・街路樹は、まちの中でさまざまな役割を担っています。
1.景観向上機能・・街路樹と言えばこの役割を一番に思い出す人が多いのではないかと思いますが、まちのシンボルツリーなど、樹木そのものを景観対象物とした装飾機能として生かすものです。場合によっては景観的に好ましくないと思われる建築物などを樹木で遮へいすることで景観を向上させる遮へい機能や、自然に見える風景と人口構造物を一体的に見せる景観調和機能なども含めて景観向上機能といいます。
2.生活環境保全機能・・交通騒音や大気汚染などに対応してそれらを改善し、生活環境保全を図る機能です。
3.交通安全機能・・中央分離帯への植樹は対向車の前照灯を遮る効果であったり、曲がった道では道路線形の認識や誘導の目的があります。また、歩車道境では交通弱者である歩行者や自転車を分離する役割があります。これら交通に直接関係する改善機能を交通安全機能といいます。
4.他に防災機能などもあります。
これらの街路樹の機能を理解し、その選定に当たっては、地域特性なども把握して、その場所に求められる街路樹の役割に適合した種類を選定する必要があります。ただ植えればいいというものではありません。
・私が今回質問をいたします街路樹整備については、大分市がしっかりとした取り組みを実施しています。以前視察で訪れ、大変すばらしい取り組みであると感じました。大分市は、市街地と山間部の山林を有しており、この環境は八王子市とよく似たものがあります。その環境で確立している街路樹景観整備計画は、まちなかの緑を山の緑と切り離して別のものと位置づけて考えられたものです。八王子市でも、緑、緑というけれど、山間部の緑と市街地や道路の緑は根本的に違うものと位置づけた方針や取り組みを実施すべきではないかと考え、そういった目で市内を見続け、ある程度私なりの考えができましたので、今回取り上げさせていただくこととしました。
・まず、八王子市内の街路樹を意識してみた感想から、幾つかの例を挙げたいと思います。私の住んでいる北野方面の道路にはケヤキの木が多く植えられています。ケヤキは成長すると樹高30メートル程度まで大きくなります。その場所では、現在15メートル程度に育ってきたことと、当初のケヤキ同士の植樹間隔が10メートルからそれ以下と狭いことに加えて、電線直下のため通信設備や電気設備保安の観点から伐採が行われることもあり、ケヤキの木の上部、前後左右が人工的及び隣り合わせの木の干渉によりケヤキ本来の姿にはほど遠い姿となっています。植樹密度が濃いため、葉の茂る時期は道路が暗くなってしまい、また、根が張って歩道の舗装が盛り上がり、幹は電柱より太くなり、歩行者の通行に支障となっております。これだけの木ですから、秋は当然落ち葉が大量に発生します。樹木にはそれぞれに種としての樹高や姿がありますから、成長したときの大きさや姿を十分に考えた選定により植樹することが必要となると痛感させられます。
・次に、桜の木についてです。桜の木は、八王子市内には割合多いのではないでしょうか。桜の花は、日本の象徴的な花で日本人の心ともいうべきものでしょう。しかし、花が終わり葉が茂るころになると、この木は毛虫が大変つきやすい欠点があります。また、植物の本で見ますと、台風など強風に割合弱く、折れやすい性質があり、さらには、枝の伐採には弱い性質を持っています。こういった特徴から判断すると、民家に隣接する場所には余り向かない木なのではないでしょうか。植える場所により、その種の長所・短所といった特徴を十分に把握し、適した樹木を植える必要があるのです。
・さて、桜の時期が終わりしばらくすると、八王子市内の道路沿いでは、ハナミズキが一斉に白、赤、ピンクのきれいな花を咲かせます。ことしは注意して見たせいか、八王子市内の街路樹にはハナミズキがやたらと多いですね。ハナミズキは街路樹には適した性質の木のようですから、それはそれでよいのですが、まちづくりや景観といった観点から見ると、どこの風景も似たり寄ったりで、何だか個性がないなと感じるのは私だけでしょうか。街路樹は、姿そのものが風景、景観となるので、その地域のまちづくりの観点から、植樹する木の成長した姿を将来のまちなみに照らし合わせて選定する必要があるのです。
・もうひとつ気になった例として、八王子駅北口放射線通りですが、この歩行者専用道にはさまざまな街路樹が植えられており、順調に育っておりますが、その種類と特徴を調べますと、コブシは春先に白い大きな花をつけてとてもきれいですが、この木は成長すると樹高が18メートル、幹の太さは直径60センチ程度になります。ヤマモモが八日町の交差点近くに多く植えられていましたが、この木は一年じゅう葉をつけている常緑種で、成長すると樹高は20メートルほどになるそうです。ハルニレもありましたが、これはニレ科の落葉高木で、樹高は何と35メートルに達するということです。樹高がぴんとこないかと思いますけれども、目安として、電柱の高さは大体12メートルから13メートルですから、35メートルというと電柱の3倍近い高さとなります。当然、上にだけ伸びるわけではありませんから、幅もそれなりに大きくなります。果たして放射線通りに20メートルを越えるような樹木が連立することがふさわしいと、将来の樹木の形を想像してこれらの木を選定したのでしょうか。また、そういった大木にも寿命があり、また時には病気にかかり、いつかは倒れます。
Qまず、これらについてどのように考えるかをお聞きしたいと思います。紹介した事例の中からケヤキ、ハルニレなど大木になってしまう街路樹に対する考え方と、街路樹を植樹する際の樹木選定の方法についての現状をお聞かせください。 それからもう1点、八王子市の景観条例の中で、街路樹についてはどのような位置づけとなっているかについて教えてください。
A大・高木による街路樹の考え方でありますけれども、地域の特性や環境保全、道路景観などといった観点から必要な樹木である一方、通行を含めた交通環境上に支障がある箇所も見受けられます。大・高木になることによるさまざま影響が出るところにつきましては、剪定方法などを工夫し、適切な維持管理を図っているところでございます。
また、樹木の選定方法でありますけれども、東京都の道路工事設計基準に基づき、植栽の目的や地域交通沿道条件などを総合的に勘案し、関係法令や各基準と照合しながら、関係町会の意向を踏まえた中で植栽の形態、樹種などを決定しております。
A八王子市景観条例での街路樹の位置づけでございますが、景観条例に基づいて定めました八王子市景観計画では、街路樹を含め既存の樹木を保全し、緑を減らさないことを基本的な考え方としております。また、甲州街道のイチョウ並木や多摩御陵のケヤキ並木、JR八王子駅北口のベニバナトチノキの並木などを景観重要道路に指定し、良好な景観形成上、重要な景観資源として街路樹を位置づけております。
・先日の都市環境委員会の報告事項で、昨年9月の台風15号による街路樹倒木による損害賠償の和解についての報告がありました。報告時には、今後の街路樹点検の中で発見できるように取り組みますといった、反省を生かした対策について述べられておりました。八王子市には、植え込みにあるようなひざ下程度の高さしかないツツジなどの低木は除外して、街路樹と呼ばれる木が一体どのくらいあるのか市の担当課にお聞きしましたら、大体3万4,000本程度という答えでした。私にはこれだけ多くの街路樹を厳正的確に管理することは無理だと思えます。損害賠償にまで発展しなくても、市民とのトラブルは随分あるのではないかと推測します。また、日常の市民要望として、木やその枝を切って欲しいとか、落ち葉に対する苦情などは、私たち議員にも要望が多く寄せられます。
Qそこで現状についてお聞きしますが、街路樹の管理に年間どの程度の手間と費用がかかっているのか。また、年間どの程度のトラブルがあるのか、その内容と件数についてお答えください。
・倒木に関してつけ加えておきますが、原因は台風や大雪、雷など耐えられない自然現象や車の衝突などの外的要素によるもののほかに、木の病気や害虫によるところはよく言われることですが、そもそも木も生き物ですから、当然のことながら寿命があります。樹木が大きくなり、だんだんと年齢を重ねていくと、寿命による植えかえなどを考慮して管理する必要があります。管理においては、市がよくおっしゃる街路樹点検以外に、その木が植えられた時期と種類について把握する管理を実施するとともに、ただ外観点検をするのではなくて、樹木に関する専門知識を十分に反映することは欠かせないものとなると思います。
・さて次に、街路樹などが支障となっているところについてですが、例えば、歩道の幅が当初から1メートルもないような歩道は市内至るところにあり、こういった狭い歩道に無理して街路樹や植樹帯を設置しているところも市内にはたくさんあります。また、先ほど述べたとおり、樹木の成長により歩行者に支障を及ぼしてしまっている場所もありますが、こういったところにあえて街路樹を植えておく必要はなく、まずは安全な歩行空間確保が優先だと思います。街路樹が大きくなり過ぎたことにより、防犯灯や道路照明が届かない場所、標識や信号が見えにくいところ、バス停の存在や横断歩道を横断しようとして待機している人が見えにくいところなど、安全面での障害となっている場所も多くあると感じます。また、著しく電線などのライフラインに支障となっている場所は、災害時の倒木による支障予想や迅速な復旧予測など災害時に対する考え方を確立していくことも大切です。
Qそこでお聞きしますが、現在の市の考え方の中に、歩行者の安全確保のためや現場で明らかに街路樹があることによって弊害が出ている場所などに街路樹や植樹帯を撤去したり、樹木を適した種類のものに植えかえるといった考え方はありますか、お答えください。
A年間の高木の剪定の維持管理経費は、年間約1億2,000万円を執行いたしているところでございます。
また、街路樹関係の問題についてでありますけれども、昨年度の苦情・要望の件数で申し上げますと、全体で678件ございました。その主な内容につきましては、台風15号の強風による倒木等が174件、落ち葉、毛虫等の苦情が73件、標識や信号機の視認に関することが23件ございました。
最後に、安全確保のための街路樹についてでありますけれども、道路構造に関するさまざまな基準の見直しなどにより、現状での基準を満たさない箇所が見受けられますが、街路樹における植栽は風土性の演出や景観の修辞などの文化効果が認められるほか、地域環境の保全、街路環境の向上などの環境の面からも多くの効果をもたらしています。樹木を全面的に植えかえることにつきましては、地域住民の合意形成あるいは費用対効果などの問題もあることから、これらを1つ1つ整理する必要があります。しかしながら、歩行者の安全に支障を来すような局部的なところにつきましては、関係町会などと協議を行い、対応を図ってまいりたいと考えております。
大分市の例を紹介しますが、大分市では都市計画マスタープラン、景観計画、環境基本計画、地域防災計画をすべて受けた形での緑の基本計画が制定されています。この計画では山間部を含めた市内の緑について考えているものの、まちなかの緑に限定して改めて街路樹の存在を見てみると、その対応が余りにも貧弱であったことに気がつき「街路樹景観整備計画」として街路樹に限った緑の基本計画をさらに具現化して制定したとお聞きしました。冒頭述べましたとおり、大分市と八王子市は広大な山林を有しているということが類似しており、この街路樹整備計画は大いに参考になります。整備計画の中で私が特に注目したことは、樹種、木の種類を選定リストとして、さまざまな樹木の特徴や樹高、管理上の留意点などを一覧にして街路樹選定の基準をわかりやすくしている点や、市内の道路形状と街路樹の状況を自分たちで細かく調査し、場所によっては街路樹撤去検討路線とするなど、現場状況や市民の暮らしやすさを十分に考慮したものとして作成されていることです。
先ほど来、八王子市の街路樹管理についてお聞きをしてまいりましたが、私の感想としては、よく言えばケース・バイ・ケースの対応、厳しく言えば場当たり的な対応をしている、そういう印象を受けました。八王子市の街路樹に関しては、その選定から管理方法に至るまで大きく改善する余地とその必要があると感じました。街路樹がまちの景観に適合して人々の生活に気持ちよく共存し、本来の木の姿で街にアクセントを与えてくれたら、とても素敵な住みやすい街になるのではないかと、考えただけでわくわくするのは私だけではないはずです。
Q街路樹に限定した基本計画を策定して、市民生活やまちの景観に合致した緑化を行うことは、街路樹による最適な生活空間の創造にとどまらず、管理する側としても、目的がより明確になることで仕事の無駄を省く効果も期待できると思います。街路樹基本計画策定に向けた提案についてどのようなお考えを持たれたか、市長にお聞きします。
A石森市長
街路樹景観整備計画の策定についてでありますが、街路樹は、市民に安らぎや潤いを与え、都市環境を改善するとともに、良好な都市景観の形成に重要な役割を果たしております。その半面、一部の樹種は大きく成長し過ぎるなどの課題もあり、適切な樹種選定や維持管理を行うことが重要であると考えております。
現在本市は、景観計画に基づく景観形成の取り組みを進めておりますが、御提案のあった街路樹景観整備計画の策定につきましても、大分市などの先行事例を参考にしつつ、調査研究を行ってまいりたいと考えております。
☆検討したいという回答に止まってしまいましたが、私は街路樹を考えるほどに街路樹基本計画は作るべきだという気持ちが固まってきました。街路樹が本来の姿で街中に生き生きと茂っていたら何と素晴らしい景観を生み出せることだろうと思っています。今後、角度を変えたりしながら策定に向けて誘導していきたいと思います。
【防犯灯、街路灯管理体制の見直しの必要性について】