八王子市議会議員

相沢こうた

KOHTA AIZAWA

相沢こうたNEWS
VOL.63「視察報告」

視察報告

視察年月日・・平成30年7月18日~7月20日

視察場所、及びテーマ
札幌市 ・・・ 絵本図書館
苫小牧市・・・ 勇武津資料館と八王子千人同心
札幌市 ・・・ 青少年科学館

1.札幌市・・・「絵本図書館」

◇札幌市では子どもの発達段階に応じた本を楽しむための環境づくりとして、絵本に専門特化した図書館を、同時期に進んでいた区役所の移転整備に併せて新庁舎内に整備しました。この絵本図書館整備」について視察させていただきました。

所在地・札幌市白石区南郷通1丁目南8-1 白石区複合庁舎6階

◇札幌市教育委員会中央図書館 石崎さま

◇札幌市絵本図書館解説までの経緯

・平成17年 第一次札幌市子どもの読書活動推進計画策定
 家庭、地域、図書館、学校等が協力して、こどもの読書機会の提供と環境整備の取組みを行う取組みをスタートさせた。

・平成22年 第二次札幌市子どもの図書活動推進計画策定
 生涯に渡る人間形成の基礎を培う幼児期の読書のきっかけづくりが特に重要であるという考えから、子どもの発達段階に応じた本を楽しむための取組みを実施することを定めた。

・平成24年 第二次札幌市図書館ビジョン策定
 第二次札幌市子どもの図書活動推進計画を踏まえて、子どもの読書環境整備の充実施策の方向性を定める。

・平成26年 絵本図書館基本計画策定
 幼児教育の一環としての幼児期からの読書のきっかけづくりを主たる目的として、絵本に専門特化した図書館を設置するための基本計画を策定。
 同時期に進んでいた白石区役所の移転整備に併せ、庁舎内に絵本図書館を整備することを決定。

※補足事項
・元々は中央図書館で子どもたちのことも扱っていたが、幼児期が大事であるという思いと白石区役所建替えを合致させた市長の強い思いで区庁舎の中に絵本図書館を開設するに至った。

◇絵本図書館の開設と現状

開館は平成28年11月7日

<開設費用>
庁舎全体65億5400万円 うち絵本図書館分 3億900万円
整備費(図書、システム、備品他) 1億3600万円
運営管理費 年間予算 5100万円

<開館時間等>
開館時間:9時 ~ 17時
休館日:毎月第4金曜日

<施設の概要>
書架、閲覧スペース:302㎡
体験型活動室:52㎡
活動室: 65㎡
事務スペース:86㎡ 子ども用トイレ、多目的トイレ、授乳室

<絵本の蔵書>
現在:約21,000冊 (開館当初は15000冊)
内訳:絵本16,000冊、超大型絵本600冊、紙芝居400冊、他

<平成29年度の実績>
来館者:187,440人
貸出冊数:186,251冊
  利用者の構成:
  *大人の利用者:20代(16%)、30代(53%)、40代(17%)、60代(7%)、その他(7%)
*子ども: 0歳(24%)、1歳(21%)、3歳(22%)、6歳(12%)、その他(21%)
 幼稚園・保育園に出向くおはなし会の実施や、幼稚園・保育園からの団体利用もある。

<来訪者の声>
満足度は、満足、どちらかといえば満足を合わせると98%
意見・感想として
*子どもにお話しを聞く習慣が出来た
*子どもが読書を楽しめるようになった
*乳幼児を連れて図書館に出かける機会が増えた
*床など、子どもが触れるエリアの清掃を徹底してほしい など

<課題として>
乳幼児が絵本を扱うことで本の消耗頻度が高く、修理や買い替えを行う期間が短い土日や雨天時など管内が一気に込み合うことがあり、広さが課題。

◇ご説明いただいた中での特記事項

・利用者は白石区が中心で、札幌市は広大であるため全域にまで利用者や知名度が広がっていないため、広げることをしていきたいと考えている。

・本屋さんとつながっていない。本屋さんと敵対するのではなくつながった活動を展開して行きたいと考えている。

・施設面積は広くないため、土日祝の特に雨天時には大変込み合ってしまう。今のところ解決策はない。

・土日祝は父親と子どもの組み合わせが多いと感じている。

・子どもが本を扱うため、本が破ける、汚れるということが多く発生し、修理や買い替えが多く、内勤者は時間があれば本の修理に追われている状況。

・館内はこどもの声などは一切気にせず、絵本の読み聞かせなども大人を気にせずにできる環境で子どもに本を教えるのに良い環境だと感じている。

◇所見

・子どもを図書館に連れて行くと(図書館だけではないけれど)子どもは嬉しくて走り回ったり大きな声を出したりじゃれあって笑い声を立てたり・・と気が気ではない経験を誰もがしていると思います。周りの大人も全員が子どもに理解がある訳ではなく、子どもの本コーナーはあっても中々出掛けにくいと気後れしてしまう人は案外多いのではないかと思います。また、本の扱いなど初めから分かる訳もなく、破いてしまったりよだれが着いてしまったりと、人の本だとこれも気が気ではないのです。

今までいくつかの図書館を拝見したことがあり、子どもコーナーが充実していたところはありましたが、子どもだけの図書館というステージは初めて拝見しました。何をしてもよいということでは当然ないのですが、子育てをしている親の側から見るととても使い易い施設だと感じました。室内がもう少し広くてもよいかな、とも思いましたが、あまり広いと子どものことですから今度は走り回ったり親の目が届かず迷子になったりと、広さに関しても難しい部分がありそうです。

ご説明いただいた方から「本屋さんとの連携を図りたい」とお聞きしましたが、子どもは気に入った本は繰り返し何回でも、それこそ擦り切れてしまうまで読むものですので、子ども図書館で気に入った一冊を見つけてそれを購入できるしくみは確立しておくと大変便利だと感じます。

昨今はテレビやゲーム、スマートホンといった映像にすぐに流れてしまいがちの世の中ですが、本は永遠だと思いますし、幼少期に本を読む習慣を身に着けてもらうことは学校での教育にもつながってくることです。教育委員会として取組んでいる札幌市の着眼点は大変良いもので、大いに参考にさせていただくべきものという感想を持ちました。

2.苫小牧市・・・「勇武津資料館」

◇苫小牧市と八王子市は八王子千人同心のつながりで昭和48年(1973年)以降、姉妹都市としてお付き合いさせていただいています。苫小牧発祥の地といわれる勇払に平成13年に開館した勇武津資料館を訪ね、苫小牧市と八王子千人同心の関係、当時の千人同心が関わった蝦夷地の開拓などについて学ばせていただきました。

◇苫小牧市議会事務局 宮沢さま、山田さま、今野さま
苫小牧市美術博物館 武田さま
   学校法人勇払学園理事長 明村さま

◇勇武津資料館について

・勇武津資料館は平成13年4月1日に苫小牧市制50周年と八王子千人同心移住200年を記念して開館しました。

・この敷地には蝦夷地開拓移住隊士の墓が18基あり29名が祀られています。1800年ころの話しですが、蝦夷地警備と開拓のために移住した八王子千人同心関係者4基9名も含まれています。

◇八王子千人同心について

〇八王子千人同心の始まりは、甲斐国(現在の山梨県)、9人の小人頭とその配下の人々で、武田氏の家臣でした。武田氏は織田信長の攻撃により1582年に滅亡します。新たに甲斐国を治めたのが、後に江戸幕府を開いた徳川家康で、小人頭と配下の同心も家康に召し抱えられます。
やがて八王子地域の治安維持を主な目的として、9人の頭と250人の同心が八王子に移され、以降千人同心の組織が整えられていきます。1600年頃、同心が新たに召し抱えられて1,000人となり、八王子千人同心は、小人頭を起源とする千人頭10名に率いられた同心1,000名となります。頭1名に100名の同心がつく構成です。

・千人頭と同心の間には明確な差がありました。千人頭は将軍にお目見えが許される旗本格で、知行地を与えられていた一方で、同心はお目見えの許されない立場にあたり、幕府から手当は支給されましたが、武士としての役目を勤める時以外は、八王子周辺の村に居住し、年貢も納めていました。

〇八王子千人同心は、1799年に蝦夷地が外国からの脅威にさらされたため、1800年に武州八王子から蝦夷地の防衛と開拓のために、組頭原半左衛門を隊長に弟新介を副士として同心子弟100人を伴って蝦夷地に入りました。半左衛門は50人を引き連れて白糠へ、新介は勇武津に入り、警備、開墾などに従事しました。さらに千人同心の河西祐助は原隊とは別に幕吏の見習いとして妻子を連れて勇武津に入りました。

・このことが苫小牧市開拓の第一歩となりましたが、移住した同心たちは、苛酷な自然環境などで不毛の原野の開拓は思うようにまかせず、2年目にして死亡する者16名、病にかかり帰郷する者を多数出し、入植4年目に開墾地を離れました。

・勇払市街地のはずれに位置する史跡公園には、勇武津場所にかかわった会所関係の墓石9期10人分、八王子千人同心関係の墓石4基9人分、場所請負人関係の墓石2基7人分、その他不明の墓石3基3人分、合計18基29人分の墓石がまつられています。
墓石群はかつて勇払原野に散在していたものを、戦後、勇払墓地に集合したもので、最も古いのは、八王子千人同心が勇武津に移住した1800年のもので、新しいものは、江戸時代最後の1867年に建立されたものです。

◇所見

・勇武津資料館にある八王子千人同心の資料を拝見しながら、200年も以前の八王子という地名がここに生きていることに感嘆しました。点在していた墓石を一か所に祀ってくださっている勇払墓地も大変美しい場所で、苫小牧市開拓の第一歩となった千人同心の働きを現在でも大事に丁寧に扱っていただいていることが伝わってきました。実は日光市でも千人同心を大切に扱っていただいていると訪れる度に感じる訳ですが、こういった両市の姿勢を見ると八王子市での扱いが非常に貧弱であると反省する訳です。今後、八王子での千人同心の扱いについてしっかりと見直してきちんとした形にしておく必要性を改めて強く感じました。

3.札幌市・・・「青少年科学館」

 

◇札幌青少年科学館は八王子市と同様に宇宙をテーマにした展示がメインであるとお聞きしました。青少年科学館の運営や展示など、市民から親しまれる科学館のノウハウなどを含めて視察させていただきました。

 

場所・札幌市厚別区厚別中央1-5

◇札幌市青少年科学館 管理課管理係長 石丸さま

◇札幌青少年科学館の概要

〇施設概要、営業概要

<建物の概要>
・敷地面積:7,374㎡
・建物構造:鉄筋鉄骨コンクリート  地下1階、地上4階建
・延べ床面積:10,017㎡

<施設の歴史>
昭和56年:開館
   平成 9年:リニューアルオープン 平成11年:札幌市生涯学習振興財団に管理運営委託
平成15年:子供天文コーナーリニューアル
平成17年:プラネタリウムリニューアル
平成20年:力学コーナーリニューアル
平成22年:ロボットコーナーリニューアル
平成23年:環境コーナーリニューアル
平成24年:雪・氷コーナーリニューアル
平成25年:宇宙飛行士 山崎直子氏 名誉館長に就任
平成26年:天文・地球科学コーナーリニューアル
平成27年:交通・力学コーナーリニューアル
平成28年:プラネタリウムリニューアル

<営業時間>
5月1日〜9月30日:9時~17時
10月1日〜4月30日:9時30分~16時30分

<定休日>
月曜・毎月最終火曜・祝日の翌日・年末年始

<料金>
・展示室700円 ※中学生以下無料
・プラネタリウム500円 ※中学生以下無料
・セット1,000円 ※中学生以下無料

<プラネタリウム上演について>
夏季:1日6回
冬季:1日5回

◇札幌市青少年科学館活用基本構想

〇活用基本構想冒頭より・・抜粋

・札幌市青少年科学館は、北方圏の拠点都市・札幌の特色を踏まえ、「宇宙・ 北方圏・原理応用」を展示テーマとした理工系の科学博物館であり、科学及び科学技術に関する知識の普及啓発を通して創造性豊かな青少年の育成を図ることを目的として、昭和56年10月に開館しました。
 開館から36年が経過した今も、小中学生をはじめ幅広い世代の方から親しまれています。このことは、科学館が「見て、触れて、考える」という展示コンセプトのもと、各種事業や特別展などを通じて利用者の興味・関心を維持するとともに、利用者に対し科学を楽しく体験的に学べるようにしてきた成果といえます。
一方で、少子高齢化や人口減少、グローバル化の進行、情報産業の発展など社会経済情勢が急激に変化している中、科学館を取り巻く環境も大きく変化しています。更に、学館全体の展示物の老朽化が進んでおり、都度、部分的な更新や改修を重ねてきたところですが、科学館全体としての統一感が薄まり、展示物相互の関係性が伝わりにくい状況となっています。また、科学技術の急速な進歩に伴い、時代にそぐわない展示物があるという課題も生じています。

・上記の理由により、札幌市青少年科学館活用基本構想を策定することとした。
また、札幌市が平成26年度に策定した「新さっぽろ駅周辺地区まちづくり計画」において、科学館の周辺に、教育関連施設や医療・商業施設等の建設が予定されていることから、周辺地区との一体的なまちづくりにおける科学館のあり方も併せて検討することとした。

札幌市教育委員会では、教育に関する施策を総合的に示す上位計画として「札幌市教育振興基本計 画」を策定しています。本構想は、札幌市教育振興基本計画に掲げた教育の目標や方向性を踏まえつつ、科学館の今後の在り方を明らかにするものです。また、札幌市のまちづくりに関する最上位の計画である「札幌市まちづくり戦略ビジョン」(平成 25年(2013年)策定)や、それに基づく個別計画として生涯学習推進の基本的な考え方と方向性を 示した「第3次札幌市生涯学習推進構想」など、関連する各種計画等との整合を図ります。

◇青少年科学館の活用の方針

〇社会状況等の変化を踏まえた展示物や施設設備の機能の充実

⑴社会状況を踏まえた取組の充実
  科学館に来るたびに好奇心を抱くことができるような取組の充実を目指している。

⑵科学館全体の統一感、テーマ・分野ごとの統一感の明確化
 科学館全体として、またフロアごと、分野ごとに統一感を持たせるため、展示物相互の関係性を 明確にし、体系的に科学的な知識を習得できるような施設づくりを目指す。

⑶企業・大学等との連携強化
 企業・大学等との連携強化を推進し、最新の科学や科学技術についての情報を科学館から市民に定期的に発信します。そのため、企業・大学等との連携が図りやすい施設づくりを目指す。

⑷科学研究の進歩への対応
 科学館の魅力の一つである宇宙分野に関しては、研究等が急速に進んでおり、また市民の関心が 特に高い分野であるため、最新の情報を発信していく。その他の部門も市民の興味・関心に対応した取組の充実を目指す。

〇市民の誰もが学べる環境づくり

科学館では青少年を主体とした魅力づくりを続けるとともに、新さっぽろ地区の再開発により来場する利用者層が変化していく可能性を踏まえ、多様な利用者に対応できる施設づくりを目指 す。

⑴多様な市民が利用しやすい施設づくり
 青少年のほか、乳幼児やその保護者、障がいのある方や高齢の方など、多様な市民の生涯学習を 支える場としての施設づくりを目指す。

⑵体験性や遊戯性の向上
 手で触れて感じたり乗り物に乗ったりするなどの体験を通じて、幼児から大人まで誰もが科学を楽しく学べるきっかけを提供する。

⑶学びの実践の場の提供
 企業や大学、市民等が、研究成果の発表や科学の解説・説明などを通して、科学の知識を伝え合 う実践の場として活用できる施設を目指す。

〇学校教育との連携の推進

学校教育における科学館の活用については、大人数で利用するための施設設備の機能の充実や、展示物と理科とを関連付けて学ぶきっかけの充実を目指す。

⑴展示や施設設備の機能強化
 科学への興味・関心を高めるための体験学習の場や主体的に課題を見い出し、研究・発表ができ る学習活動の場を提供するため、学校では体験することが難しい大規模な実験やサイエンスショー など、科学館の特長を生かした学習の実施に向け、学級単位等での受入れが可能となる展示空間と 施設設備の充実を目指す。

⑵学びを深めるきっかけの充実
 展示物と理科を関連付けて学習させるため、適切な解説を提供することや、展示で学んだことを その場で調べて学習できる機能の充実を目指す。

とにかく大きくて実物の列車のボディが普通に展示してあります。

◇所見

・八王子市のこども科学館と比較にならないほどの大きさ・広さがあり、展示物が大きいこと、実験などができるスペースがたくさんあることなど、羨ましいと感じました。一見すると展示や設備が素晴らしく見えたのですが、詳しくお話しをお聞きすると15年以上の年数が経過している展示物が約6割あり、降雪の機械などは壊れており現在動かないなど、修理にお金が多く掛かりそうで困っているとのことでした。基本構想の中に示してあるように、近年は技術の進歩がめざましく、こどもたちの興味もAIやロボットといったところに強くあるようで、古くなった展示物の改修に合わせて市民要望を如何に融合させていくのかが課題とのことでした。

 

そうは言っても、元宇宙飛行士の山崎直子さんを名誉館長にしているところや、山崎さんのコーナーなどは人気の理由のひとつなのだろうと感じました。

 

また八王子市と違っているところは、この科学館は教育委員会の管理下にある点です(八王子市はスポーツ振興課)。子どもたちの理数系の勉強に活かす取組みが充実しているのは、こういったところの違いであろうと実感しました。更に、入場料がプラネタリウムを含めて中学生以下無料であるところに感嘆いたしました。これならばプラネタリウムの番組が変わったら子供たち同士で気軽に見に来られます。教育、科学をこどもたちが知らない間に身近に感じることができる仕掛けだと思います。無駄を省けば科学館の子ども料金くらい無料に出来るはずで、この取組みは検討してみる価値があると強く感じました。

相沢こうた
八王子市議会議員