八王子市議会議員

相沢こうた

KOHTA AIZAWA

相沢こうたNEWS
VOL.53「視察報告」

視察報告

視察年月日・・平成29年2月6日~2月8日

視察場所、及びテーマ
①愛媛県西条市 「人と水の総合的な研究」
②愛媛県新居浜市「あかがねミュージアムの管理運営」
③香川県「いくけん香川の取組み」

1.愛媛県西条市 「人と水の総合的な研究」

◇愛媛県西条市は地下水資源の豊富な土地であり、それ故に地下水資源調査研究が行われ、行政では育水という地下水を保全する取組みなどが行われています。豊富な水をどのように生活に活かしているのかなど、水と人の生活について視察させていただきました。

◇西条市議会事務局 曽我部課長さま、村上副主査さま
西条市環境衛生課 徳増課長さま

 

◎西条市の「水」と水環境などについて
◇地下水の状況など

・西条市は日本七霊山のひとつで西日本最高峰の石鎚山(標高1982m)に代表される石鎚山系と瀬戸内海に挟まれた場所に位置し、山系から流れる中山川・加茂川がありますが、元々の地形上の地下断層にこういった川の水や山から流れる水が入り込み、相当量の深層地下水となっており、市内平野部では地下水が至る所に湧き出るなど、水の豊富な地域である。

・この地下水の現状についていくつか例をお話しいただきました。
▽「うちぬき」という自噴井(じふんい)
地面にパイプを打っただけで水が出て来るという意味で、市内至る所に見られる。
この場合、水道代はかからず、自然に噴き出すためポンプなどの電気代もゼロ。

▽田んぼに水を引くための用水路がない(排水路のみが存在する)
地下水をそのまま田んぼに使うため、用水路ではなく地下からのパイプで直接水を出す。ただし地下水は水温が低いため水温調整が必要とのこと。

▽市内には水道のない地域が多く、生活に使う水全体に占める地下水の割合は9割。
※うちぬきではなくポンプで汲めば出る場所も多く、その場合、例えば1日300㍑として電気代は年間500円程度で済むということ。

▽ただの地下水ではなく、平成7、8年には日本一おいしい水として評価されている良質の水。

▽「観音水」と名付けられた湧き水の池では1日1万トンから2万トンの湧き水がある。

▽「弘法水」は海の中の砂にパイプを刺した場所で真水が出ている。

◇水資源を守る取組み

・昔から水が豊富であったがために、かえって水があることが当たり前になってしまっており、水を大切にしていく考え方が薄いところがあった、とのことから、地下水資源調査を行うなど豊富な水資源の維持について取り組むことになったとのこと。

・地下水資源調査の費用は市が負担・・調査費合計 187,136千円
 調査内容は、地下水帯水層の位置と規模、地下水の涵養・流動・貯水量などを明確にすること。
また地下水を市民共有の財産と位置付けた保全策の基礎資料とすることを目的としている。

・海に近接しているため、地下水の量が減ると海水の流入が危惧されるため、地下水位と取水量や降雨量などの関係などを調査・研究しています。また様々な場所で取水し成分調査を実施しながら地下水の塩分濃度をはじめとした成分の分析を実施している。

・こういった調査などによる「地下水保全の必要性と方向性」として、まず地下水問題は①かんがい期の地下水位の大幅な低下による沿岸部の塩水化の進行 ②平地(扇状地)の末端地域における硝酸態窒素濃度の高まり の二点を地下水問題と定め、保全・管理の方向性は①水循環基本法を定めて水の公共性を明示するとともに、地域が独自の規制等によって保全・管理する地下水を地域公水と位置付けて関係者が一体となって保全する体制を整備することとした。

・今後の取組みとして、平成28年度に地下水保全計画を示して市民説明を実施し、平成29年度以降には地下水保全条例を見直すなど、行政・関係者・市民が一緒に地下水保全に取り組んでいく体制を構築することを目標としている。

・「育水」の考え
地下水の恩恵を将来に渡って享受していくために、地下水を利用する者が「地下水を質・量の両面で育ててから使う」「使った地下水はきれいにして地下に戻す」との考えのもとで、歯科水涵養に取り組むこととしている。これにより地域の水循環の健全性を守り育てることを目的としている。

 

○所感

◇四国は山から海が近く水を貯めることが難しいため渇水問題が課題である、と以前、香川県多度津町にお邪魔した際に教えていただいたため、これほどまでに水が豊富な場所があるということは驚きでした。市の方のお話しで「昔から水が豊富過ぎて大事にしなくてはいけないということを市民が全く意識していないことが大きな問題だ」と言っておられたことが印象的でした。ご説明の中では地下水脈の想定断面図なども拝見しましたが水脈は相当に大きなものでありました。市内には水道が無い地域があり、市内の田んぼを見させていただくと確かに灌漑用水の排水路しか存在しない状況は、水に恵まれた土地であることを様々に表していました。海から真水が、
それもポンプなど無しでパイプを地中に突き刺しただけで湧いている弘法水には驚きました。
大変珍しい土地であり、それ故にこの土地独特の取組みは全国にあまり例がないことに関して独自の施策を展開する必要があり、難しいことであろうと推測しました。

2.愛媛県新居浜市「あかがねミュージアムの管理運営について」

◇2015年7月に新居浜駅前(愛媛県新居浜市坂井町)にオープンした総合文化施設「あかがねミュージアム」の計画から開館後の管理運営などについて視察させていただきました。

◇新居浜市議会事務局 中島主任さま
あかがねミュージアム 菅課長さま、沢田副課長さま

◎あかがねミュージアムについて
◇新居浜市の歴史とあかがねミュージアム建設まで

・あかがねミュージアム建設  設計=日建設計JV、施工=三井住友建設JV

・新居浜市は元々「別子銅山」によって繁栄した臨海工業都市であり、住友グループにより発展・維持されて来た歴史があり、この構図は現在でも変わっていない。四国の瀬戸内海側のほぼ中央に位置する人口約12万3000人の市で、沿岸地帯は工場群が帯状に形成された四国屈指の臨海工業都市で、住友グループの企業城下町。

・市では1974年に展覧会などが開催できる施設の整備構想が持ち上がった。市民との対話と検討を重ねていくうちに、単体の美術館から芸術文化に関する複合施設へと話しが発展し、JR新居浜駅の周辺まちづくりの拠点となる総合文化施設として施設が建設されることに決定した。

・あかがねミュージアムは、その名の通り「あかがね=銅」の板が流線型の外壁に張られているのが特徴。使用されている銅板は、銅分99・9%以上の伸銅品で、銅板の枚数は約2万2500枚で、総重量は約40トン。

・地下1階、地上3階建ての建物で施設内には多目的ホールや美術館、創作スペースなどが設置されており、美術館は2016年3月31日に閉館した新居浜市立郷土美術館の機能や展示を引き継いでいる。

◇特徴、特記事項

・当会館の指定管理は三社共同で実施している。(地元ケーブルテレビ、地元人材派遣会社、トータルメディア・・トッパンのグループ会社)

・年間費用は1.6億円/年。

・入場者数は2015年7月オープンから1年半で40万人を数えた。

・入場者数維持のための方策として
〇指定管理者となっているケーブルテレビのイベントの開催
〇駅前周辺を含めたイベントの開催
〇休館日をできるだけ少なくする努力
〇里帰りをした人たちをターゲットにする工夫・・正月は元日のみ休館日
里帰りした人たちに人気なのは太鼓台の展示・・地元のお祭りを懐かしんでもらう
〇屋内スペースでの学生によるイベント開催

・美術館としての工夫
〇古いものの展示ではリピーターが期待できないため、学芸員の知恵を絞って様々な年齢層に合致する展示を検討・実施している。お伺いしたときは地元の画家である篠原信二さんの「ふるさとスケッチ」という展示会を行っていて、平日の日中にも関わらず来場者がみられた。

・サポーター会員
〇あかがねミュージアムを通して市民・企業・行政が一体となり文化芸術活動に取り組み、また支援する組織を募集し、個人や企業から年会費を微収する他、学生は無料で登録・参加できる。
ここでも学生という若い世代を活用している。

・館内入口右側に設置されている「太鼓台ミュージアム」は圧巻だった。新居浜の「太鼓祭り」という伝統的なお祭りに使用される現役の太鼓台と呼ばれる山車の現物が、二ヶ月毎に各地区のものを展示していくことになっており、その専用のスペースで照明は昼用と祭りは夜間も行われることから夜用の二種類に切り替えられるようになっており、より臨場感が味わえる工夫がされている。

○所感

・視察地を模索しているときにホームページからあかがねミュージアムの写真を見たとき「これは一体どんな形をしているのだろう?」「何で銅張りなのだろう?」ということでしたが、まずこの目で見て、また地域の発展の歴史をお聞きして納得しました。この地域を長く発展させてきた銅の歴史というものを大切にし、また構想から完成まで40年という長い期間を掛けてきたという思いが伝わる建物だと感じました。
 ここでの様々なイベントによって町全体を盛り上げて行こうという意気込みが伝わってくる工夫が随所に見られたと思っています。まず指定管理者に地元の放送局を入れているということです。地元の番組をこの施設のホールなどを利用して公開で収録することで市民の興味は尽きません。少し有名な方を呼べば周辺地域からの来場者も期待できることでしょう。更にその費用は放送局の枠でしょうから費用面でも有利です。また施設から通じる駅前にも広いスペースがあり、このスペースを一体化させてイベントを実施しており、イベントの時間やテーマもどの年齢層をターゲットにしているのか明確で、実績をお聞きすると大変多岐に渡っていました。太鼓台の展示室は圧巻で、山車の入れ替えはその出し入れする扉が外部に直接通じており、照明を含めて計算されていました。八王子市でも山車会館を作ったらよいのではないか、という意見が出ますがその具体的な形状を誰も示していません。この太鼓台の展示室は大変参考になります。これを一見すると八王子でも山車の展示場所を作りたくなるはずです。
美術館を兼ねていることもありますが、きちんと学芸員を雇用してあり、また様々な場面で学生を含めた若い人の力を生かしていることも大変参考になりました。そのせいもあり全体的に生き生きとした活気が感じられました。
八王子市の医療刑務所跡地への施設設計のためにも関係者には参考にしていただきたい施設の一つだと感じました。

3.香川県「いくけん香川の取組み」

◇結婚から妊娠・出産を経て子育てまでの切れ目ない支援を行うことで次代を担う子供たちを安心して生み、健やかに育てることができる「子育て県かがわ」の実現を目指す取り組みについて視察させていただきました。

◇香川県健康福祉部子育て支援課 吉田課長さま

〇取り組みの背景

◇香川県の現実
・若者のうち、特に大学生は80%が県外に流出します。香川県に大学が少ないことや本州への橋の開通などで本州を近く感じるようになったことなどが原因ではんないだろうかと考える。
高卒で就職する若者は県内に留まる率はそれよりは多いけれども、一度香川県を出てしまうと戻って永住してくれる人が少ない。

・香川県を出て戻って来ない若者が多いことは人口減少問題に拍車をかけている・・子どもが少ないという問題以前の課題。

・若い人たちが戻ってくれる、また移住してくれるということは老人対策など、現代社会の他の問題に取り組む上でも有利であることから、イクケン香川の取り組みには力を入れている。

◇取り組みの基本的考え方

・「うどん県」としての取り組みで全国的に有名になった時のように、キャッチフレーズというか県の名前を今度は「イクケン」としてキャンペーンを始めた。

・香川県の特徴である「都市公園面積が広い」「気候がよい」など生活するのに恵まれた環境であることをPRしこれらを認識してもらう ⇒こういったことをUターン就職に結び付けたい

・イクケン香川の売り
1. 豊かな自然と都市インフラが同居している
香川県は日本一面積が小さな件ですが、人口密度は全国11位。
豊かな自然と、医療・福祉・教育の充実が両立しており、交通インフラも整っている。
まさに田舎と都市の両方の良さが丁度良く同居しているといえる。
2. ライフステージや目的にあったサポートが受けられる
「子育て県かがわ」情報サイトColorfulでは、様々なサポートや案内の情報発信が行われている。
ライフステージ別では、例えば「結婚支度」での婚活サポートから、「小学生」や「中学生・高校生」までのそれぞれの段階でどのようなサポートがあるかの案内がある。
目的別でも、「子ども預けたい」や「子どもが病気になったら」など、様々な角度からの必要な情報が整理されている。
結婚から妊娠・出産、育児までの切れ目ない支援の在り方が香川の特徴である。
3. うどんをすする音で、赤ちゃんは泣き止む?!
香川県民のソウルフード「うどん」をすする音が、赤ちゃんが胎内で聞いていた母親の腸や心臓の音が似ているという事に注目し、これを売りにする。プロモーション映像も作成。
4.香川県は日本一面積が小さい県であるが人口密度は全国11位。つまり「日本一小さい県だから、日本一子どもに目が届く県といえるというアピールをしている。
5.香川県は、豊かな自然のすぐそばに医療、福祉、教育が充実し、交通インフラもしっかり整っており、田舎と都会の良さを両方もっていることをアピールしている。

・その他に、Uターンはもちろん、移住も大歓迎であること。
安全に、豊かにお子さんを育てたいと考えているご両親は、香川県に住むことを考えてみては?というPRも行っている。

・全国の自治体でそれぞれに少子化対策の取り組みは行っているが、香川県では特に「第3子」を増やしていきたいという視点で、三人目の子どもがいる家庭には第3子の保育料など様々な面でサポートを行っている。
また、子育て環境の整備では病児病後児保育の充実には力を入れている。

・子育てに男性(男親)が少しでも関わることで母親は気持ちが楽になる。こういうことを狙ってイクメンとイクケンを掛けて、またPRには女性ではなくあえて要潤さんを起用している。

◇所感

・イクケン香川の取り組みは、まず「要 潤さん」(うどん県香川でも活躍の地元出身の俳優さん)を再び使ったプロモーションビデオなど、八王子市の少子化・人口減少に対する取り組みとは比較にならないほどの力の入れようだと感じました。うどん県の取り組みの時も感じたことですが、県民性といいますか、香川県という場所に誇りを持ち根っからこの土地が好きなのだという熱意が伝わってきます。
 イクケン香川の取組みは、人口減少阻止を目的に「子育て県かがわ」の実現を目指し、結婚から妊娠・出産を経て子育てまで切れ目のない支援を行うことで次代を担う子どもたちを安心して生み、健やかに育てることができるように様々な事業に取り組み、これによって若い世代の希望を実現し、出生率を向上させることで少子化の流れを止め人口の自然減の抑制を図るというもので、まち・ひと・しごと創生総合戦略の考え方に基づき日本中の至る処で取り組んでいることです。香川県の取り組みの場合、全てが新たなメニューという訳ではなく、今までも取り組んでいた施策を組立て直し、「結婚を希望する男女の応援」「妊娠期からの切れ目ない相談・支援体制の構築」「子育て県かがわ実現に向けた県内外へのPR」という三本柱に整理して施策展開しており、このまとめ方が非常に上手いと感じました。若い人たちから見たときに、とても期待を感じられる取組みで、プロモーションビデオなどからは副次的効果で、これにより街や人が明るくなるなという感想を持ちました。婚活・ペアリングにより香川県に住んでもらうことも大きな目的であるため、縁結びにたくさんのアイディアを出して取り組んでおられました。ちなみに四国では婚活の取組みには力が入っており、愛媛県や徳島県、高知県は既に大々的に取り組んでおり香川県は後発隊だとのことでしたが、この取り組みは八王子市では取り組みが薄い部分であり勉強になりました。キャッチフレーズである「みんな子育て応援団」という言葉が特に印象に残り、市民にこういった気持ちが浸透したときにはもっと優しい街ができると思いました。このように考えると「イクケン香川」の取り組みは単に子育て支援だけではなく、多くの副次的効果が見込めるもので、大変上手いまとめ方になっていると感じました。

相沢こうた
八王子市議会議員