会派行政視察報告
14日は、長野県長野市における認知症高齢者(家族)支援のうち、認知症初期集中支援チーム」及び「安心おかえりカルテ」について伺ってきました。
長野市の状況~人口382,719人(H28.6.1現在)、65歳以上は107,376人で高齢化率28.06%、介護認定者数は、20,964人で認定率は、19.2%、包括支援センターは、市内20カ所で、うち直営が2カ所。
認知症初期集中支援チームとは、複数の専門家が家族の訴え等により認知症が疑われる人及び家族を訪問し、アセスメント、家族支援などの初期の支援を包括的、集中的に行い、自立支援生活のサポートを行うチームのことをいい、本市では、今年度から立ち上げているところですが、長野市では、平成25年度から実施していました。
対象者は、40歳以上の在宅生活者で、かつ認知症かその疑いの人、医療や介護サービスを受けていない人か中断している人など、または、医療・介護サービスを受けているが、認知症の行動・心理症状が顕著なため対応に苦慮している人などです。
支援チームは、専門医や市職員の保健師、看護師、OT、社会福祉士など10名で構成され、直営の包括支援センターで行っているということでした。
活動状況は、H27年度における訪問対象者は、74名(H26継続者24名+H27把握者50名)で、訪問回数は191件、チーム員会議は、24回で2,310分。1回平均96分で1回あたり3~4件の案件について協議。
波及効果としては、認知症の人、またはその家族の実情を把握し、支援策の事業化に繋がったこと、認知症支援検討委員会においてチームの活動を報告したことにより、認知症施策の振り返りと今後の活動についての検討が可能となったなど。課題としては、認知症に対する早期支援の重要性についての周知・市民啓発、医療と介護の連携強化、認知症地域支援推進員との連携、認知症初期、若年性認知症の方や加須の居場所つくりなどが挙げられていました。
安心おかえりカルテ作成支援は、地域包括支援センター職員が「安心おかえりカルテ」の作成を支援し、家族が改めて本人の状況を理解することや相談できる場や人とつながること、行方不明者の早期発見に役立てることを目的にH26年10月から始まった事業です。
作成数は、H26年度44件、H27年度60件となっており、中々進まないことが課題ということでした。その理由として、一人暮らしへの対応や認知症、またはその疑いがあるということを認めさせなければならないということが難しいということでした。
本市も、高齢者数が増加しており認知症対策が重要で急務な課題であることから、長野市の取り組みを参考とすべきと感じました。
15日は神奈川県小田原市において、「おだわらTRYフォーラム」及び「無尽蔵プロジェクト」について伺ってきました。
おだわらTRYフォーラムとは、総合計画(おだわらTRYプラン)を策定する際に、市民、各種団体、市がそれぞれの立場や役割に応じて、様々な姿勢テーマについて意見を表明する小田原市独自の市民参画手法であり、持続可能な自民自治のまちを形成するためには、市民、職員ともに高い問題解決能力を持つことが求められることから、総合計画策定プロセスと並行した協働の取り組みのなかで市民と職員の協働を徹底的に育てることを目的として行われた、市長トップダウンの手法ということでした。
おだわらTRYプラン策定のプロセスとしては、市民の声なく声を掘り起こすため、無作為抽出(3,000人)で年齢構成に応じた選ばれた市民(200人)により8分野36テーマについて討議。職員の主体的な関与としては、市が歩む可能性のあるプロセスを施策ごとに複数のストーリーとして描くシナリオプランニングを作成。その過程で、多くの職員が担当の枠を超えて対話し、視野を広げて計画に携わる。住民が主体となったまちづくりを目指すため、25の地区自治会連合会の区域ごとに自治会役員を中心に地域にかかわりの深い各種団体役員など約750名が参画し、地域別計画が策定された。
無尽蔵プロジェクトとは、「おだわらTRYプラン」の目指すものの一つで、民間をエンジンとした活性化の取り組みのことであり、小田原の地域経済活性化に向け、これまで行かされていなかった地域資源に着目、民間がエンジンとなって事業化を進める。民間は民間にできることを、行政は行政にしかできないことを実施、協働を組むものであり、つまり、市民の発想とノウハウで活性化事業を企画・実施(資金も自分たちで調達)し、行政は側面から支援するというものであります。活性化推進のテーマとして、食・文学・ものづくり・エコ・情報発信など10のテーマを決め、それぞれ関係のある団体や個人が一つにまとまり事業を推進していました。
無尽蔵プロジェクトを可能にした要素として、小田原に対する深い郷土愛を持ち、行政に対する一定の信頼感があり、事業を行う上での活動歴や専門性、力量がある然るべき担い手の存在がいたことがあげられ、その効果として、同じ目的の活動団体が一つにまとまり活動を開始、民間ならではの自由な発想とスピードによる事業展開、新たな領域での連携、事業化は民だけでは難しく、黒子役として市職員の活躍が不可欠であり、職員の能力や資質の向上、意欲が重要であり、そのような職員が育ってきていること、等があげられていました。
担当者からは、埋もれた資産を掘り起こし磨くことは行政では限界がある。まちづくりは行政だけのものではない。大事なことは市民と市との「役割分担」であり、これがこれからのまちづくりの新しい形である。無尽蔵プロジェクトは次なるステージへ向かっているということでありました。
本市においても、市民協働が進められてきてはいますが、さらに踏み込んだ役割分担を考えていかなければならないと思わせてもらった視察でした。