ごとの展示や週ごとにイベントも実施するとのことでした。入場料は高校生以上1,000円、小・中学生500円、未就学児無料となっており、初年度の入場者は、ポップカルチャーファン5.5万人、観光客周遊5.3万人、円形校舎の魅力目的8千人の合計11万3千人を見込んでいるそうです。
このフィギュアミュージアムのオープンまでには、円形校舎の保存を願う多くの市民の想いと行動力があったことはもちろんですが、フィギュア制作会社大手のグッドスマイルカンパニーの工場誘致が大きな転機となり、フィギュア業界きっての老舗メーカーである㈱海洋堂、アニメ制作会社米子ガイナックス㈱の協力、鳥取県が「まんが王国とっとり」という施策の中で、ゲゲゲの鬼太郎や名探偵コナンと並ぶ中核施設としてフィギュアミュージアムを位置づけたことや国の「地域・まちなか商業活性化事業」に認定され補助金を得られたことなどが挙げられていました。
室蘭市の旧絵鞆小学校の円形校舎についても単に保存するだけでなく、とのように活用するかが課題です。
3 島根県松江市 「発達・教育相談支援センター エスコ」について
発達・教育相談支援センター「エスコ」とは、心身の発達に支援の必要な児童等(青年期や保護者を含む)に対し、乳幼児期から青年期にかけての相談、指導、療育等を行うことにより、その心身の発達を支援し、自立と社会参加を促すことを目的に平成23年4月に開設されたものです。
このセンターの特徴は、何と言っても教育委員会の機関として設置されているところです。「エスコ」とは、出雲弁で「いい具合」という意味で、子どもたちの日常生活や将来が、いい具合に進むようにという願いが込められています。
職員は22名でその構成は、所長・指導主事1名、指導主事(小中学校担当4・幼児担当3)7名、事務主幹1名、行政専門員1名、教育専門員1名のほか、嘱託・パート職員として教育指導講師、臨床心理士、言語聴覚士、発達相談員、療育指導員が配置されています。健康推進課子育て支援センターが入居する保健福祉総合センター内に設置されており、3歳・5歳児健康診査時には、エスコの指導主事、臨床心理士等がスタッフとして参加し、カンファレンスによる情報共有がなされており、早期からの個別支援に生かされていました。5歳児健康診査は、すでに実施していた東出雲町と合併したH23.4から4歳児後期の幼児を対象に検診を実施することで、保護者に発達過程を意識させる機会とすること、就学に向けての適切な支援を提供することを目的とし、医師2名、保健師7名とエスコのスタッフが担当し実施することになったとのことです。
エスコの相談支援としては、来所や電話で相談を行う「エスコ相談」、大学教授や医師・保健師・特別支援学校教員・通級担当教員を含めた体制で必要な支援のあり方についての相談を行う「専門巡回相談」、幼稚園教諭等・小中学校特別支援学級担当を含めた体制で特別な支援の場の必要性を踏まえ必要な支援のあり方について相談を行う「就学相談」、就学審議会で大勝時の実態、本人・保護者及び在籍円・校等の意見を踏まえ、就学に係る意見を伝える「就学審議会専門調査」などが行われています。
早期支援・幼児の療育としては、発達障がい等の子ども(3歳から就学前)を対象に①「感覚・運動」、②「コミュニケーション・社会性」、③「認知」、④「学習態勢」の4つのカテゴリーを中心とした週1回個別の療育や4~5人のグループ療育(エスコ療育「にこにこ教室」)を実施しているほか、公立の幼稚園・幼保園の8園に13の特別支援幼児教育も実施されていました。
また、子育てに難しさを感じている幼児から小学校2年生の子どもの保護者を対象に子どもとのかかわり方、楽しい子育ての仕方や講義やワークを通じて学んだり情報交換したりする家庭療育支援講座「のべのべ講座」も実施されていました。
本市でも導入しているサポートファイルと同様の「だんだん」も活用されているほか、医療との連携では、学校から保護者への安易な医療受診の勧めや診察の際の学校での様子等の関する情報不足を解消するための「松江市家庭・教育・医療連携シート」が導入されるなど、医療受診の必要性に係る丁寧かつ十分な説明を学校からする体制がとられていました。
その他、特別支援教育に係る様々な研修も行われており、教育委員会の組織としての機能が発揮されているとともに福祉や保健、医療との連携も十分図られていると感じました。
室蘭でも職員体制など多くの課題はありますが、目指すべき方向性が見えた感じがしました。