電力が安定しなくてはならない理由(2)
・貿易と国防、地球温暖化・
〇生活と産業以外に貿易と国防、地球温暖化に絡む電力の安定の必要性について記します。
◇貿 易
・日本には電力の燃料となる資源がほとんどありません。そのほとんど全てを海外からの輸入に頼っています。電力の燃料となるものは、石油・石炭・液化天然ガス(LNG)・そして原子力発電のためのウランも全て輸入です。ちなみに電力に使用される輸入されないものは、水・太陽光・風くらいのものでしょうか。
原子力発電所が停止となり火力発電に依存している現在、これらの燃料の輸入量は当然跳ね上がっており、その輸入金額は昨年度の増加分だけで3兆4千万円とも言われています。これに原発に左右されず稼働している火力発電の分を合わせますと年間20兆円は優に越える額を海外に支払っていることになります。
・石油などの原産国の中には未だに国情が不安定な国が多くあり、また過去の世界の戦争の歴史を見る とそのほとんどがエネルギーの略奪を目的としたものですから、こういった国々は社会的不安に陥る危険性をはらんだ国が多いと言っても過言ではありません。こういった国から長距離の海上輸送により燃料を運ぶリスクもあります。
・オイルショック以降、電力に関しては石油の生活に及ぼす影響を極力無くす目的で脱石油を掲げて、火力発電における石油火力の割合を減らす努力を続けて、ある程度それを達成していました。しかし原子力発電所停止に伴う電力不足に対応するため、廃止にしかかった石油火力発電所をいくつも運転再開していますので、現在は脱石油に関しても時代が振出しに戻った状況にあります。
☆発電における火力の割合が多くなると、国益として得た貿易黒字分をそのまま燃料購入のために貿易赤字として流出することになり、国益として考えると大変残念なことです。また、元々資源がありませんので価格交渉において大変不利であり、他国の国情に大いに左右される不安定さが拭えません。
◇国 防
・貿易と多少ラップしますが、燃料を全て輸入している訳ですから日本を干上がらせることは簡単です。ミサイルや戦車は必要なく、燃料の輸入経路を経てばよいだけです。自国に国産のエネルギー源がないということはそれだけで国民生活が常に危ういということなのです。
◇温暖化防止など
・エネルギー政策が安定していないと地球温暖化防止策については何も目標が立ちません。CO2を出さない有効な発電方式が現在は原子力発電しかありませんが、一度輸入してしまえば何度も再利用が可能でCO2の排出が無いウラン燃料を利用する原子力発電に頼らなくてはならない理由はこういった側面からも明らかなのです。将来的には原子力発電と同等以上の利点を持つ化石燃料に頼らない何か全く新しい他の方式に移行していくことが必要となりますが、現時点でその影すら見えていない状況下では、様々な観点から冷静に原子力発電の必要性を認めていくことは当然のことなのだと思います。
※電力の安定と簡単に一言で言いますが、その影響は多方面にとても大きく渡ります。電力の世の中に与える影響力を考えると電力の問題はもはや電力会社とかという狭い範囲の問題ではなく、国家として早急に取り組み道筋を付けなくてはならない大問題となっているのです。