【再生可能(自然)エネルギーごとの現実と将来性】
~水力発電、太陽光発電~
◇福島第一原子力発電所の事故以降、再生可能エネルギーへの方向転換を安易に語る政治家や評論家が多く見られますが、例えば太陽光や風力などは真新しい発電方式ではなく随分以前から研究されましたが第一線での実用化を一度は断念した発電方式であり、残念ながら現在名称が知れている発電方式ではとても原子力発電の代替えにはなりません。実用化ですらそれぞれに致命的な大きな課題を抱えており、日本では残念ながらそのほとんどが主力(基幹)電源としては期待できないものとなっています。
・現在、再生可能エネルギー発電方式と呼ばれているものについて順を追って簡単にまとめてみたいと思います。
1.水力発電
・水力発電は昭和の前半まで(火力発電が普及するまで)は日本の主流の発電方式でした。1970年頃には日本の河川における大水力発電の可能地点はほぼ開発が終了し、その設備形態を揚水型※による負荷平準化へと移行し現在に至ります。近年は大規模なダムによる環境破壊や生態系への影響が問題視され、新たな大型のダム建設は事実上不可能な状況にあります。川の水は飲料水として日本では年間800億トンもの淡水が使われ、農業はほとんどが川の水を使います。当然、動植物にとっても川の水は欠かせないものとなっており自然環境維持の観点からもこれ以上人間のエゴによるダム建設は事実上不可能です。今後の水力発電設備増設は小水力発電に限られ、大幅な発電量アップは望めず、とても今後の基幹電源として期待できるものではありません。
※揚水式水力発電
発電用の水を貯める上ダムと発電後の水を一時的に確保する下ダムを有し、深夜電力を利用して発電機を逆回転させてポンプとして使い下ダムから上ダムに水を組み上げておき、電力需要のピーク時など必要な時に備えておくタイプの発電所です。夜間に出力調整できず一定の電力を発電してしまう原子力発電所の余剰電力を使って水をくみ上げることで、エネルギーを水として蓄えるという苦肉の策から生まれた方式です。ですから余剰電力が無い状況では水を汲み上げるなどの工程で掛かる電気はそのためにわざわざ発電して使用しなくてはならずエネルギーの無駄遣いとなってしまうため、電力使用量の大きい夏などの日中のピーク対策として運用する以外は不経済な設備となってしまっています。この揚水式水力発電方式に飛びつこうとした総理大臣がいましたが、原子力発電所が稼働していることが揚水式水力発電の絶対条件のため、原子力発電を止めて揚水式水力に頼るという構図はそもそも描けません。
2.太陽光発電
・日常的に降り注いでいる太陽の光から発電しますからその資源は無尽蔵と言えます(注・光を電気に変換する装置が必要で装置には寿命があるため厳密に言えばタダで無限ではありません)。太陽光発電そのものは有害物質を出さず、発電装置は騒音の発生はありません。ただし現在利用されている太陽光パネルはシリコン系とカドミウム・テルル系の二種類が主流でいずれにしても寿命が来れば大量の産業廃棄物を生み出し、特にカドミウムは強い毒性(四大公害のひとつであるイタイイタイ病の原因物質)があることは皆さんがご存じのとおりです。技術的にシステム構成が単純で可動部がなく保守が容易であるという利点があります。またエネルギー変換効率が発電規模に左右されないため規模による発電効率の有利不利はありません。ただし太陽光のエネルギー密度は約1kW/㎡程度と低く(エネルギー密度比較では石油の3万分の1程度)、気象条件や設置場所の日照条件により発電量が左右されてしまいます。
太陽光発電の条件では太陽光を受ける広い面積が必要だということが一番の難点です。人口密度が高く森林面積が国土の3分の2もある日本でこの発電方式が有望かと問われれば答えはNOです。森林を切り開き、田畑であった平地に太陽光パネルを敷いていくということは許される行為ではなく、メガソーラーの設置場所はそれほど多くはありません。結局は住宅の屋根、線路や道路の脇などを有効に使いながら設置していく方法がベストであり、使用する場所(オンサイト)での発電が可能であるため分散型エネルギーに適した発電システムである、といった利用方法として普及していくと考えられ、気象条件や日照条件による発電効率※を語るまでもなく主力電源にはなり得ません。
※発電効率は、一日のうちの半分が夜で太陽が出ていませんので、初めからフルで50%です。朝夕の日の光が弱い時間帯は効率が下がり、気温が高すぎても発電効率は下がります(太陽熱発電ではない)。また年間を通して雨や曇りの日の効率はゼロに近く、雪が降りパネルを覆ってしまえば発電できません。こういった条件を加味していくと年間ではパネルの能力の精々15%以下程度の発電効率となってしまうのです。