①自然エネルギー導入における課題と問題点
○3月11日の東日本大震災での福島第一原子力発電所の事故以降、エネルギー政策の方向性が未だに見えて来ない状況にありますが、巷では原子力に替わるエネルギーとして自然エネルギーに注目が集まっています。
○現在の社会的動向である電力の自然エネルギーへの転換構想の中で非常に大切なことが無視されています。それは「電力品質」というもので、簡単に言えば電気にも品質がありそれが電気機器には欠かすことのできない大変重要な要素であるということですが、このことが報道でも国でも論じられたところを見聞きしたことがなく、全く重要視されていません。
○電力品質とはその言葉の通り電気の質のことで、この質を評価する要素としては様々なものがあり、「周波数」「負荷変動」「需給バランス」「ノイズ」「事故」などで、電力系統ではこれらの要素が不安定なほど品質が悪い、ということになります。電気の質は電気事業法で決められている電圧や周波数の誤差範囲があり最低ラインとして法で定められており、電力会社では自社内の規準を更に高めて電気の供給を行っています。日本の電気は世界有数の良質な電気と言えます。現在の日本企業の発展の陰にはこの優れた電力品質が大きく寄与しており、良質の電気があることが精密な機械を寸分の狂いもなく稼働させ、品質のよい製品を生み出してきました。
○日本の良質な電気を規準としているものは工場の生産ラインだけではありません。最近の各ご家庭にある家電製品は良質な電気があることを規準として設計されておりそれゆえに軽量化や小型化され、尚且つ精密に出来ていますので、負荷や周波数変動、ノイズやサージといったものに非常に弱くなっています。わずかな変動で電気機器の基盤がショートしたり焼けたりするトラブルが多く報告されていますが、現在の電気機器類はほとんどのものが電力品質が悪化することに耐えられないものとなっており、わずかな電圧や負荷変動で損傷する物が多いのです。
○現在、自然エネルギーには太陽光、風力、水力、地熱、波、バイオマスなど様々にあります。これらのうち、太陽光発電で言うとメガソーラーといったような大きな設備は電力事業設備として電気事業法の規制を受けるため品質の著しく劣る電気は無いと考えられますが、家庭用など個々に売電するものはその規制外となり、粗悪な発電機が混入していても個々にその性能を把握することは不可能です。現在世の中で導入に向けて注視されているものは、電気事業法の外にある極めて小さな発電システムです。これらを自宅のみで利用するのであれば、電力品質の悪化はその家のみの課題となり他者には迷惑を掛けないのですが、電力の余剰分売電のために電力系統に無策のまま接続されることは電力品質の悪化につながることになります。このことについて国を含めて自然エネルギー推進を唱えている人たちは論じていません。また家庭用発電から電力系統への接続だけを課題とすれば、系統の末端に売電のための接続をしても、電位が一番低いところから電気は流れませんので、系統上流れる場所がないところに接続することらなるなど、家庭用発電からの系統への接続に関してはそういった系統運用上の制約もたくさんあることも問題点の一つです。
②八王子市が実施した家庭用太陽光発電導入補助金制度について
Q:八王子市で昨年度一般家庭の太陽光発電導入への補助金支給を実施しましたが、補助金対象の選定には系統上の問題点を評価する項目はありましたか。また、家庭で設置する太陽光システムに雷サージやノイズの系統への進入防止策などがきちんととられているかを確認する項目はあったのでしょうか、お聞きします。
A:国による太陽光発電補助制度の交付対象となっていることを条件としており、系統上の問題点の有無等は項目に入っていない。
Q:太陽光発電の補助金対象となった個人からデータ収集をしていますが、これは何を報告してもらい、そのデータをどのように活用されているのか、または活用していくのかについてお聞かせください。
A:毎月の発電状況等の報告を受けている。また太陽光発電設置による意識の変化や良かった点、困った点などのアンケートを実施し、両方ともに市のホームページで公表している。
③電力品質の確保されたまちづくりについて
○太陽光発電設置家庭からのデータ収集について回答をいただきましたが、その程度の情報収集では実施する必要性を感じません。個々の太陽光発電システムのデータは当然メーカーが把握しており、他市にもたくさんの類似データの蓄積があり、はっきり申し上げてわざわざ実施する意味はありません。本当に必要なデータは他にあり、それは現在設置してある家庭の太陽光パネル単体のデータではなく、電力系統上の問題点を抽出するような専門的な取組みの中から実施するものだと考えます。
○このような大掛かりな専門的取組みに関して他市に前例があります。例えば群馬県太田市では行政と各メーカーが協同で2002年から5年間を掛けて新興住宅地の約550戸の屋根にパネルを設置し、太陽光発電システムの性能評価、配電系統に与える影響調査、および対策技術の研究開発といった、しっかりとしたテーマを持って家庭用太陽光発電装置の実証実験を実施しています。
○八王子市で太陽光発電などを推奨するのであれば、漠然と付けたい人に補助金を出すというのではなく、まずどのように自然エネルギー導入を考えるか、そういった市の方針を整理することが必要であり、電力品質にまで気を配った将来型のまちづくりの提言を積極的に進めるべきです。
Q:現実問題として八王子市では越野地区の19住区にて、これから着手する部分で200戸以上の太陽光パネル設置の住宅地として売り出すことを計画しているところがあり、まさしく群馬県太田市での研究開発結果を適応できるケースが発生します。この住宅群に対してどのような問題意識を持っているか質問します。
A:19住区の住宅建設詳細の情報は未だ持っていない。群馬県太田市の実証実験例と合わせて情報収集に努めて市の方向性を検討していきたい。
Q:時代ニーズが個々人の自家発電などを推奨するようになると電力品質の問題はまちづくりに欠かせない要素になってきています。市内への自然エネルギー導入に向けたビジョンを構築する設計を実施し「電力品質の確保されたまちづくり」を環境政策の一環として進め、自然エネルギーと電力品質の調和された導入方向を全国に発信したらいかがかと考えますが、このことに関してどのように考えるかお聞かせください。
A:市内の再生可能エネルギー普及拡大においては、市民・事業者が一体となった取組みが必要だと考える。今後専門的見地からの助言、意見も踏まえながら検討を進めていきたいと考える。
④ゴミの有効活用について
○八王子市は分別収集業務が順調に軌道に乗り、ゴミへの取組みは進んでいる行政だと思います。今回お話ししたいのはこれらのゴミの中で焼却している可燃物に関してです。
○可燃ゴミはその名のとおり焼却炉で燃やしてその灰を処理しています。燃やしてしまうということは、その時のカロリーはただ放出してしまうだけで、CO2は燃やすゴミの量に比例して排出しています。この燃焼カロリーの有効利用と、同じCO2を排出するならば、ただ燃やすだけではなく、可燃ゴミそのものの有効利用を進める方策が必要です。また現在可燃ゴミの量を減らす取組みとしては、紙ゴミの資源化などの分別収集、ゴミとなる過剰包装を少なくする呼びかけをしたり、生ごみの水分を絞って出すように呼び掛ける、また生ごみをたい肥に利用する検討などを行っていますが、私は各方策に手詰まり感があると感じています。可燃ゴミの有効利用について新たな活用方法を検討してみたら如何かと思います。私はこの可燃ゴミに環境政策として取組むべき大きなテーマがあると考えています。
○まず、現在八王子市では既に可燃ごみ焼却の際の熱利用についてはいくつも取組んでいますので、その実態について整理しておきます。北野清掃工場では隣接する「あったかホール」に熱利用による温水を供給し25mプールと入浴施設に利用しています。また冷暖房熱源や給湯用としても温水を供給しています。戸吹清掃工場では、同様に冷暖房熱源としての利用の他、「湯ったり館」への温水供給をしています。更に発生させた蒸気を利用した発電を平成10年より実施しており、発電量は出力2080kWで、館内利用の他、余剰電力は電力会社に売電しています。
○この清掃工場での可燃ごみを利用した発電は全国的にも盛んになってきており、平成19年度の報告では全国で300カ所近くの発電設備を併用したゴミ処理場があるとなっております。これらのシステムは導入当初は発電効率が6%程度という効率の悪いものであったものが、平成19年平均は9.5%程度となり、最近は高効率ゴミ発電システムが次々と各メーカーから出されていて、中には25%以上の熱効率を誇るものもあります。(戸吹清掃工場は10%程度)
○可燃ごみは何にも利用せずにゴミとして燃やしても結局のところCO2を排出することになりますから、有効利用する意義がそこにあります。バイオマスや生ゴミ発電、炭化保温材に加工している例など、国内には様々な実験例はあります。
○八王子市はごみ収集や処理に大きく力を注いており高く評価しておりまが、今後の更なるゴミの減量に向けては今の考え方の延長では無理なところに割合に早く行きついてしまうと感じます。
Q:可燃ゴミを含めたゴミの有効活用について現在検討をされている事項や話題にあがっているものなどがあればお聞かせください。
A:生ゴミ資源化モデル事業にてたい肥化を検討している。
Q:ごみ問題全般における次へのステップとして、可燃ごみ発電を含めた有効活用について市が先導して研究し具体化に向けて取組んでいくことが必要な時期に来ているのではないかと思っていますが、こういったゴミ発電や生ゴミ発電などゴミをエネルギーとして活用することに関しての検討状況や将来的な計画などについてのお考えをお聞かせください。
A:可燃ゴミからの発電はごみの資源化の一つの手法として十分検討に値すると考える。ごみ処理基本計画の見直しの中でごみのエネルギー活用の方向性を示していきたいと考える。館清掃工場跡地に将来建設する次世代型清掃工場の基本構想・設計の中で専門的ノウハウを持つ民間の力を借りることを含めて検討していきたい。
⑤環境都市構想について
○環境と一口に言っても様々な切り口があります。今回の質問では自然エネルギーという部分と可燃ゴミという部分について詳細にお話しをさせていただきましたが、これからのまちづくりは環境というキーワードを全てにおいて引掛けていったらよいと思います。環境という言葉で様々な施策を横串に刺して検討し実施していくことが有効だと思います。八王子市は自然環境に恵まれています。一般的に理解しやすいのは自然環境ですから、自然環境に既に恵まれている都市・八王子市として東京で一番の環境都市を目指す、といった環境都市宣言をした時にとても分かりやすいイメージがすでにあり、そういった意味でも東京都一番の環境都市として八王子市は先人となりうる条件を持っていると思います。 今後は様々な施策に片っ端から環境をからめてそれをテーマとしたまちづくりを行っていったらいかがでしょうか。それにより街並みや八王子そのものが、優しくイメージのそろった街に自然と向かって行けるのではないでしょうか。
Q:来年1月には市長選挙が行われます。黒須市長は既に引退を表明されていますが、八王子市の今後について最後の大きな方向付けをしていただきたいと期待しています。環境という言葉を全てのテーマに今後の八王子市のまちづくりを進めていくという私の提案についてどのように感じられるかお考えをお聞きし、是非とも時期市長への引き継ぎ事項のひとつとしていただきたいと思いますがいかがでしょうか。
A:(黒須市長)
本市は素晴らしい自然環境に恵まれており環境に対する市民の関心も高く、八王子の未来を考えるにあたって環境の視点は不可欠であると考える。いまや環境は一つの部署で取り扱う狭い問題ではないと考える。多摩のリーディングシティとして市の全ての所管において環境という観点を持ち全ての分野で環境に配慮した施策や事業を進めていくことが本市の役割であり、次世代の子どもたちによりよい八王子市を残すことにつながると考えている。