八王子市議会議員

相沢こうた

KOHTA AIZAWA

相沢こうたNEWS
VOL.56「視察報告」

視察報告

視察年月日・・平成29年 8月24日 ~8月25日

視察場所、及びテーマ
①京都市 「京都市広告景観づくり補助金交付金制度について」
②京都府 「次世代育成と児童健全育成への取組み」

1.京都市・・・「京都市広告景観づくり補助金交付制度について」

◇京都にふさわしい広告物の普及を促進し、広告景観を更に向上させるため、京都にふさわしい屋外広告物の設置・設計等に係る費用の一部を補助する補助金交付制度を設けています。屋外広告物に関しては八王子市も景観条例などで取組んでいますが、現実的に課題が多いと感じているため、京都市の取組みについて視察させていただきました。

◎京都市の広告景観づくりについて
◇景観の定義

・景観とは、それぞれの地域ごとの歴史、地勢や生態系などの風土、文化や伝統、私たち一人ひとりの暮らしや経済活動等と、技術の進歩や法律等の制度などが背景となってつくられるもの。
 自然景観 に相対し 人口景観・・・人口景観に関しての景観づくり

・京都の景観について
:京都の景観は、京都特有の自然環境の中で伝統として受け継がれてきた都の文化と、町衆による生活文化とか色濃く映し出されているものであり、日々の暮らしや生業等の都市の営みを通じて、京都独特の品格と風情が醸し出されてきたものであり、時の移ろいとともに穏やかに変化する街の佇まいや四季折々の彩りが京都の景観に奥深しさを与えてきたものである。京都の景観は視覚的な眺めだけでなく、光、風、音、香りなど五感で感じられるものすべてが調和し、永く守られるべきものとして認識されてきたものである。

◇しのびよる破壊・・クリーピング・ディストラクションと景観審議会答申

・高度経済成長以降の急速な都市化の進展により、無秩序な都市景観が出現した。
⇒京都らしい景観が失われつつある危機感が経済界なども含めて声があがった。

・これらの危機感を受けて、平成17年7月「時を超え光り輝く京都の景観づくり審議会」を設置し、平成18年11月に最終答申を得た。
<最終答申>
①盆地景という特徴的な風土との共生
②伝統文化の継承と新たな創造と調和
③京都らしさを生かした個性ある多様な空間から構成される景観形成

・この最終答申を受けて、平成19年9月「新景観政策」が実施された。
(京都の新景観政策の基本コンセプト)
〇50年後、100年後の京都の将来を見据えた歴史都市・京都の景観づくり
〇建物等は「私有財産」であっても景観は「公共の財産」
〇京都の優れた景観を守り、未来の世代に継承することは、現代に生きる私たち一人ひとりの使命・責務
(新景観政策の構成)
〇建物の高さ
・45m地区 ⇒ 31mへ変更など、山に近づくに従って高さ規制は低くなり、山に近接する側は10m程度に規制。
〇眺望景観や借景
・大文字焼きなどの眺めなどを条例で保全する。38ヶ所の基準場所を定めた。
〇歴史的な街並みの保全
・歴史的意匠建造物等への補助の実施
〇建物等のデザイン
・地区の景観特性に応じた8つの地区別基準を制定。
〇屋外広告物
・京都市屋外広告物等に関する条例(条例改正 平成19年9月施行)を定めた。

◇屋外広告物の規制と仕組みと制度について

<京都市の屋外広告物のポイント>
〇屋外広告物とは
             ・常時又は一定の期間継続して
  ・屋外で
・公衆に表示されるもの
〇許可
・屋外広告物の設置には許可が必要
・3年の更新制度 ※自動更新ではない 
   ・手数料を納付
〇基準の違い
・21種類の規制区域を設ける
・区域ごとに面積、高さ、色彩などの基準に違いを設ける
 ・屋上広告物、可動式、点滅式広告物は市内全域で禁止とする

〇許可不要の場合
・自家用で合計の面積が2㎡以下のもの・・普通は5㎡程度までなのでかなり小さいもの
・公共的なものは許可不要の場合がある

※市民の反応など
・パブコメでは反対意見があったが、条例化した後は条例の主旨に関しての反対は特になかった。
・条例施行後に「こんなに厳しいのか」といった声はあった。
・チェーン店は本部が展開しており、個々の店に権限がない場合などがあり、これについては個別に対応した。
・広告物の変更についての補助制度は設けなかった。融資制度は設けた。
芦屋市などは補助制度を設けたとお聞きした。
・全面的に禁止とした色として黄色。

<適正化の取組み>
 〇平成19年9月に施行とし、そこから7年間は経過措置期間とした。その期間に「違反状態の解消」「優良広告物の普及」を図り京都に相応しい広告景観の形成を目指した。

※経過措置期間について
旧条例で許可を受けていた場合に限り最長7年間の経過措置期間を設けた。
もともと無許可の場合の経過措置期間は無い・・全体の7割が無許可であった。
 〇本格的に取り組んだのは平成24年以降であるが、この時点でも未だ7割が違反広告であった。

<是正のための指導強化と支援策の充実>
〇平成26年に最大110人体制で市内全域をローラー作戦による是正指導を実施した。
この際、是正に従わない事業者に対する行政代執行を視野に入れた厳格な指導を実施することとし、実際に一件の代執行を実施した。
〇屋外広告物の是正を促進する新たな低金利融資を実施。
〇平成29年7月現在、適正表示率は95%を超えた。今後残りの5%に対して個別に対応。

<印象評価アンケートの実施>
〇平成27年10月に京都市民2000人を対象に印象評価アンケートを実施した。
(設問数78問、回収871通、回収率43.55%)・・・回収率が高くないのは設問数が多く手間が掛かるアンケートだったからではないかと感じました(これは私が感じたこと)。
・屋外広告物の様々な基準に関して 良い67%、良くない6%
・四条通りの景観は袖看板がないほうが評価が高かった。
・のれん、ちょうちんなど和風の素材を用いた広告物の評価が高かった。
・広告物の色彩は赤よりも白を主要色とした意匠のものが評価が高かった。

<補助金交付制度のリニューアル>
〇平成28年3月にここまで実施してきた補助金交付制度を「広告景観づくり補助金交付制度」に変更した。
・改正点として、のれん・ちょうちんの設置経費に関わる補助率の引き上げ、と手続きの簡素化を実施。
のれん、ちょうちんなどの京都らしさを展開していく目的。

○所感

◇街の景観に関しては個々人の所有物である住居やビル、商業・工業などの様々な看板等、個人の趣味嗜好は千差万別であり、それらに掛ける費用も民間企業や個人の資金であるため、方向性を示しても中々進展しない行政が多くあります。特に商売に直結する(と思い込んでいる)部分を主張されますので理解していただくだけでも相当の労力を要するものです。報告の中にありますが、過去に京都市の広告物できちんと申請が出されていたものは3割程度で、他の7割は無許可であったということ、この数値は八王子市でも同じようなものです。広告物を出すためには許可が必要であるということを理解していない人も多いのでしょうが、自分の土地に何を作ってもいいだろうという考えの人は多く、また行政もあまりにも数が多く指導しきれていない、また目をつぶっているという悪循環が街の風景を更に悪化させます。
京都という日本一の観光都市であり、歴史ある建築物が多いという背景もあるのでしょうが、ここまで徹底して行った熱意はすごいの一言です。特に屋上の広告物と張り出した屋外広告物の全面禁止、点灯式・可動式の照明は全面禁止、というこの二点が効力を発揮して、ビルは多いのに、日本全国のどこにも無い独特のさっぱりした空間を作っていると街を歩いて感じました。
ここまで出来たのは、看板や広告が無くても商売が変わらず成り立っていることが大きな条件でしょう。観光地として繁栄しているからできることかも知れません。景観を徹底して整備することで観光客が更に増加するという、どちらが先ということではなく共に進展していく関係性を理解してもらうことが必要であると感じました。
また行政代執行まで実施する、という強い姿勢も大事なことだと思います。行政は本気でやる気なのだという意思表示は、新宿区の路上全面禁煙の取組みなどと共通するものがあります。京都市の景観条例は条例制定からの経過期間を7年と長く取っていますが、どこでアクセルを踏み込むかというタイミングが上手くいった例でもあると思いました。
近年はどこの街に行っても、大都市の繁華街や駅前の雰囲気はあまり変わらないと感じていましたが、ここの取組みはどこにも例を見ない効力を発揮していると感服いたしました。

2.京都府・・・「次世代育成と児童健全育成への取組み」

◇少子化問題は日本全体の課題であります。京都府での次世代育成と児童健全育成の取組みでは独自の子育て応援融資などを実施しており、こういった取組みの内容とそこに至った経過などを視察させていただきました。

◎京都府の次世代育成と児童健全育成の取組みの概要
◇制度検討の背景

〇平成26年度の数値で、全国ワースト2位の合計特殊出生率であった。
・京都府の合計特殊出生率は2013年(平成25年)1.26(全国平均1.43)で、東京都に次いで全国ワースト2位であった。

・更に未婚化・晩婚化の進行が全国トップクラスである。

・京都府は25~39歳の結婚・出産・子育て世代の転出が多く、特に25~29歳の府外転出が男女とも全国一位である。
※京都府の主な市・・京都市、京丹後市、舞鶴市、綾部市、福知山市、亀岡市、日向市、木津川市、京田辺市、宇治市、など

〇実態調査の実施「京都府少子化要員実態調査」
 子どもを産み育てていくのに何が問題なのかを実態調査したもの
・調査結果から数ある京都府の市町村のうち、
:京都府の15~49歳の人口の6割を占め、都市部としての課題を持っている京都市
:府内で最も合計特殊出生率が高く地方としての特徴を持っている福知山市
:合計特殊出生率が高くても出生数の減少傾向が顕著である舞鶴市
の3市を取り上げて状況の分析を行った。

・京都市には15~49歳の若い世代が集中しているが、未婚化・晩婚化が進行している。
また京都市は大学生などの若年女性が多く、進学などで流入した若い世代が就職時期での転出に加えて、結婚・出産・子育て世代での転出も多い。

・福知山市は未婚率が低く、若い世代での出生率が高い傾向にある。
福知山市の特徴としては、他市区町への通勤が少なく市内で就職している率が高いこと、男女ともに就労の場があり、男性の正規社員が多く、共働き世帯も多かった。

・更に未婚化・晩婚化について分析。
:有配偶者率は、福知山市は58.4%と全国平均より高いが、京都府全体では46.1%で全国44位と低い。
:更に京都府の25~29歳の未婚率は男性が全国3位、女性が全国2位。
:同30~34歳の未婚率は、男性が全国4位、女性が全国2位。
:女性の生涯未婚率は1920年~2010年の間、常に全国10位以内。
:平均初婚率は男性31.3歳、女性29.6歳と全国3位と高い。

・結婚意向のある未婚者の結婚の条件(京都府全体)
(男性)
◦経済的に余裕が出来ること:59.8%   ◦精神的に余裕ができること:40.7%
(女性)
◦希望の条件を満たす相手にめぐり合う:43.6%  ◦経済的に余裕が出来ること:42.7%

・京都府民の自治体に対する結婚支援事業の希望
:新婚夫婦対象の住宅提供、住宅支援金支給や結婚祝い金の支給といった要望が全国平均よりも高い実態にある。

・「出産・子育て」世帯からの要望
:すでに子どもがいる世帯では教育費負担の軽減など、経済的支援の希望が多い。
:子どもの数が多いほど住宅の広さと住宅費の負担軽減を要望している人が多い。

☆これらを総合すると、結婚に踏み切るための条件、子どもを多く育ててもらうための条件ともに経済的要素が大きく係わっていると判断し、ここの対策を充実させることとした。

◇少子化対策条例と融資制度の導入

・実態調査から結婚・出産、子育てに踏み切れない要素として「経済的課題」が大きいと判断し、この部分の援助を検討した。

〇その取組みを中長期的に継続して実施していくために「少子化対策条例」を定めた。
「少子化対策条例」の目玉的取組みとして
・第3子以降の保育料を無償化した・・第一子が18歳になるまで有効

・子育て支援医療として、従来小学校6年生まで医療費援助だったものを中学校3年生までとした。財源は府と市町村で1/2ずつ

・子育て応援融資の設立

〇子育て応援融資について
・金融機関との調整
 メガバンク以外の地銀(京都銀行、京都信金、京都中央信金など)で既に実施している制度を調査。
 一部で子育てパスポートなど金融機関独自での安い利率のものがあったがそれよりも安い金利で、商品全体よりも2%程度金利を安くすることを目指した。

・当初は利子補給という形で考えていたが、預託を金融機関が運用して2%分を生み出すしくみとした。
金融機関との調整では様々に苦労したが、少子化は将来的に金融機関にも大きな影響を与えるということを理解していただき、理解・協力を得た。

・教育費に限定すると金融機関で今回設定の金利よりも安価なものがあったが、応援融資は住宅リフォーム、医療など幅広い目的で利用できるようにした。
利率よりも借り入れのし易さを求めるものとした。

・導入当初は年間300件程度の申込があると予想していたが、1年で32件の申し込みしかなかった。こういった融資制度があるということをPRして周知していくことが必要と考えている。

・利率は年収などによる変動幅は無く、一律で実施している。ただしあまりにも年収が低いと断るケースもある。

・借り入れのための条件として、府税を滞納していないこと、が条件になる。

・今後も使い勝手がよくなるように工夫を重ねていく考えである。

〇その他の子育て支援
・母子家庭、父子家庭への支援制度は別に確立している。

・平成28年4月から3人以上の子どもがいる世帯の不動産取得に対して、取得税を半額にしている。

・いくじの日の制定
 実態調査の中で父親が育児に積極的に協力して欲しいというものが多くあったことから、毎月19日をいくじの日として、父親が子どもと触れ合うことを推奨している。これには民間企業にも協力を呼び掛けて行政だけではなく民間も子育てに協力する体制を構築したいと考えている。

・実態調査では子どもが多い世帯は親と同居や近隣に居住しているという実態が明らかになっているため、3世代の同居を推奨し子育て支援につなげたいと考えている。

○所感

・少子化問題は全国的な課題であることは言うまでもないことです。どこの都道府県、市町村でも四苦八苦していますが、子どもが増えることは日本の将来が抱える(既に抱えている)高齢化、労働力不足、更なる少子化の進展、など、人に大きく係わる課題の解決のための直接的解決につながりますので、本腰を入れて取組まなくてはなりません。
京都府の施策を拝見すると八王子市よりも前向きであります。まず第3子以降の保育園の無償化に関しては兄弟が18歳までと幅を持たせており、これは是非早急に八王子市でも取り入れるべきだと考えます。八王子市の場合、第1子、第2子が小学校に上がってしまうと第3子は保育料の恩恵を受けられませんが、小学校に上がると金が掛からないのかというと実態はそれなりに多くの費用が掛かる訳ですから、京都府のように世帯全体の金銭負担を考慮することは多くの子どもを育ててもらうには必要な施策だと思います。
 一般的に結婚・子育てを担う年齢は、正社員でも収入は未だ少なく、現代のように非正規で働かざるを得ない人が増加している背景を考えると猶更です。子育てには体力が必要ですから、昔から一般的に適齢期といわれる年代に結婚して子育てをすることが理想なのだろうと思います。現代社会でそれがなぜ遅くなってしまっているのかということ、また地域特性などをそれに交えて細かく分析し対策を進めていることは見習うべき部分だと感じました。
 京都府の事例を八王子市の関係者にしっかりと伝えて、実行性のある取組みを進めるため大いに参考にさせていただきたいと思います。

相沢こうた
八王子市議会議員