電力に求められる社会的な条件【電力品質について】
・「電力にも品質があります」と八王子市議会・平成23年第4回定例会の一般質問(活動報告のVol.10に掲載)で自然エネルギーの導入に関する質問の中で電力品質について説明をしましたところ、市長をはじめ多くの方々が「知らなかった」という率直な感想を述べられました。電気の質についてお話しいたします。
〇社会的な主力電源としての条件は一般家庭で使用する電気を基準とするのではなく、工業をはじめとした事業用電力を基準として考える必要があり、周波数や電圧に変動がなく安定した大容量の電気が条件となります。これまで日本の電力品質は世界トップレベルであり、この安定した電力品質が確保されていたからこそ工業が飛躍的に進歩し高い性能を持った複雑な製品が作り出されてきました。更にそうして作られる電気製品はほとんどが安定した日本の電力品質を基準に作られていますので、粗悪な電気で使用すると故障するか壊れてしまいます。
電気が実用化されはじめたのは19世紀後半であり、その歴史はまだそれほど長いものではありませんが、その便利さ故の発展は非常に早く既に現代社会において電気が無い生活は考えらませんし、電力品質を維持することはもはや必要不可欠です。電気は空気や水と同様に生活の中に普通にあるものにすることはもとより、その品質を維持向上しなくては日本の社会や人の生活は成り立たないものになってしまっているのです。
◇電力品質
・電力品質とはその言葉の通り電気の質のことで、この質を評価する要素としては様々なものがあります。代表的なものは「周波数」「負荷変動」「需給バランス」「ノイズ」「事故」などで、電力系統ではこれらの要素が不安定なほど品質が悪い、ということになります。
・電気の大まかな質としては電気事業法で決められている電圧や周波数の誤差範囲があり、例えば家庭のコンセントに来ている100Vの電源であれば100V±6V、周波数は50Hz±0.3Hzが最低ラインとして法で定められています。電力会社では自社内の規準を更に高めて電気の供給を行っており、負荷変動防止やノイズといわれる電気中に混じる不純物の除去、雷などから侵入するサージなどの防止、事故による停電時間の短縮のための系統構成など、様々な品質劣化要因に対して対策を施して良質な電気の提供をしています。電柱や鉄塔上、変電所などに電力品質安定のための付帯設備が随所に設置されています。送電されている電気の安定度や停電時間の実績などを比較すれば一目瞭然で、日本の電気は世界有数の良質な電気と言えます。
〔交流は位相を合わせることが大前提〕
・現在の日本企業の発展の陰にはこの優れた電力品質が大きく寄与しており、電圧や周波数変動、ノイズなどのほとんど無い良質の電気があることでとても精密な機械が寸分の狂いもなく稼働するのです。日本の良質な電気を規準として作成されているものは工場の生産ラインだけではありません。最近の家電製品は良質な電気があることを規準として設計されており、それゆえに軽量化や小型化され尚且つ精密に出来ていますので、負荷や周波数変動、ノイズやサージといったものに非常に弱くなっています。わずかな変動で電気機器の基盤がショートしたり焼けたりするトラブルが多く報告されていますが、現在の電気機器類はほとんどのものにこういった基盤が組み込まれていますので、電力品質が悪化することに耐えられないものが多く、わずかな電圧や負荷変動で損傷する物が多いのです。
・原子力発電所停止以降、様々な自然エネルギーによる発電と系統への接続などが簡単に言われていますが、大規模なメガソーラーなどのある程度安定した電力以外は、電力系統上では一言で言えば粗悪な電気と言えます。こういった小さな発電システムが無策のまま系統に接続されることは電力品質の悪化につながります。
〔参考・電力品質悪化による不安要素・開米瑞浩氏ブログ〕