視察報告
視察年月日・・令和4年3月30日~3月31日
視察場所、及びテーマ
鹿児島県薩摩川内市・・・九州電力川内原子力発電所
鹿児島県南九州市知覧町・・・知覧特攻平和会館
鹿児島県鹿児島市・・・環境未来館
視察者 市民クラブ 相澤耕太、伊藤忠之、星野直美、若林修
九州電力川内原子力発電所
◇2011年3月の東京電力福島第一原子力発電所の事故を受けて全国の原子力発電所は一斉に運転を停止し、その後厳しく制定された様々な規制基準や重大事故防止対策などに合格した原子力発電所が再稼働しています。九州電力川内原子力発電所は再稼働した1つであり、新たな重大事故防止に関して、及び原子力発電所再稼働における地域とのつながり方などについて視察させていただきました。
川内原子力発電所の概要
・川内原子力発電所は2基の原子炉を有した発電所で、1号機は昭和59年7月、2号機が昭和60年11月にそれぞれ営業運転を開始しました。
【概要】
位置 鹿児島県薩摩川内市久美崎町字片平山1765の3
用地面積 約145万㎡
電気出力 89万キロワット×2基
原子炉型式 軽水減速・軽水冷却加圧水型(PWR)
営業運転開始 1号機・昭和59年7月4日 2号機・昭和60年11月28日
・2011年3月に発生した東京電力福島第一原子力発電所の事故を受けて全国の原子力発電所において安全対策の見直しが求められました。川内原子力発電所においても様々な対策検討が求められました。
①地震想定の見直し
・活断層の再調査、再計算・・活断層が想定よりも長いと仮定するなど従来よりも厳しい評価基準に基づいて再確認を実施。
②津波想定の見直し
・発電所への最大遡上高さを海抜6メートルと想定し、海抜8メートルの防護堤を設置。
③竜巻対策
・日本で過去に発生した最大の竜巻を踏まえて最大風速100m/秒の竜巻を想定した対策を実施。
④火災防護対策の強化
・発電所構内、周辺の森林火災の延焼を防止する対策を実施
⑤重大事故を防ぐための安全対策の実施
・原子炉冷却手段の多様化
・電源供給手段の多様化
・水素爆発防止対策
・放射線物質の拡散抑制対策
・緊急時対策棟の設置
⑥テロ対策施設の設置・運用開始
・様々な訓練の実施
・これらの安全対策に関して原子力規制委員会の承認を得て、1号機は2015年9月、2号機は2015年11月より通常運転を行っています。
その他特記事項
・原子力再稼働に向けた新基準の対策費用は約9000億円。
・地元対策
再稼働に向けた地元の理解をいただくために原発推進協議会を開催。
所見
・日本の原子力発電所のタイプは2種類あります。
加圧水型炉(PWR)と沸騰水型炉(BWR)の2種類があります。
PWRは今回の川内原子力の他九州電力関西電力など
BWRは事故を起こした福1の他東京電力東北電力など
原子炉で熱せられた水で、別の系統の水を沸騰させ蒸気を作り発電するしくみは同じなのですが、原子炉の形が違います。原子炉格納容器内に納められている機器に差があり、川内原子力発電所を見て初めて理解したのですが、表から見えている原子力発電所の建物すべてが格納容器です。一方で事故を起こした福島第一原発などは表面から格納容器は確認できず、表に見えているのは原子炉建屋という格納容器などを更に囲った建物です。福島第一原子力発電所の事故では、格納容器から漏れ出した水素が原子炉建屋内に充満し、これが爆発して原子炉建屋が吹き飛んだのですが、今回拝見したPWR型では水素が発生しても格納容器という非常に堅牢な中に止まるため、基本的に水素爆発の危険はあまり考慮する必要がないことを理解しました。このことは再稼働に向けた住民への説明で安心を与えることができた大きな要素なのだと推測します。
また、この原子力発電所では常時1000人を超える作業員、運転員が働いており、定期点検時には2ヶ月ほどの期間、他方から更に多くの作業員の方々が川内市とその周辺地域に宿泊し連日作業にあたります。当然地域にとっては相当の経済効果があることは言うまでもないことで、地域への貢献度は非常に高い設備であることも理解しました。
原子力安全の取組みは今後益々世間からは厳しい内容が要求され、この取組みに終わりはありませんが、自国にほとんどエネルギー源が無い日本においては、将来に渡って原子力発電は必要であり、この取組みから目をそらすことは出来ないと考えますので、一層の安全向上を目指して取り組んでいただきたいと感じました。
知覧特攻平和会館
◇太平洋戦争末期の沖縄戦においての特攻作戦で亡くなられた陸軍特別攻撃隊員の遺品などを展示している平和会館は特殊な博物館であると認識しています。知覧平和公園を含めたこの一帯の整備に関して視察させていただきました。
知覧特攻平和会館建設の経緯と目的について
〇目的
・太平洋戦争末期の沖縄戦において特攻作戦で亡くなられた陸軍特別攻撃隊員の遺品や資料を収集・保存・展示し、その記録を後世に残し、平和と命の尊さ、戦争の悲惨さなどを語り継ぎ、世界恒久の平和に寄与することを目的としている。
〇建設の経緯
・昭和40年代に入り「少飛会」「特操会」などの特攻関係者から、特攻銅像の建立と遺品館建設の声があがり関係者や有志からの寄付で建設が計画されたが、第一次オイルショックで一度は計画が断念された。
・その後、太平洋戦争の特攻作戦の基地であった知覧飛行場跡地は公園・運動公園として使用されてきていた、その一角に運動公園の休憩施設として特攻遺品館を建設した(昭和49年)
・次第に全国からの来訪者が増加、展示資料も増加し手狭となつたため、昭和61年に現在の平和会館を建設し移転。
・資料の保存や来場者の増加によって、いままでに別館や3階を増築したり、内装全面改修やトイレ改修などを実施し現在に至る。
事業内容
①資料の収集・保存活動
・遺族の世代交代が進む中で資料の散逸・減失が懸念されるため、資料の収集と保存展示に努めて、特攻の歴史を正しく後世に伝えていく。
②教育
・教育旅行、就学旅行で活用してもらうことで、特攻の事実や戦争の悲惨さ・平和・命の尊さなどを教育する場であること。
③広報活動
・鹿児島中央駅、雑誌や観光パンフレット、旅行会社、バス・鉄道会社、ホテル、レンタカー会社などに宣伝し、多くの方に来場いただき平和の大切さなどを訴えていきたいと活動している。
④平和事業
・平和へのメッセージfrom知覧スピーチコンテストを毎年8月15日に開催。
所見
・知覧特攻平和会館とその周辺について改めて詳しく拝見させていただきました。この土地は太平洋戦争時には知覧飛行場であり、実際にこの場所から沖縄の戦地に若者が飛び立って行った場所になります。公園内には当時の飛行場や宿舎の遺産が点在し、戦後様々な方々から寄贈された灯篭が数多く並んでいます。静けさを感じる場所(特攻隊員の遺書などを読んで騒ぐ気になる人はいないと思いますが)であり、特攻隊員の遺書などから当時のご本人の気持ちに触れ、当時の戦闘機や訓練施設の遺産に触れると、この静けさの中で来訪者は自分が生きていることや現在が平和な世の中であることを改めて深く感じることになると痛感しました。大変重要な施設であるとともに、多くの人たちに一度は見てもらいたい施設だと思います。現代人や若者には理解し難いことかも知れませんが、ここにあることは事実であり、七十数年前とそれほど遠くない過去に20歳前後の若者が命を捨てざるを得なかったことは、平和教育のみならず、命の尊さを考えさせられる場です。幸いにして日本はこれ以降、戦争に巻き込まれていませんが、世界では常に争いが起こっており、今もウクライナで多くの命が失われています。戦争とは、人の命とはいったい何なのだろうかと深く考えさせられる貴重な公園と記念館ですので半永久的に施設を守り続けていただきたいと切に感じました。
公園や施設を造ることを考えると楽しく遊べてとか、娯楽的なことを考えがちですが、極端に言えば娯楽は民間に任せておけばよく、行政としては歴史・文化といった部分を重視する必要があると改めて原点を再認識したところであります。
環境未来館
◇鹿児島市・環境未来館は鹿児島市の環境学習・環境保全活動の拠点として、館内の展示により環境問題を分かり易く紹介している施設ということで、その施設、展示、運営などを視察させていただきました。今回は新型コロナの関係で行政側の対応が不可とのことでしたので、施設に寄らせていただき現場で対応している方からお話しをお聞きし、施設を拝見させていただきました。
施設の屋根は屋上緑化(芝生貼り)で歩行して通り抜けが出来ます。
こどもたちが楽しそうに走り回っていました
施設について
・環境問題と一言で言っても多岐に渡り、自分たちが身近に取り組まなくてはならない課題であることを意識して生活している人は少なく、また理解している人も少ない。現代の地球規模で抱える環境課題についてわかりやすく提示し、住みやすい地球、いつまでも美しい地球、などの目的のために現代を生きる私たちがしなくてはならないこと、また子どもたちでも取り組めることなど環境に特化した課題に取り組むための施設。
施設での取組み
①地球は素晴らしく美しい星であるという根本を理解させ
②この地球が人々の愚行のせいで様々に悲鳴をあげていると現実を提示し
③未来のために今出来ること、やらなくてはいけないことを様々に考えさせ意識させ
④出来ることから実際に今日から実行しよう、と決意してもらう
こういった組立てで様々な環境問題を提示し解決方法のヒントを提供していました。内容はほとんどの事が小中学生でも理解できるほどに砕かれて提示されていました。
その他
・リサイクルの取組みを行っているスペース、環境配慮グッズの展示、学習会などを実施する会議スペースなど。
・定期的に発行している「かごしま環境未来館だより」はこどもたちでも興味を引く内容になっており、カーボンゼロに向けた取組みを紹介したり、市民に環境の取組みをうまくPRできていると感心しました。
所見
・福祉会館などは何処の自治体にもたくさんありますが、環境に特化した施設は全国でも少ないと思います。ここでは市民に訴えたいことが鮮明になっており、また行政(環境部なのかな)の環境に対する知識の深さや目的意識の強さを感じました。自転車に乗って来場する小学生も見掛け、こどもたちが自ら環境問題に興味を持つことは重要なことで、こういった誘導が出来ることは素晴らしいことだと感じました。個人的には普段から環境問題への取組みやカーボンゼロへの取組みについて発言させていただいていますが、いまひとつ響いていないと感じることがあり、またその事実は理解していても、では実際にどのように取り組めば効果が表れるのかなどについて具体性を持った反応は得られないのが現実です。鹿児島市の取組みは全国で見習うべき内容だと強く感じましたし、自分もここの展示や様々な表現のようにもっと内容を理解していただける方法について勉強したいと自覚しました。