室蘭市議会議員

小田中みのる

MINORU ODANAKA

小田中みのるの市議会レポート
VOL.56

先進都市行政視察

11月13日から16日まで会派による先進都市行政視察を行いましたので報告いたします。

1 香川県東かがわ市

(1)5歳児検診の取り組みについて
東かがわ市では、平成17年4月1日に、「発達障害支援法」が施行された同年、モデル事業として5歳児健診を実施し、翌、平成18年度より通年事業として実施されていました。

背景としては、これまで、母子保健法や学校保健法に基づいて、1歳半健診や3歳児健診、就学前健康診断は行っていましたが、3歳児健診以降、就学前健診までに発達を診る公的な健診がないことや、脳の前頭葉機能が発達するのは4、5歳頃であり、これまでの健診だけでは、発達障害を判断することは困難であったため、「5歳児健診」を実施することにより、広汎性発達障害や注意欠陥多動性障害(ADHD)などの早期発見に向けた、健診の必要性の声が高まったことにあります。

また、5歳児健診は、発達障害を発見することだけが目的ではなく、子育てに関する悩みや相談事など、保護者の育児に対する不安解消、さらには、以降の集団生活を円滑に進めていくためのひとつの手段として、乳幼児期から青少年期までの一貫した子育て支援を考える中で最も効果のある健診のひとつと考え、5歳児健診を子育て支援の一貫として位置づけされていました。

実施に当たっては、先ず、年度初めに合同園長所長会において、実施の協力を依頼し、その後、医師、療育センター、保健課、子育て支援課、学校教育課が集まり、前年度実施の結果等を踏まえ、実施に向けた協議を行うなど、健診実施前から、各施設や関係者等との連携を確認することで、スムーズな実施が可能となっていました。

検診後のフォローとして、相談支援専門員、作業療法士、保健師、幼・保・こども園の施設長・担任が、検診3~4ヶ月後に、幼児が所属する幼稚園などにおいて、事後観察を実施し、その後の状況等を確認するとともに、誰がどのように保護者にアプローチするかなど、効果的なアプローチ方法や今後の支援方法について、具体的な検討が行われ、実際、保護者に健診後の様子を聞き取る際には、不安を与えないよう、聞き方を工夫するなどアプローチの方法については、十分な配慮が重要とのことでありました。

 

また、東かがわ市では、健診の目的や発達障害への理解と知識の向上を図るため、平成17年度より毎年「発達フォーラム」を実施しており、積極的な啓発を行うことで、事業開始以前に比べ、市全体での発達障害への理解が進み、健診自体もスムーズに実施されており、現在、5歳児健診受診率はほぼ100%を達成しており、継続することの大切さを強調されていました。

課題については、就学の段階で就学指導委員会へ繋げてはいるものの、就学後は教育部が担当となり、その後、個別の把握が困難であるとのことでありました。

本市では、まだ5歳児健診は実施されておらず、発達障害の早期発見、早期支援に向け早急に取り組むべきと考えます。

2 徳島市

(1)健康づくり大作戦ポイント制度
この事業は、市民一人一人の健康づくりへの関心を高め、自主的な取り組みを支援することで、生活習慣病を予防し、健康寿命を延ばすことを目的として行われた事業であるが、国の地域活性化・地域住民生活等緊急支援交付金(地方創生先行型)が不採択となったこと、利用者が少なかったことなどにより平成27年度の単年度事業となったものでありました。

事業内容は、市民が健康づくりのために実行した取り組みをポイント化して、1,000ポイントを1,000円分の商品券に交換できるもので、20歳以上の徳島市民1,000人を対象としていたものの、実際には、申込者数767人、ポイントを商品券に交換した市民は295人(38.5%)の実績であり、予算額209万円に対して729,050円(一般財源)の決算となっていました。

現在は、健康手帳を特定健診等の健診時に手渡しして健康づくりに役立てているとのことでありました。

健康づくりに関する事業においては、様々な市においてポイント事業を行っていますが、その財源とともに効果をしっかりと検証する必要があります。徳島市の場合は、交付金が採択されなかったことにより単年度事業となりましたが、周知期間、申込期間、財源などの課題があったことから、本市においても、高齢化が進む中、市民の健康づくりについての取り組みが必要ではありますが、財源を担保したうえでしっかりと制度設計を行い実施することが望ましい事業であると思われました。

(2)徳島市民病院の経営について
徳島市民病院は、昭和3年に内科のみの市立実費診療所として開設、昭和24年に徳島市民病院と改称、2010年に新築され屋上にヘリポートを有する11階建てとなっています。病床数は339床(一般病床295床、回復期リハ病床40床、人間ドック4床)、医師数74名(内初期研修医6名)で全職員数は572名。「脊椎・人工関節センター」、「地域周産期母子医療センター」を設置のほか、がん患者のトータルケアを目指して2015年4月に「がんセンター」を開設し、同時に緩和病床を5床も設置。2016年4月からは、24床の緩和ケア病棟として運用されています。

緩和ケア病棟開設に要した経費は、備品購入費6,849千円、医療機器購入費1,676千円、病棟修繕費として19,335千円の総額27,860千円。総費用の1/3(9,286千円)は、徳島県医療介護総合確保基金より拠出されています。収入は、病床利用率44.4%、1日平均10.7人で、月額16,070円の収益を上げています。平成29年4月から腫瘍精神科医師を採用し、緩和ケアを担当する常勤の医師1名以上の配置という緩和ケア病棟入院料の施設基準をクリアされました。

現病院事業管理者は、1973年に徳島大学医学部卒、2002年徳島大学医学部長、2011年徳島大学名誉教授を歴任、2014年から現職となっており、がん医療については、米国MDアンダーソンがんセンターへの留学経験のほか、日本臨床腫瘍研究会(現日本臨床腫瘍学会)会長なども歴任しており、医師確保については事業管理者の力によるところが大きいとのことでありました。また、徳島大学各診療科との人事交流を活発化するとともに、平成27年8月から臨床教育センターを設置し、質の高い臨床研修教育を実施するための体制も構築していていました。

平成28年度決算における病院事業総収益は、10,192,772千円、総費用10,144,530千円、純利益は48,252千円。平成26年度からは黒字となっており、一般会計からの繰入は、基準による繰入約17億円。患者数は、入院94,381人、外来103,293人の合計197,674人となっています。

市立病院の経営については、まず、医師の確保が最重要課題となっている現在、徳島市民病院においては事業管理者の出身である徳島大学からの派遣が行われており、担当者からは、外科系の医師は確保できているが、内科系の医師確保が課題であるとの話もあった。また、がんセンターや緩和ケア病棟の開設なども管理者の方針によるものであるとのことでありました。

本市立病院においては、医師確保が進んでおらず、今後も地域医療構想の中で本市立病院の役割や病床数が検討されることとなっていますが、市民にとって市立病院として何が必要か、医師確保をどうするか、病院事業管理者の役割の大きさを改めて感じた視察でありました。

3 三好市

(1)サテライトオフィス誘致プロジェクトについて
三好市では、人口減少と少子化の影響で、学校数の減少や経済の縮小が課題点として挙げられていた中、循環型(都市部の従業員が2~3ヶ月、地方の事業所にて勤務。リフレッシュの要素が強い)から地元雇用型のサテライトオフィス誘致に転換していました。

理由としては、都市部であってもIT企業などは、大企業に埋もれ人材確保に苦労していたところ、地方に立地することによりニュースとなり人材が集まる、また、地元雇用となることから地域住民と密接な関係が築くことができるなど、様々な好影響があることが挙げられていました。

実際に誘致活動で実際に進出を検討する企業が物件を探していたところ、市内中心部にある、廃業した歴史ある旅館のオーナーが、安価での提供を了承し、初めてのオフィスが開設され、時を同じくして、三好市の地域おこし協力隊が古民家を改装し、「スペースきせる」を開設し、さらにNPO法人「マチトソラ」も設立されるなど、地域挙げての受け入れ態勢も整いました。その結果、現在では6社が進出し、24人の地元雇用を生んでいました。

三好市としては、様々な企業誘致のための支援策を講じていますが、この事業は、行政がきっかけを作ってはいるものの、実際には民間の力が大きく働き、良い意味での連携が取れていると感じました。

本市も含め、行政が企業誘致へ向け金銭面も含めた様々なメニューを用意しても、企業側が求めているニーズとは乖離する場合が多いのが実態で、必ずしも企業誘致には繋がっていない現状があります。

しかし、三好市の場合、サテライトオフィスを誘致する前提で、市内のブロードバンド環境を整備し、オフィス物件として休廃校した学校や、民間施設も視野に事業を進め、廃業した旅館や学校の活用にも繋がっていいます。

しかも、ターゲット先は、都心部で営業を行い、人材確保に苦慮しているベンチャー企業などで、三好市にいながら地元人材の活用で、都心部の仕事が進められることをセールスポイントとして売り込んで成功していますし、地元ケーブルテレビ局が制作した、「仕事はデジタル、暮らしはアナログ」のキャッチフレーズとPRビデオなど、地域挙げての受け入れ態勢は特筆すべきもので、進出企業の経営者の繋がりや、口コミ情報で新たな企業も進出しており、北海道の企業が廃校になった小学校の体育館を倉庫として活用し、スポーツ用品の物流基地として営業活動を行っていることも参考になる事例でありました。

本市においても、モノづくりに関連した企業ばかりではなく、IT関連も含め、広い範囲での企業誘致を進めながら、将来性のある企業の育成や、人材に対する先行投資も真剣に考えるべきであると感じた視察でした。

小田中みのる
室蘭市議会議員