視察報告
視察年月日・・平成30年2月6日
視察場所、及びテーマ
静岡県庁・・・低出生体重児向け母子手帳作成事業
1.静岡県庁・・・「低出生体重児向け母子手帳作成事業について」
◇近年、低出生体重児として産まれるあかちゃんが増えていると感じます。それなりに医療は前進していますが、低出生体重児を持った特にお母さんの心労は非常にデリケートであり、その子の成長や将来に不安ばかりになるとお聞きします。静岡県では低出生体重児を持った家庭用の母子手帳を独自に作成し対応しています。これについて視察させていただきき、八王子市での水平展開について模索したいと考えお伺いしました。
(ご対応者)
◇静岡県議会事務局 政務調査課:横﨑さま、小林さま
◇静岡県健康福祉部こども未来局こども家庭課:母子保健班 川田さま
◇低出生体重児向け母子手帳作成までの経過
・低出生体重児を産んだ母親は、通常の母子手帳に掲載されている成長の目安に自分の子どもが全く当てはまらないため、不安を募らせてしまうケースが多く、育児に不安を募らせるようになってしまうという事態に陥ることが多くあるようです。実際に低出生体重児を産んで育てた経験を持つ母親たちが「ポコアポコ」というサークルを作り、自分たちの経験などを生かして2011年に「リトルベビーハンドブック」という低出生体重児を持つ親用の手帳を作成しました。ポコアポコではこの手帳を母子手帳と並行して使ってもらうことで低出生体重児を産んだ母親の心的負担を減らそうと、普及に向けて活動を続けていました。しかしいくつかの課題が明確になってしまいました。
ひとつは市民団体であるため作成のための費用が負担となること、二つ目に普及活動を進めていたがお母さんたちのサークルで作成したということで市民権を得られない、ということです。
・この活動を行政が引き継ぎ、独自の低出生体重児用母子手帳を作る取組みを検討しました。この取組みは市町村単位ではなく(市町村単位にすると低出生体重児の数が少ない、扱っている病院がないところもあるなどの理由で)、静岡県として取組むことがより有効であるという結論から県の事業として取組み、平成30年3月に完成品が出来、これ以降普及に向けて活動していくということです。
◇低出生体重児向け母子健康手帳検討会から作成まで
・検討会
平成29年9月と12月の二回開催
平成22年度にポコアポコが作成した4500部の在庫は無くなっており、この手帳の下地があってこれを引き継ぐことが既に目的となっていたため、検討会そのものは二回で済んでいます。
・手帳作成
作成部数 5000部 参考値として平成27年度の2000g未満の出生児571人
作成完了を平成30年3月9日として、配布開始は平成30年度初めからとしています。
・配布方法
総合周産期母子医療センター 3ヶ所(高度治療まで可能)
地域周産期母子医療センター 10か所(NICUを持っている病院)
市町(未熟児養育医療申請窓口)35ヶ所
◇母子手帳との違いなど
・母子手帳は通常に健康で産まれた子ども用で、発育曲線や〇〇ヶ月でどのようなことが出来る、歯は何か月で生えてくる、はいはいやつかまり立ちの時期などについても一般的に健康な赤ちゃんの目安が記入されています。低出生体重児を持つと通常の母子手帳には体重や身長の記入ができない(する目盛りが無い・・)ことから始まり、健康に育つ子どもとの差ばかりが気になってしまうなど、ただでさえ心配の絶えない母親の気持ちが益々ふさぎ込んでしまうなど、の問題があります。
リトルベビーハンドブックは通常の母子手帳に加えて利用する手帳という位置に置かれており、低出生体重児を持ったお母さんたちに寄り添うものを目指しています。子どもによって成長に差はありますが、2年から3年経過して通常の子どもたちと同じような状態に追いついたら通常の母子手帳だけで対応すればよいという、補助的立場での手帳です。
・実際に低出生体重児を持ったお母さんたちの言葉なども掲載されており、あかちゃんの成長記録というよりは、低出生体重児を持ったお母さんたちを励ます内容となっています。また、こういったあかちゃん特有の病気なども紹介してあるため、症状が出ても慌てず騒がす対応できるように、などの配慮も見られるものに仕上がっています。
・平成22年にポコアポコが作った手帳に改良を加え、特に小児科の医師などが積極的に関与して作成されたため、専門的な見地からも過剰に心配しないように、という配慮が見られる優しい手帳に仕上がっています。
・今後、近年種類が増えた予防接種など医療分野、あかちゃんの発達についての情報も再構築したいと考えており、全国的な広がりへつなげて行きたいという考えを持っています。
◇所見
・私の知人に実際に低出生体重児を育てた家族がおり、通常の母子手帳だけの欠点をお聞きして調べたところ、静岡県の取組みが目に留まり視察させていただきました。
お話しをお聞きすると「これこそ私たちが求めているもの、そのものである」と大変感激をいたしました。内容は全般的に優しい心を感じられるものであり、そこに専門の医師の見解などが展開されているため、とても分かりやすい内容に仕上がっていて感心しました。
東京都にも同様の目的の手帳がかりますが、こちらからはあまり優しさを感じません。比較検討していただき、八王子市には静岡県のリトルベビーハンドブックを導入していただきたいと思います。静岡県はこの手帳の全国展開を考えていますので、八王子市が興味を示すことは全国展開の補助としても大いに意味のあることだと思っています。今後の議会で取り上げて提案していきたいと思っています。