室蘭市議会議員

小田中みのる

MINORU ODANAKA

小田中みのるの市議会レポート
VOL.12

会派行政視察報告

会派にて先進都市を視察したので報告します。

≪千葉県柏市(2月1日)≫

1.視察項目及び目的

・超党派の議員提案による「命を守る2条例」の制定について

・「柏市がん対策基本条例」・「柏市自殺対策推進条例」について
柏市議会では、「命を守る2条例」として「柏市がん対策基本条例」・「柏市自殺対策推進条例」を超党派議員による議員提案条例として上程・成立させたことからその過程と効果、条例の内容について検証すること

2.視察内容

柏市では、2010年、議長(当時)の働きかけで発足した研究会等において親睦を深めた当選回数1回から3回の若手議員が超党派による政策研究に強い意欲を示したことに始まり、この動きに複数の会派のベテラン議員も賛同、特に市民生活に強い影響を与える医療福祉分野、中でも高齢者の死因第一位である「がん」、若年層の死因第一位である「自殺」に対する政策研究がすすめられた。ワーキンググループを設置し、医療従事者・NPO関係者・遺族等へのヒアリング、市関係部局との意見交換、条例の起草等を行い、2011年3月議会で「がん対策基本条例」、6月議会で「自殺対策推進条例」を議員提案で制定させた。

「命を守る2条例」が理念条例であることから実効性を疑問視する声もあったようであるが、議会からの「政策要望」としての意味合いもあることから、条例成立をきっかけとして庁内に「がん対策委検討会」や自殺対策ワーキンググループが発足、施策の検討体制が強化されるとともに、来年度予算にも反映されるなど、その効果が期待される。

本市においても、喫緊の課題である「がん」や「自殺」に対する対策を強化するためにも「命を守る2条例」の制定の必要性を感じるとともに、議員個々の政策提言ではなく、議員同士の議論を通じて政策をまとめ上げていくことが、合議体である議会としての役割であり、そのためにも議員の意識改革をはじめ議会改革の必要性を強く感じた視察であった。

≪神奈川県 藤沢市(2月2日)≫

1.視察項目及び目的

・「地域経営会議」について
地域経営会議はどのようなシステムなのか検証すること。また、本市においてどのように活用できるか検証すること。

2.視察内容

地域経営会議は、昭和56年度からの地区市民集会、それを発展させた平成9年度からのくらし・まちづくり会議という藤沢市独自の市民参加、市民協働の歴史を踏まえ、地域主体のまちづくりをさらに推進する新しい仕組みとして、市内13地区で平成21年度に市長(当時)の公約として始まったものである。

藤沢市においては各地区に市民センター・公民館があり、地域経営会議は、そこを拠点に各種地域団体からの推薦委員、公募委員によって組織されており、構成員の目安は30人になっている。地域経営会議の位置付けは、行政の附属機関ではなく、あくまで自らが地域自治としての課題解決に向けた意思決定を行うとともに、それぞれの地域の特性に応じた地域のまちづくりを進める自主的な組織で、役割は地域の市民の皆さんや地域における様々な団体と連携して、自主的な地域のまちづくりを進めることや市民センター・公民館と連携し地域の様々な意見集約を行い、地域自治としての課題解決に向けた意思決定を行うことであり、永続的な地域まちづくりを推進するために、意見、要望、政策の提言を市長に提出すること、などがあげられる。

市は地域経営会議の運営費を補助金として1地区平均200万円/年を補助している。現段階の事業内容については広報活動がメインになっているようであった。課題は、構成される委員の高齢者の比率が高く、女性の割合も少ないようなので、各年代、性別の委員構成が必要と考えているとのことであり、委員の選考や、事業内容にはまだまだ検討しなければならない項目が多々見受けられた。

≪神奈川県 大和市(2月2日)≫

1.視察項目及び目的

・コミュニティ交通について(コミュニティバス事業・地域乗合交通創出支援事業について)
本市においてもコミュニティ交通事業が検討されており、その導入における問題点の把握と実施方法を検討すること。

2.視察内容

大和市は、本市よりも狭く南北に細長い平坦な地形に約22万9千人が暮らすコンパクトな都市構造になっており、交通網も道路はもとより私鉄やバス路線、タクシー会社など比較的整備されている。

しかし、地域間の移動が不便な地域の存在、駅までは遠く、バスが通っていない(または少ない)などの理由から、(1)公共交通不便地域の不便度の緩和、(2)高齢者、幼児連れなどの移動制約者の移動手段確保、(3)放置自転車の減少や環境負荷の軽減を目的に、駅から700メートル、バス停から200メートルの地域を公共交通不便地域に指定し、平成14年10月から2路線(北部ルート14km、南部ルート20km)でコミュニティバスを導入。年間利用者数は、当初から予想を上回る22万人7千人であったが、さらにルート見直しや、最終バスの増便、運賃精算の多様化などを図りながら、現在は、30万人を超えている。運行は、市内バス会社に委託しており経費は約7,000万、運賃収入は、利用料金、小学生以上1回100円で総額約3,000万円、したがって市の負担分は差し引き4,000万円程度で推移している。

コミュニティバス事業開始後も課題としてコミュニティバスではカバーしきれない交通不便地域が残っていたが、平成20年初めにNPO法人かながわ福祉移動ネットワークと神奈川県地域保健福祉課との協働事業によりワークショップが開催され検討を重ねた結果、同年10月に地域の7自治会、約1,500世帯が「乗合バス運行準備会」を立ち上げ、準備会自らがレンタカーを手配し実証実験を繰り返す中で、利用者数が堅調であり、運行を望む地域の声の高まりから平成22年4月から実験運行、平成23年4月より本格運行へ移行となる。

運営経費は、各世帯の負担金120円/年、利用者からの謝金、企業からの協賛金、バザーなどの収益で賄っており、運行は、添乗員、ドライバー各15名体制で実施するなど、運行管理や地域での合意形成などは事業主体である地域が担うことを基本としている。

なお、大和市の支援としては「大和市協働事業等提案制度」に提案し採択され、「大和市地域乗合交通創出支援事業要綱」に定める車両の確保(10人乗り車両のリース代と燃料代)と広報活動であり、年間約150万円を負担している。

コミュニティバス事業については、市内交通網が比較的整備されているのにもかかわらず、独自に基準を設けて実施し市民の利便性の向上に努めている。このことは本市が目指しているコミュニティバス導入方針と合致するが、本市とは高齢化率や財政規模・財政構造が大きく異なるため直ちに適用することは難しい。

地域乗合交通創出支援事業については、あくまでも実施主体となる町会・自治会等による自主運営であることから、本市で行うためには、添乗員やドライバーの確保等が課題である。

小田中みのる
室蘭市議会議員