視察報告
視察年月日・・平成30年12月11日~12月12日
視察場所、及びテーマ
福岡県小郡市 ・・・ 九州歴史資料館
福岡県福岡市 ・・・ 空き家・空き地見守り事業
1.九州歴史資料館
◇九州歴史資料館は昭和47年に太宰府市に設置され、平成22年11月に小郡市(現在の場所)に移転開館されています。九州地域は埋蔵発掘物が多くある場所であり、歴史資料館として経験豊富である施設を勉強させていただき、近いうちにリニューアルされる予定の八王子市歴史資料館の知識とさせていただきたく視察いたしました。
◇九州歴史資料館 館長 杉光さま、副館長 東さま、調査室長 小田さま、総務室 中村さま
◇九州歴史資料館の概要
・九州歴史資料館は、福岡県立の歴史系博物館として、昭和47年4月1日に太宰府市に設置されました。その後平成22年11月に現在の小郡市に移転開館されています。
<敷地、建物>
敷地面積:約43,438m²
総延床面積:約9,475m²
本館棟:鉄筋コンクリート造・一部鉄骨造、地上2階
<建設費>
約36億円(本館・一般収蔵庫)
<開館等>
開館時間:午前9時30分~午後4時30分
観覧料:
・一般200円 高大生150円、中学生以下無料(土曜日は高校生も無料)
・休館日 月曜日(ただし祝日・振替休日の場合はその翌日)
九州は、日本の西端に位置して、大陸と向き合い、古くから対外交流の窓口としての役割を果たしています。
◇ご説明いただいたことから
〇県の歴史資料館について
・元々は太宰府付近の発掘が主で、大規模公共工事に際した発掘調査も行って来た。
・福岡県内で発掘したものを修復して展示する施設。
・自分たちの市町村の文化財は自分たちで守るという姿勢で、県には文化財課を維持しており、職員の教育や研修を続けている。
〇文化財課についての考え方
・関東地方は発掘調査は時間がかかるため民間で、という姿勢であるが、九州の場合は直接・直営でないと保存できないという考え方で実施しており、近年に至って九州横断道路や新幹線などの大型工事が多く大変出番が多い。
〇移転に関して
・太宰府市に九州国立博物館が出来たことから、福岡県の博物館を現在の小郡市に新築・移転することとなった。
・現在の地は近隣に弥生時代の遺跡があったことが決め手となった。
※移転当時は近隣には家はなかったようですが、現在は博物館の目前まで宅地開発されていました。
〇入館料について
・元々の太宰府にあった時代は無料であった。
社会教育法というものがあり、これには社会教育施設は無料となっていることから、入館料は安価であることが相応しいという考えである。特別展の時はマスコミなどとイベントを組んで1000円程度の入館料をいただくこともあるが、基本的には安価でよいという考えでいる。
・入館者については、歴史資料を観たいという目的の人しか来ない施設であるが、年間35000人を目標にしている。
〇施設について
・特別収蔵室として5種類あり。
古文書・歴史資料収蔵庫、美術工芸品収蔵庫、考古・民俗資料収蔵庫、木器収蔵庫、金属器収蔵庫の5つで、それぞれに温度・湿度管理をしているが、収蔵するものによってその数値は違うため5種類必要であり、この特別収蔵庫の光熱費だけで年間3000万円以上が掛かってしまう。
・現在はここだけでは入りきらず、別に収蔵庫を増設している。
〇発掘された物の内部を透視するためのレントゲンなども完備している。
◇所見
・福岡県の施設ということですが、かなり大きな施設でした。九州地方は歴史的に発掘される遺跡の量が多く、またその価値も高いのでしょう、歴史文化に対する姿勢が違うと感じました。文化財課を維持継承していることにもその姿勢が表れています。
発掘された土器を清掃し復元している作業も拝見しましたが、大変手間と根気が必要な作業であり、土地柄次々と発掘される資料を点検・修復する作業は到底利益を求める民間では出来ない仕事で、こういったものは行政側の仕事であると感じました。
八王子市で考えている歴史文化博物館がどのレベルのものか分かり兼ねますが、本質に忠実な施設だったとしたら決して人を呼べる施設ではなく、利益度外視の調査研究施設になります。収蔵庫のスペースも半端では済みませんし、大変お金が掛かる事業になります。どの程度のものを作ろうとするのか、その匙加減は非常に重要で、半端なものでしたら歴史資料などという言葉は使わない方がよいのではないかとまで思いました。
今回、非常に本格的な王道の歴史資料館を見させていただいたことは、今後同様の施設を図るものさしとして大変役に立つものを手に入れられたと自負していますので、今後の議論や検討に役立てて行きたいと思います。
2.福岡市・・・「空き家・空き地見守りサポート事業・シルバー人材センター」
◇福岡市のシルバー人材センターにて実施している「空き家・空き地見守り事業」について視察させていただきました。
◇福岡市シルバー人材センター 常務理事 桑田さま、総務課長 柳さま
◇福岡市シルバー人材センターの事業概要について
〇自転車駐輪
・福岡市は全国で一番駐輪マナーが悪いと言われた・・現在でもシルバーで扱ううちの4割は駐輪に関する仕事行っている。具体的には駐輪場72ヶ所の指定管理を受けている。
・今回お聞きする空き家・空き地見守りサポートは平成29年度から実施している。
・会員構成は30年3月末で男性4323人(63.22%)、女性2515人(36.78%)、計6838人
高齢者の加入率で1.67%、平均年齢72.0歳となっており、会員数は7100人を目標に取り組んでいる。
◇福岡市シルバー人材センターの現状と課題について(特記事項)
〇福岡県シルバー人材センターの形
・福岡県の行政区は7区あり、それぞれに出張所を設けている。
〇情勢について
・国の課題 =福岡市の課題・・・人口が減りながら高齢化していることだととらえている。
・ただ、外国人の労働者よりも足元を見れば日本人にもっと人材がいるのではないか。40年前の高齢者と違って現代の高齢者は質が違ってきていると感じている。もっと高齢者の能力を発揮する社会環境形成が必要だと考えている。
・福岡市の人口構成は若いと言われているが、それでも高齢者は増えており、他の地域より少し遅れて来ているだけという印象でいる。
〇シルバー人材センターの効能
・セーフティネットがしつかりしていない世の中において、歳をとるということは何歳になっても不安なものである・・これを働くことにより課題解決していくことが必要。
・健康であることによる医療費・介護費の抑制につなげる。
・配当金が消費に回ることによる経済への貢献を果たす。
・人と人との関係を維持することで生きがいを創造する。
〇シルバー人材センターの姿
・そこそこの負荷でそこそこの収入が得られるという働き方を目指す。
・年配者の得意分野を生かす仕事・・例えばスーパーマーケットの陳列など朝が早い仕事(若い人は朝が苦手だが高齢者は朝が得意)
・簡単に人数を集められる利点がある。
・シルバー人材センターのイメージが庭木の手入れ・掃除・駐輪場になってしまっているが、実際には様々な仕事があるということを分かってもらって、参加者を拡大したい。
◇空き家等見守り事業について
・2017年7月にスタートさせた。
〇特徴
・お客様(依頼主)は福岡に住んでいない。
外観チェック+写真撮影+報告書作成+郵送 このパックで1回2500円
・一戸建てを中心に実施しているが、将来的には集合住宅にも取り組みたい。
長期に開けてしまっているマンションなどの換気などを実施するサービス。不動産屋から鍵を借りたり家の中に入らなくてはならないことが課題だと思っている。
・その他に、剪定、刈払除草、手取除草、の項目あり。
・2017年11月から「お墓の清掃サービスを開始」
墓廻りの清掃+写真撮影+報告書作成+郵送 このパックで1回4500円
◇所見
・ご説明をいただいた桑田常務理事さんは行政にいらっしゃった方で様々なことに大変詳しい方でした。高齢者の第一線を退いた方とひとくくりで言っても現役時代にどのような仕事に携わっていたのかによって、出来る仕事や長年の癖などは千差万別で、そういった方々の指南役をされるということは非常に難しいことではないかと推測しますが、大変なバイタリティで高齢者の幸せを真剣に考えておられました。空き家見守り事業は手を付けたばかりで、今後の展開が期待されるところだという印象を受けましたが、その後始められた墓地の清掃請負業務は、これは利用者が多くいるのではないか、オプションで線香や献花などを追加することも出来そうですし、田舎の墓守が大変になっていしまっている方々は多いので発展性がありそうだとお聞きしました。高齢化・人口減少社会に直面している現代においては皆が今まで以上に協力し社会を維持継承していかなくてはならないと思いますので、各地の特徴にマッチしたシルバー人材センター事業の発展は不可欠だと思います。好事例として参考にさせていただきたいと感じました。