5月15日から18日の日程で、経済建設常任員会による先進都市行政調査に行ってきましたので報告します。
<視察先 千葉県船橋市>
「民間賃貸住宅入居支援事業」
この制度は、家賃の支払いができるにもかかわらず、連帯保証人が確保できないとの理由により民間賃貸住宅への入居に苦慮している高齢者世帯、ひとり親世帯及び心身障害者世帯に対して、民間賃貸住宅情報の提供、入居保証を行うとともに、低所得者については家賃等債務保証契約時に要する費用の位置を助成するもので、H17・18年に福祉部局や市議会からの要望があったことからH19年に制度化したものですが、H19 年度1件、H22年度に1件の利用にとどまっているとのこと。理由としては、事業名から家賃への直接的な補助と勘違いされていること、また、高齢者が入居した場合、亡くなられた場合の対応などが挙げられており、検討が必要であるとのことでした。
「住宅リフォーム地域経済応援制度」
この制度は、東日本大震災の影響(仕入れができない、計画停電による営業時間の短縮、原発事故による風評被害等)により、市内の商業、工業事業所に被害が生じたことから、地域経済の活性化と市民の環境整備の推進を目的とする緊急経済対策として、H23年度11月に制度化したものです。
内容は、市民が居住する住宅を市内の施工業者を使って10万円以上のリフォームを行う場合に、工事費の10%分の商品券(地域経済応援券)を10万円分を限度として交付するもので、対象工事は、主たる工事(いわゆるリフォーム)のほか、条件付き対象工事として、エアコン・テレビ等の家電設置・家電関連工事、太陽光発電システム・ガス高効率給湯器等の高度利用等設備工事、外構工事等も含まれています。また、地域経済応援券は、市内の中小小売店舗のみで利用できる専用券60%分と、市内の店舗面積1,000㎡以上の大型小売店舗と中小小売店舗のいずれも利用できる共通券40%分の配分による交付としており、市内の多くの事業者が対象となっています。
H23年度は、3,000万円(平均5万円×600件)の予算で先着順としたところ、半日で完売となったため、H24年度は、2倍の6,000万円を予算計上。
効果としては、緊急雇用として3名を雇用したほか、この制度により新たに需要が喚起された経済効果(制度があるからリフォーム、工事増加、市街業者から市内業者へ)として、4.02倍。商品券分と合わせると5.02倍の経済効果と見込まれたということであり、今年度の需要喚起と経済効果をさらに検証し、次年度について検討するとのこと。本市においても、十分検討すべき制度であると感じました。
<埼玉県所沢市>
「空き家等の適正管理に関する条例」
条例制定の背景と目的について、高齢化や遠隔地への居住、経済的事情などの理由により空き家が目立つようになり、近隣住民に不安を抱かせたり、迷惑を受けたりすることについて、市への相談件数が増加してきたことから、犯罪や放火を誘発する要因の除去、建物の破損等による飛散防止、敷地内の樹木や雑草の除去等、所有者等に適正な維持管理を求めることにより市民の安全で安心な生活を確保するために条例制定に至ったということでした。
所沢市の空き家の実態としては、消防本部の調査によるもの、市へ相談されたもの併せて500件ほどが確認されており、相談内容としては、樹木や雑草、住宅の一部破損による飛散、門扉等の無施錠、ガスボンベの放置など。
条例制定の経緯としては、「防犯のまちづくり推進条例」のなかに空き家に関する条項も設ける検討をしたが、空き家に関する条項だけが特化すること、防犯上の問題だけではないこと等により単独の条例とすることにしたとのこと。
策定に当たっては危機管理課防犯対策課を中心に空き家関連の対応をしている関連部署、教育委員会や警察署等などにより協議、パブコメを実施するなどを経てH22年10月1日施行となった。
事務の流れは、近隣住民からの相談やパトロール等により管理不全な空き家を発見
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市による実態調査(現地・登記状況)
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所有者に適正管理についての助言・指導(市長からの通知文書)
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勧 告
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命 令
命令に従わない場合、所有者の住所・氏名・命令内容の公表をする旨を通知し
弁明の機会を与える
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公表についての検討審議
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公 表
(市の掲示場・市のインターネット・ホームページ等を予定)
条例制定の効果として、現地写真を添えて市長名で指導通知が送付されること、最終的に「公表」される場合があることや「警察との連携」などの内容が所有者に改善を促すきっかけとなり、相談件数に占める解決率も上昇している。また、庁内の横断的連携が円滑に行われるようになったなどが挙げられていました。
なお、現在まで、勧告~8件、命令~2件となっており、公表までに至ったケースはないとのことでありますが、助言や指導、勧告に従わない理由としては、高齢、経済的のほか、解体すると土地の固定資産税の軽減がなくなってしまうことなどがあり、全国的な課題でもある空き家対策については、国土交通省が引き書を作成中のようでありますが、各自治体が条例を制定し、税制も問題も含めて国に働き掛けていく必要があると話をされていました。
本市においても、老朽化した空き家対策は喫緊の課題であり、今年度中に条例制定の予定でありますが、所有者に対して適正管理を求めることはもちろん、行政として効果的な対策を今後とも検討する必要があると感じました。
<静岡県静岡市>
「特定優良賃貸住宅子育て支援事業」
この制度は、少子化が進み、将来的な人口減が見込まれる中、静岡市が現在認定している特定優良賃貸住宅の新規入居者を対象とした家賃減額補助を行い、安心して子育てができる環境づくりを進めることを目的として、H19年8月1日より始めています。
対象世帯は、小学校6年生までの子供を扶養している世帯で、月額所得の下限、上限が定められており、家賃の補助額は、住宅・部屋によって違いますが、本来家賃の40%程度(限度額4万円)、また、最大助成期間は6年となっています。
課題としては、入居者選定審査や補助額を算定するなどの事務手続きが非常に繁雑であることなどが挙げられていました。
「子育て世帯住宅取得資金利子補給制度」
この制度は、子育て世帯の持ち家の取得に対する経済的負担の軽減と市内への定住の促進をするため、市内において住宅を建築し、または購入するために、借り入れる資金に対し、利子の補給を行う制度で、事業期間はH22年度から5年間。
内容は、小学生以下の子供がいる世帯で、融資期間が20年以上、固定金利(補助対象期間)かつ年利1.0%を超える融資等の条件で、補助額としては、融資利率0.3%以内で60ヶ月以内、年間最大6万円の補助となっています。
都市規模に比べ民間の家賃相場が高い本市として、子育て世帯の定住対策として検討すべき制度でありました。