会派視察報告
1.視察年月日・・平成26年1月22日~1月24日
2.視察場所、及びテーマ
①徳島県徳島市 ・・徳島駅前 新町西地区再開発事業
②香川県多度津町・・再生水利用の取り組み
③香川県高松市 ・・高松市コンベンションビューロー
3.視察者
市民・民主クラブ 相澤 耕太、森 英治
1.徳島県徳島市 ・・徳島駅前 新町西地区再開発事業
〔対応者〕
・徳島市議会事務局 小泉局長
・徳島市都市整備部再開発推進室 上原室長補佐
・徳島市議会 武知副議長
〔内容と感想〕
〇新町西地区の現状
・新町西地区はJR徳島駅から約500mと至近距離にあり同駅から眉山や阿波おどり会館を結ぶシンボルゾーンに面し、当市の中心市街地の中核を成している地区でありながら、郊外への大規模集客施設の進出や消費動向の変化などにより、中心市街地の空洞化が進行している。「県都の顔」である中心市街地を再生させるための先導的プロジェクトとして、また、老朽化著しい文化センターに替わる新ホールと一体的に整備するため、新町西地区市街地再開発事業を推進するもの。
・中心市街地の商店街の現状は1996年に地元百貨店が閉店、2005年にダイエーが撤退、アーケード街などはこういった動向に合わせるように活気がなくなる。
・新町西地区は高齢化率が市内で一番高く、テナントビルそのものの老朽化や空き店舗の増加が目立つ。
・こういった背景を受けて市は何とかこの地区を将来につなげる地区として再生したいと考えている。
〇事業の目的
・事業の主な目的は、都市機能の向上により街の再生を目指し、今回の計画案は、新ホールを核としてウォーターフロントの魅力を生かした拠点となる川の駅を新たに整備し、新たな人の流れを点から面へと広げることで、ひょうたん島(徳島市中心部)全体に様々な効果を狙ったもの。
※徳島市は川が138本もある水の町である。
また、再開発事業の目的には、都市機能の再生以外に景観整備や防災機能の強化という要素もあり、再開発事業を市民生活全体の向上につなげ、新しいまちづくりの契機になると考えている。
本事業は組合施行の再開発であり、現在、地元権利者で構成される準備組合は、組合設立に向け、現況の調査、測量、基本設計、事業計画作成等に取り組んでおり、本組合設立後は、実施設計、権利変換計画作成等を行う予定となっている。
〇再開発の効果とメリット
・徳島市の再開発事業としては徳島駅前再開発依頼30年ぶりであるが、今回の地区は特に建物の老朽化が目立つことから防災の観点からも対策を施したいと考えている。
・他の地区にある市民ホールが老朽化していることから、ホールの新設により賑わい創出効果を期待している。
新ホールに関しては、例えばアーティストが四国を巡回するコンサートを計画した時、徳島市には寄らず鳴門市に行ってしまう現状があり、こういったことを食い止め経済効果を上げたいと考えている。
・市内を囲むように流れている川を使った回遊船の発着所を新設して川を使った交通網も整備することで観光にも寄与したい。
・当該地区の建物が老朽化しているためこれを整備することで景観向上を図る。
〇事業の概要図
〇反対運動
・平成25年に住民から再開発事業に対する反対運動が具体化した。
5月には反対署名数46423人うち有効署名41466人にて住民投票を求める請求が出された。
6月にこれを受理し議会でこの賛否を問う。
本会議にて採決。賛成7、反対25にて否決された。
・その後10月に新町西地区再開発の白紙撤回を求める市民の会が結成され、現在も活動中。
・市長のリコールは有権者数の1/3(徳島市では7万人程度)で可能だが、そこまでは行かなかった。
・反対派の表に出ている反対理由は「新ホールでは街の活性化は出来ず税金の無駄になる。ホールは現在のホールの改修で十分」ということであった。
・徳島市では過去に市内を流れる吉野川上流への堰設置工事に対して反対運動から住民投票を経てこれを中止したという経験があったため、反対派が住民投票に導こうという流れが割合簡単に出来てしまう背景にあるようだ、とのこと。
◇感想・所見
・中心市街地が抱える問題として、旧市街地の繁華街が衰退し商業施設が郊外型になる傾向は様々な地域で見られます・・八王子市も同様です。そういった背景を抱えながらも昔からの市街地は地域の顔として維持発展させていきたいという思いは十分に理解ができます。再開発には行政と地域が一体となった中での取組みが不可欠ですが、徳島市では大きな反対運動が発生してしまったようです。反対運動の背景はいくつかあるのでしょうが、その都市の経済的な背景から巨額な税金を投入して果たして効果が得られるか、という部分については開発以降の将来的な運用や展望を明確に提示しながら丁寧に理解を得ていくことで解決するしかないのだろうと感じました。八王子市でも近々にいくつかの地域的な改造事業が予定されていますので、地域の方々と一体となった開発となるよう事業の進め方について丁寧なものになるよう助言をしていきたいと考えます。
現地を見させていただきましたが、該当地域は建物がかなり老朽化し商店も一部を除いてほとんど衰退してしまっており、いずれにしても何等かの手当てが必要な地域だと感じました。
徳島市中心市街地は川に囲まれており、この水路を利用した巡回船を運行して観光的にもアピールすることを考えており、今回の再開発地域には巡回船の駅が出来る設計となっておりました。この川・水を生かしたまちづくりは大変興味深く、特色のあるまちづくりとなると思います。完成した様子を考えるとワクワク感があります。こういった期待させる発想や施策が我市にも必要であると思います。
2.多度津町 ・・再生水利用の取り組み
〔対応者〕
・多度津町議会事務局 宮武局長
・多度津町上下水道課 河田課長、香川係長、山田氏
・多度津町議会 門議長、庄野議員
〔内 容〕
〇事業の内容
・下水処理場の水資源を活用した節水型リサイクル社会の形成を目指し、従来は下水処理場から海に放流していた一日約1万トンの放流水を上流約6キロ地点まで送水して農業用水、修景用水、河川の浄化に利用しようとするもの。
・香川県の水事情は香川用水により大幅に改善されたが、平成6年には異常渇水により水がめである早明浦ダムの貯水量が著しく減少し農業用水の取水制限があった。こういった背景から渇水時においても農業用水の安定した水量を得ることを目指した。
・下水道の復旧により河川の水質は良好なものとなってきたが水量が減り、溜まり水による悪臭の発生や生態系への影響が問題となったため、河川に放流することにより水量を保ち良好な環境維持に努めるもの。
・人と見ずとの接点としての自然的な水辺環境を再生するため、せせらぎ水路やホタルの里など良好な水辺空間を創出するもの。
〇事業費(総計)
国土交通省補助事業:1,939,000千円 (国費1/2、町費1/2)
農林水産省補助事業:1,177,000千円 (国費1/2、県費1/4、町費1/4)
環境省補助事業:138,000千円 (国費1/3、町費2/3)
県事業費:144,000千円
町単独事業:115,000千円 (一般財源)
合 計:3,513,000千円
(国 1,604,000千円、県 438,250千円、町 1,470,750千円)
〇特記事項
・国交省の補助事業として申請するには河川管理者と共同の事業としないと不可のため、河川管理箇所と一体での事業計画とするために随分と調整した。
・同事業は既に京都などいくつかの都市で実施されていたためそれを参考に更に改善を図った。
・町民からは下水の水というマイナス方向の意識を持たれたが、水質を上げる努力でこれを払拭した。
・ほたるの里の近隣に地下水を使用する酒蔵があるため、放流水が地下水に侵入しないよう地下にシートを張った。いくら浄化したとはいえ、こういった部分には気を使っている。
・水辺環境の向上のために作った施設は近隣の住民の協力によりボランティアで維持管理をしてもらっている。維持管理には様々に工夫をして浄化施設を含めた全体で3,100万円/年に抑えている。
◇感想・所見
・四国での水不足のニュースはよく耳にする、といったイメージがありましたので水に対する危機感や思いは一層深いものがあると思っておりました。多度津町は広大に広がる田畑に供給する水をはじめ、水路や川が人々の生活に密着したものであるという意識が大変強いことから、再生水のプロジェクトに取り掛かられたちお聞きしました。
下水を再び生活の中に取り入れるために水の浄化に関してと、町の人たちの下水の水という意識を取り払うためにはかなりのご苦労があったということですが、現在その水が町の人たちの生活に密着している様を拝見して感動をいたしました。水質的には全く問題はないということですが若干の臭いを感じるのは、それでも直接の飲み水ではないという点からは支障がないものだと判断しました。
水に関しては近い将来には世界的な水不足に陥るといった報道がなされており、私たちも無関心ではいられません。八王子でも下水道の完備に伴い河川の水量が激減してしまっている現状も目の当たりにしています。多度津町ほど大掛かりな施策は無理かも知れませんが、地域的には十分に水平展開できる施策だと感じました。今後、もう少し詳しく勉強してみたいというきっかけとなる視察となりました。
3.コンベンション・ビューロー・・高松市
〔対応者〕
・高松市議会事務局 泉川氏
・高松市創造都市推進局 柳生係長、岩本氏
・高松観光コンベンション・ビューロー 今井専務理事、竹内課長
〔内 容〕
〇公益財団法人・高松観光コンベンション・ビューローの概要
・設立 平成6年9月27日
・基本財産 544,792,801円
・事業目的
国内外からのコンベンションの誘致及び支援等を行うことによる高松市及び香川県におけるコンベンションの振興、観光客の誘致及び受け入れを行うことによる高松市及びその周辺地区における観光の振興、にぎわいの創出を図り、地域経済の活性化と文化の向上に寄与する。
①国際会議等の誘致及び支援などコンベンションを推進する
②コンベンション開催支援補助金交付事業
③観光客等の誘致及び受け入れなど観光を振興する事業
④新たな観光資源開発のための旅行業法に基づく旅行業
⑤サンポート高松のにぎわい創出
⑥高松市及び香川県への旅行者の利便の増進
⑦高松市インフォメーションプラザの管理運営
・賛助会員297団体(平成25年4月)
〇開催支援補助金について
・高松市及び近隣町(三木町、直島町、綾川町)で開催されるもの、及びスポーツ大会・合宿は香川県で実施されるものを対象に市の補助事業として年2600万円の予算で補助金対象としている。
(例)国際会議 500万円限度に県外参加者述べ宿泊数×2000円
国内大会・国内学会 180万円を限度に県外参加者の述べ宿泊数×500円
スポーツ大会 80万円を限度に県外参加者述べ宿泊数×500円(合宿は300円) など
・これに物によっては香川県コンベンション誘致対策補助金が加算される。
〇特記事項
・施設ガイドを見ると高松市国際会議場などの大ホールと簡易なホールを合わせて16か所、運動施設は体育館、グランドで20か所も持っており、誘致には大変有利な設備環境にある。
・補助金対象とする条件として賛助会員となっている宿泊施設を利用することは条件である。
・補助金を出しても市内で宿泊していただけることで市内に落ちる費用は補助金額を上回ると想定している。平成24年度に香川県で開催された四国規模以上のコンベンション(スポーツを含む)は177件、参加者数は77465名(県外参加者58340名、海外参加者237名)。このうち補助金対象とした事業者への調査で経済波及効果の推計を行ったところ香川県全体で47億400万円という結果となった。
◇感想・所見
・香川県は瀬戸大橋、金刀比羅宮、栗林公園、屋島などの観光名所や全国的に有名な讃岐うどんなどの観光資源があり、高松市は繁華街も元気です。こういった取組みをしているから町や繁華街が元気なのかも知れません。八王子市では観光は中途半端な位置づけであり、都区内にいくらでも大きな施設や宿泊施設があるため、なかなか難しい面があるかも知れません。しかし7年後くらいに旭・明神町地区にコンベンションホールを作る計画があり、綺麗になった市民会館や多摩御陵を含めた高尾方面の観光資源はまだ完全に使えているとは言えない状況にあります。市外からのお客様を引き込む魅力ある取組みは街の活性化のためには絶対に必要なことだとあらためて感じました。今後のまちづくり構想の中で生かしていきたいと思います。