民生常任委員会視察報告
10月22日から25日の日程で行った民生常任委員会行政調査については、以下のとおりです。
調査目的及び調査市
(1)本市では、魅力あるまちづくりのため、市民が地域の活性化や課題解決を目的に取り組む、自主的なまちづくり事業を支援するため、「まちづくり推進事業」や「地域en(えん)づくり事業」等に対し「まちづくり活動支援補助金」を交付している。しかし、交付は連続2年が限度であることや、補助金の適否及び交付額の決定については、市民協働事業選定委員会が要綱に基づき市長に提言することになっていることから、それぞれの市民活動が市民に周知されづらいなどの問題点もある。
以上のことから、先進都市である浜松市及び大分市の事業から本市の市民活動に対する応援のあり方について学ぶことを目的とした。
① 静岡県浜松市(人口:791,710人、面積:1,558.04㎢)
調査項目「はままつ夢基金」「団体支援補助事業」
「スタートアップサポート事業」について
<ア 事業の目的>
浜松市では、市民協働によるまちづくりを推進するため、市民、市民団体、事業者及び市に役割や責務、協働のための仕組みを明らかにする浜松市市民協働推進条例を平成15年4月に施行。
市民活動団体は、市民ニーズを身近に捉え、的確に、きめ細やかなサービスを独自の判断で、先駆的に提供しているものの、その活動においては、資金や人材の確保など運営面で苦慮している団体が少なくない。一方で、市民活動に直接参加することは難しいが、寄附をするという行為を通じて社会に役立ちたいと考えている人もいることから、市民と市民活動団体等がお互いに支え合う地域社会を目指し、市民の寄附文化の機運を作り出す仕組みとして「はままつ夢基金(市民協働推進基金)」を設置したもの。
<イ 事業の概要>
寄附を受けたい団体(市内で公益性の高い社会貢献活動を行っている市民活動団体)は、事前に登録を行い、市民活動を応援したい市民や事業者は、希望寄附(基金登録団体を選んで行う寄附)か一般寄附(市内の市民活動を広く支援する寄附)のいずれかにより寄附を行う。寄附金については、税制上の優遇措置の対象となる。
希望寄附は、団体支援補助事業からの補助金として当該登録団体へ交付(回数に制限なし)。一般寄附については、設立後間もない市民活動団体を応援するためスタートアップサポート事業(H24,10,1新設)として交付(回数に制限はないが設立1年未満)し、市民活動団体の活動を財政面から支えている。
<ウ 実績・効果について>
平成15年度から平成25年9月末日現在で、寄附・運用収入合計45件、3,367,214円、補助金交付額合計17件、1,985,200円、基金残高1,382,014円となっている。
効果については、受け入れる寄附の種類に応じて補助金を交付しているため、寄附受け入れから補助金交付までの流れが明確となり、寄附金の使途をわかりやすく公表できるようになった。また、団体支援補助事業については、寄附を募集する際に集まった寄附金を何に使いたいかを提示しているため、あらかじめ何に寄附が使われるかが明確であり、寄附者が寄附をしやすい環境整備につながったなどであった。
<エ 今後の課題について>
寄附金の受け入れが停滞していたことから、H21年度にはNPO法人のみであった対象団体を事前登録した市民活動団体へ拡大、H24度のNPO法改正に伴い、希望寄附からの補助金について、補助率及び補助上限額の撤廃などの改正を実施し、寄附金の受け入れ件数及び基金登録団体数が増加した。
課題としては、まだまだ制度自体や基金登録団体の活動のPRが必要であること、新設したスタートアップサポート事業については、設立1年未満の団体を対象としていることから、評価に苦慮している部分があることや申請団体が少数であることなどが挙げられていた。また、ふるさと納税や民間ファンドによる市民活動を応援する補助制度との競合についても検討しなければならないということであった。
② 大分県大分市(人口:474,094人、面積:501.28㎢)
調査項目 「あなたが支える市民活動応援事業(1%応援事業)」について
<ア 事業の目的>
市民協働のまちづくりを推進していく中で、ボランティア団体やNPOなどの市民団体は、独自に様々な公益課題の解決に取り組んでいるが、多くの市民活動団体は、活動資金の確保や市民の理解不足など活動環境課整っていない状況にあることから、市民の理解を深めながら、市民と行政が力を合わせて多くの活動団体を支援するとともに、税金の使途を市民が選択することで、より多くの市民のまちづくりへの参加意識を高めることを目的として、平成20年に創設した事業である。
<イ 事業の概要>
応援を受けたい団体は、事前に大分人材バンクに登録し応援を受けたい事業を市に申請する。その後、選考委員会で団体及び事業内容が「市民から応援すてもらうのにふさわしいかどうか」を選考。
市は、事業内容などを市報、ホームページ、制度PR冊子などで市民に公表するとともに市民活動団体も市民に対し制度のPRや応援届出のお願いをする。
市民(20歳以上の大分市民、20歳未満の大分市民で個人市民税を収めているもの)は、応援したい団体(一人3団体まで)を選んで、市に届け出る。
一人あたりの応援金額は、納税者の場合は、自分の個人市民税額の1%か平均額(1%の額が平均額より少なければ平均額)、非課税者の場合は、平均額。
(参考:平成24年度事業実施時における平均額は約550円)
<ウ 実績・効果について>
H20年度申請団体数54団体、補助金交付決定額4,700,302円だったものが、H23年度に身分証明書の提示を不要にするなどの届出を簡素化したところ、H25年度の申請団体数は93団体、補助金交付予定額は17,325,820円に増加している。
市民の有効応援届出数もH20年度6,508件であったものが、H25年度は23,934件と増加している(一方で、届出を簡素化したことにより、無効届出数も増加している。)ことから、事業の認知度や市民の市民活動に対する関心の高まりについては一定の成果が上がっている。
交付額は、上限を30万円とし、補助対象経費が5万円以下の場合は全額、5万円を超える場合は、5万円までは全額補助とし5万円を超える部分について補助対象経費の2分の1の額を加算。
<エ 今後の課題について>
事業目的の中に団体を自立させることも含まれていたが、開始から6年目を迎え自立した団体は数団体にとどまっている。市民活動自体が慈善性の高い、非営利なものであるため、自己資金のみでの運営が困難と思われる事業も多々あるが、他企業からの協賛金や受益者負担などの増益により自立を見込める活動もあるため、そのような団体の自立を促していくかが当面の課題である。
③ 考察
両市の事業とも、市民団体が行う公益的な活動を市だけでなく市民が自ら応援したい団体や事業を支えるものであり、本市としても取り入れる手法であると感じた。
ただし、浜松市の市民から寄附を募る方式では、なかなか寄附が集まらない現状が見て取れ、一方で、大分方式では、すでに収めている市税の1%を自らが応援する市民団体の事業に充てることができることから、市民理解も得やすいものと感じた。
したがって、本市が実施している「まちづくり活動支援補助金」をより発展させる上では、大分方式を取り入れるべきと感じた次第である。
なお、いずれの場合も交付を受けようとする団体自らが市民に対して自分たちの活動の周知(PR)を行うことも非常に重要でもあると感じた。
(2)本市では、平成20年度より施設型病後児保育を実施しているが、利用者数が低迷していることから、訪問型の病児・病後児保育事業を開始した雲仙市の事例を参考に、今後の病児・病後児保育のあり方を検討することを目的とした。
④ 長崎県雲仙市(人口:47,502人、面積:206.92㎢)
調査項目「訪問型病児・病後児保育事業」について
<ア 事業開始の経緯について>
雲仙市の「訪問型病児・病後児保育事業」は、本年9月に開始されたばかりの事業であり、経緯としては、子育て女性懇話会からの市長への政策提言を受け、施設型の病児・病後児保育事業を検討していたものの、応募が市域の中央部ではない1ヶ所しか見込めなかったことや長崎県からの強い要請(ワーキングママサポートプロジェクト事業)に基づき、サービスの地域性を補完するため、訪問型についても事業化したということであった。
<イ 事業の概要及び実績について>
訪問型病児・病後児保育の実施機関として、長崎県看護協会が受託。長崎県が行う訪問型病児・病後児保育サポーター研修を修了した9名が派遣看護師として登録(うち雲仙市在住は1名で他は市内まで30~60分程度の近隣市在住)。利用者は事前登録が必要であるが、利用申請と同時でも可としており、現在の登録者数は40名で、実際の利用は1名であった。
利用料金は、2,000円/日、派遣看護師への日当は15,000円/日(交通費別途)
<ウ 今後の課題と対応>
看護師等を自宅に派遣する形であり、利用者が家庭に入っての看護を敬遠する恐れがある。また、派遣看護師等の面識がないことによる不安が挙げられている。
対応としては、看護協会として、派遣看護師と登録者との交流会を実施しており、これらの交流回数を重ねることにより、登録看護師の訪問看護を行っている経験などから懸念は払しょくされるとみている。
⑤ 考察
本市病後児保育は、日鋼記念病院敷地内にて実施しており、保護者が施設まで送迎をしなければならないことや、地理的な条件(勤務場所から離れている等)により利用者が低迷していると考えられることから、訪問型病児・病後児保育を実施することにより、更なる仕事と子育てを両立できる環境をつくるべきと感じた。