八王子市議会議員

相沢こうた

KOHTA AIZAWA

エネルギーについて
VOL.5

現在の日本の電力事情と節電について

〇2012年3月11日の東日本大震災を境に日本の電力の先行きが混沌としたものになってしまいました。

津波により事故を起こした福島第一原子力発電所は廃炉が決定し、その他の国内の原子力発電所は一部を除きその安全性を確認するまでは稼働出来ないことになりました。当時の電力需要の原子力発電に依存する割合は全国平均で30%程度だったため、これを停止した場合の代替え電源確保が課題となりましたが、電力会社ではこの代替えをほとんど全て火力発電所の増設(ディーゼル発電なども含む)や休止火力発電所の再稼働で応急的に対応しています。

巷や行政では盛んに再生可能エネルギーで原子力発電所の発電分を代替えしようという声が上がりましたが、既存にある再生可能エネルギーによる発電方式ではそのことは100%不可能です。一つ一つの再生可能エネルギーによる発電方式とその課題については以降ご説明したいと思います。

電力供給の難しさや課題はいくつかありますが、まず大きな電力として貯められないということです。貯められませんので世の中が必要とするその時に見合った量を発電して必要とされているところへ送り出さなくてはなりません。この時に電力品質を維持するためには発電量が少なかったり多すぎたりする(電圧の範囲が大きく変動する)ことは許されません。全体の消費状況を見て必要な分だけを発電し送電する作業を24時間行っているのです。自然任せの発電では欲しい時に意図的に発電量を制御することが非常に難しく、また風力で言えば風が吹かなければ発電量がゼロの状態もありますので、こういった発電方式に対しては同等のバックアップ電源として火力など意図的に稼働させられる発電設備を用意していることが条件になってしまいます。

現在も再生可能エネルギーの普及に関しては全電力に占める割合いとしてはほとんど伸びず、火力発電依存が継続されています。火力発電所に関しては先に触れたとおり休止中だった老朽化した設備までも稼働させ続けており、停止する余裕がないため点検もままならない状況下にありますので、いつまでもこの状態を続けることは出来ません。新たに大きな火力発電所を建設することは周辺送電網の整備なども含め一朝一夕には不可能ですし、日本のエネルギー政策が白紙であり脱石油や地球温暖化防止などの観点からも踏み切れるものではありません。更にこの2年半の燃料費による大赤字で電力会社はどこも資金的な余裕があるところはありません。

 

こういった側面からも原子力発電所の再稼働は当面の間の日本の電力供給のために絶対に必要であり、代替え火力の限界が近付いている状況では、その判断をあまり先延ばしに出来ない時期に来ています。

それならば「節電」だ、とおっしゃる政治家の方が多くいらっしゃいましたが、全く実現不可能です。

◇節電について

・平成23年3月の東日本大震災により被害を受けた発電所は福島第一原子力発電所だけではありません。太平洋岸に位置する広野火力、鹿島火力をはじめとした400万kWを超える出力を持つ火力発電所が発電不可能に陥りました。

(東日本大震災で停止した東電の発電所)
□が停止中
△が地震で停止
●が停止なし

この電力不足に対応するための緊急措置として計画(輪番)停電が2か月近くに渡って実施されたことは記憶に新しいところです。電鉄の間引き運転や店舗の営業時間短縮、関東圏での製造業は事実上不可能となり企業は停電のない関西圏他へ生産ラインを移動するなどしました。比較的気候の緩やかな(真冬、真夏ではなかった)季節であったため、オフィスや家庭での空調や照明による節電は可能でしたが、慢性的に電気の足りない中で例えば真夏に空調を止めたり、計画停電への対応ができるか、と問われれば否です。それこそ命の問題に発展してしまいます。

ちなみに平成23年当時の節電量(停電による分は除く)を東京電力の販売電力から算出しますと全体で10%少々であったとのことで、節電が合言葉のような中で照明を暗くしたり空調温度を調整したりといった節電をしていただきましたが、使用者の大変な努力をしたという実感ほどに効果が表れないことがわかります。これは自分たちが思っている以上に電気に頼った生活をしているということの実証になります。それならば便利さを落とさない省エネ機器の開発だということになりますが、現在の日本は既に相当の省エネ機器の導入がされていますので、現在以上の大幅な飛躍は期待できるものではありません。

人間は一度便利になってしまったものを捨てるといったことは歴史上過去に一度も行っていません。生活レベルを簡単には元に戻せないのです。また戦争中ではあるまいし現代社会の中で電力不足を精神論で乗り越えられるものでもありません。

電力使用量は一般家庭よりも産業用が圧倒的に多いと他の項で述べましたが、電力料金の高騰に対応するために既に産業界でも相当の節電を行っており、これ以上の例えば使用量の規制などによる節電を行えば企業の海外流出やそれによる雇用不安など他の問題に発展することになりますから、ほとんど期待できない現状にあるのです。

相沢こうた
八王子市議会議員