<会派視察報告その2>
実施日:平成23年7月19日~7月21日
視察場所:○長崎県長崎市:原爆資料館、平和公園、○熊本県熊本市:市電と敷地内緑化(緑のじゅうたん事業)
メンバー:市民・民主クラブ:相澤耕太、森英治、伊藤忠之、安藤修三、星野直美
《長崎県長崎市・原爆資料館、平和公園》
≪目的≫
・1945年8月9日に長崎に投下された原子爆弾の被害と、核について学ぶ。
≪対応者≫
・長崎市原爆被爆対策部:松尾係長、吉富係長
長崎原爆資料館館長 中村明俊氏
≪概要≫
・長崎に投下された原子爆弾について
1945(昭和20)年8月9日午前11時02分に米軍により投下された。
当時の長崎市の人口は約24万人、原子爆弾による被害者数(昭和20年12月末)死者77884人、負傷者74909人であった。
長崎に投下された原子爆弾のエネルギーの内訳は、爆風50%・熱線35%・放射線15%。これらが副ザ区にからみあって甚大な被害をもたらした。
・当時の原子爆弾について
原子爆弾はプルトニウムなどの放射性物質を核としているが、放射線で人を殺傷しようという考えは全くなかったようであり、プルトニウムなどは放射性物質というよりは中性子爆発を起こすための原料として使用されている。
当時は原子力、放射線といった物質についての問題点は一部の人しか知らなかった。そのため、原爆投下からしばらくして発症した紫色の痣のような放射線による被曝の症状は伝染病として見ていた。(死の同心円・秋月先生著)
原子爆弾は地上500mの上空で爆発し、その瞬間には中心部は真空状態のようになり、その後下から上へ地表面を吸い上げるように大気を上昇させる。それは成層圏まで届くほどでそこから横に広がるかたちで拡散するため、放射線量もその気流によって拡散される原理となる。
・第五福竜丸
原子爆弾による放射線被害を世間が認識したきっかけは、1959年にビキニ環礁で被爆した第五福竜丸以降であると思う。このころは世界中で水爆・原爆の実験が行われていた時代である。
※資料館の中では原水爆実験の詳細についての展示や映像が流れており、長崎から核兵器廃絶をと訴える。
・長崎の原爆による放射線研究
長崎大学医療チームが継続をして実施している。現在は副学長である山本教授を中心に活動。
※長崎大学医療チームのホームページには、放射線に関する知識について掲載されており、大変わかりやすい内容にまとめられている。
・他に「永井隆博士について」「広島と長崎の原爆の違いと米国の意図」など詳細にご説明いただいた。
≪質疑≫
Q:原爆資料館が新しくなったようですが、展示方法などで変わった部分などはありますか。また、広島と比較されると思いますが。
A:一言で言ってしまえばテーマ毎に展示することで解り易く工夫した。例えば原爆については原爆そのものについて・熱線の被害・爆風の被害・放射線の被害 というように分けて展示している。また現在に至る問題点について(原水爆実験と核兵器廃絶など)も力を入れている。
展示物によっては痛ましい類の物もあるが、現実に起こったことでありあえてその物を展示したいと考えている。広島では恐すぎるということで一部展示を止めたものがあると聞いたが、ここではそういう配慮はしていない。原爆の種類と米軍の目的についても双方に違いがあるため、是非両方とも見ていただき理解して核兵器の恐ろしさについて実感してもらいたい。
Q:東日本大震災での福島第一原発事故による放射線量についてどのような感想をもたれていますか。
A:公表されている数値を見る限りでは、それほど問題になる値ではない(長崎大学・山下教授談を紹介いただく)。原子爆弾は放射線により殺傷しようとは考えていなかった兵器で、放射線の飛散の仕方も原発事故とは違うため簡単に比較できないが、長崎の過去の数値などから比較すると微量であると思う。
Q:全般的に核についてどのようにお考えですか。
A:原子爆弾と原子力発電は核の利用方法が根本的に違うため、核そのものの圧縮など精製方法などが全く違う。核爆弾廃絶は当然である、原発などの平和利用に関しては平和に利用できる安全対策を十分に行って利用することは問題ないと考える。
Q:子どもたちへの学習などについて教えてください。
A:長崎市内の中学生を対象に平和学習を実施している。また、教える側も30歳以下のボランティアにて実施しており、原爆体験者の高年齢化と原爆への関心が薄らいでいってしまうことを防いでいる。
≪感想≫
・原爆と放射線に関しての基礎知識はある方だと自負をして伺いましたが、忘れていることも多いと反省しきりでした。大変解り易いご説明をいただき、資料館もテーマごとの展示が理解しやすいと感じました。原爆の様々な悲劇を見た後に通る場所に近代の原水爆実験について淡々としかし大きく展示がされており、VTRでは実験の様子を映し出しておりました。世界に未だに数多くある核弾頭などの数を見て世界平和という言葉の危うさを再認識しました。再びの悲劇を起こさないためにもこの資料館の方々は日々発信をされている、そういった姿を尊敬するとともに、私たちも核の平和利用というものがいったいどのようなものなのか、既成概念にとらわれずにきちんと考えてみることが大切だと思いました。そのためにもまずは正しい歴史と現実の知識を手に入れることの大事さを感じます。長崎では子どもたちに平和教育をされているとお聞きしました。こういったことを全国的に広げて展開していくことは地道だけれど将来的に核について正しい道を歩むために一番必要なことではないかと感じました。
《熊本県熊本市・市電と敷地内緑化(緑のじゅうたん事業)》
≪目的≫
・市電の運行についての詳細をお聞きするとともに、市電の線路敷を緑化している事業(緑のじゅうたん整備事業)についてその概要を視察させていただいた。
≪対応者≫
・熊本市環境保全部保全課 吉本課長補佐 熊本市交通局電車か 島田氏、松川氏、下田氏
≪概要≫
・路面電車について
大正13年の市電操業からの歴史についてご説明いただく。
市電としては日本初で冷房化を実施したり、超低床列車を導入していることなど力を入れていることについてご説明いただく。
・みどりのじゅうたん整備事業
平成21年度から23年度までの予算3億円で市電延長12.1キロのうち約870m(4100m2)を緑化。
目的は街中に今までにない緑化の空間を創出すること。工事に伴って軌道敷全体を掘削し補修も兼ねているため、騒音低減策としても有効である。また、観光地としての景観づくりも大きな目標のひとつである。
費用については市の予算の他に市民など一般から「緑のじゅうたんサポーター」を募り、資金調達をしている(団体一口1万円以上、個人一口3千円以上)