会派視察報告
1.年月日 平成25年1月30日~2月1日
2.視察場所と視察テーマ
・九州大学内水素ステーション、福岡水素タウン・・・水素エネルギーの実用化について
・北九州市役所 ・・・環境観光の取組み
・北九州市エコタウン・・・エコタウン事業
・北九州環境ミュージアム ・・・環境の取組みと公害からの復興
3.内容と感想
(1)水素エネルギーの実用化について
・九州大学では「次世代燃料電池産学連携研究センター」を設立して大学と開発企業の産学連携により開発と早期実現に向けて取り組んでいます。
固体酸化物形燃料電池(SOFC)は現在注目されている高効率な発電システムの中でも最も効率的に利用できるタイプであり、地球温暖化問題や昨今のエネルギー事情の抜本的解決方法の一つとして注目されています。本格的な実用化のためには、耐久性や信頼性の確保、高性能化などの課題があり、これらの課題解決に向けて研究を進めているそうです。
・次世代エネルギーとして研究されている水素エネルギーについては一部がすでに実用段階の実証試験まで到達しており、今回はそれらのうち「水素自動車と水素ステーション」「水素タウン」について見学させていただきました。
「水素の自動車への活用」
・水素自動車はすでに実用段階まで進展しており、TOYOTAとホンダが水素エンジンを搭載した自動車を開発しており、特にホンダのクラリスという車種は乗用車タイプとしてカタログがあるほどです。水素スタンドの設置とともに2015年には一般向けに売り出し実用化される予定とのことです。
水素自動車は高価であるという印象を持っていましたが、実用化段階では300万円程度の価格で、走行距離は一回の充填で400キロ以上とガソリン車と同等、水素スタンドは3大都市(東京、名古屋、大阪)と福岡に設置される予定とのことでした。
・水素の発生方法には複数の方法があり、現在安全に高純度のものを作る方法として水の電気分解によるもので、他に木質バイオマスによるもの、石油から生成する方法、鉄を作る過程(製鉄所)で発生するものを集める方法などが使われているとのことです。
・水素は爆発する危険なものという印象がありますが、軽い気体のため天井を解放することで爆発するほどの充満は簡単に回避することができるそうで、見学させていただいた水素ステーションの貯蔵室もそのように作られていました。
・水素の取り扱いに関しては「高圧ガス保安法」が適用されるそうですが、この法律が水素に限定されていないため、水素の実用化に向けては水素ガス保安法が別に制定される必要があります。
・現在は比重で比較すると防爆を防ぐために堅牢なボンベ(入れ物)が必要で10㎏の水素を貯蔵するために1000㎏のボンベが必要となってしまうため、これも適切なものに改正する必要があるとのことでした。
「福岡水素タウンにおける取組み」
・福岡県の取組みとして水素エネルギー社会の実現を目指し世界で初めての大規模な水素タウンの取組みを実現したものです。
実態は県内の新興住宅地にある既存の一戸建て住宅のうち150戸に水素を燃料とする家庭用燃料電池システムを導入したものです。
・特長として、①使う場所で発電するため送電ロスが少なく発電時の熱も有効活用することができる、②CO2の排出量を30~40%削減できる、③屋根に設置する太陽光発電システムとの併用により災害時の対応に融通がきく、などがあります。
(感想)
・水素自動車の実用化が3年後以内に迫っていることは全く知らずにおりました。水素の実用化に向けての課題として危険・設備や装置が高価、などの先入観がありましたが、すでに身近なものになりつつあるようです。水素が大量に安全に扱えることになれば次世代エネルギーとしてかなり期待できるものになると以前から思っておりましたが、日本の科学技術の進歩は素晴らしいと感じました。水素タウンについてはガスとか電気、水素などという一つのエネルギーに偏る考え方ではなく、すべてのエネルギーを上手にミックスさせた考え方に基づいているところに好感が持てました。費用対効果の関係から補助金などの手助けがないと爆発的な普及とするには難しいと思いますが、近未来の住宅像の一つを見た感がしました。
(2)北九州市の環境の取組み
「環境観光の取組みについて」
・北九州市は九州の玄関口として、近代製鉄発祥の地、小倉城、門司港、スペースワールド(遊園地)、松本清張記念館など、それなりに観光の取組みを実施してきましたが、観光客を増やす取組みとして新たな切り口を模索しました。ないものさがしではなくあるもので観光事業を発展させようという考え方で以下の項目について取組みを継続中です。
・北九州の工業・・八幡製鉄所をはじめとした近代製鉄業をはじめ様々な企業が存続していることから近代産業発祥の地として「産業観光」を充実させています。
工場夜景ツアーとして大規模工場の迫力のある幻想的な工場夜景を鑑賞する試みを展開しています。
・申告な公害問題からの復興・・死の海と呼ばれた水質汚染や空気の汚染からこれらを克服し青い海と空を取り戻した取組みをアピール。これに現在取り組んでいる地球温暖化防止対策や資源循環対策、自然共生などを加えて「環境修学旅行」として誘致しています。
・平成23年度の実績として、観光客数2,241万人を記録していますが、その内の宿泊観光客が119万人と全体数の5%にとどまってしまっていることを改善するための取組みを今後の課題としています。
「北九州エコタウン事業」
・北九州市が公害克服の過程で培った人材・技術・ノウハウ等を生かすとともに、ものづくりのまちとしての産業基盤や技術力を統合して推進している事業です。
環境分野の教育・基礎研究から技術・実証研究、事業化に至るまで総合的な事業展開をしているものです。
それらのうち今回はリサイクル事業についてお聞きしましたが、ペットボトル、OA機器、自動車、家電、蛍光管、医療用具、廃木材、廃プラ、パチンコ台に至るまで様々な部門において資源循環を実施しています。
・自動車のリサイクル・・使用済みの自動車のリサイクルを実施しており、使えるパーツ(修理などでリサイクルできる良質なパーツ)を外した後、タイヤ、バッテリー、電気配線、樹脂部品、ガラスなど各々の種別を外してすべてを種類ごとに資源としてリサイクルさせるものです。
他にOA機器(主にコピー機)のリサイクル工場を見学させていただきました。
その他の見学地・・環境ミュージアム、北九州エコハウス
(感想)
・観光のワードとして環境を組み合わせる手法は北九州市の歴史ならではのアイディアだと感心しました。一般的な観光地には限界がある中で得意な分野を生かす取組みはこれからの発展性もあり期待したいと思いました。八王子市と同様に宿泊客数が伸びないという悩みは地域への経済効果の観点からは改善したいところだと説明いただいた課長さんの思いがヒシヒシと伝わってきました。門司港をはじめとした観光資源は豊富なので、展開によっては今後十分に注目される町になると思いました。
・リサイクル事業の先進都市という言葉が相応しいところだと感心しました。工業地帯の外れの広大な土地に市の自前でリサイクル事業の最終処理施設が完備されているとは・・・恐れ入りました。まだ土地に余裕があるようでしたので、今後更に扱う品目を増やす取組みが展開されると思います。
・北九州市は過去の公害で住民訴訟になっていないことから四大公害都市とは区分されているようですが、過去の写真を見させていただくと深刻な汚染状況だったと推測いたします。これらを住民と企業と行政が一体となって克服した歴史は貴重な財産です。現在、中国や韓国で公害問題が深刻な状況にあります。ぜひともこういった経験を伝えていただきたいと思いますし、発展途上のアジアの国々には先進国の工業と環境を両立させる技術を勉強してもらいたいと切に思いました。
今回の視察でお忙しいところお付き合いいただきました関係各位の方々に心より感謝申し上げます。