今回沖縄を政務調査地に選定した理由は以下のような思いからである。
現在対馬市は、『地域医療再生臨時特例交付金』を活用した、統合新病院建設に取り組んでいる。新病院建設の大きな目的の一つは、医療従事者の確保を図りやすくすることである。本県長崎同様の離島県沖縄の医療従事者確保に係る取り組み状況を調査研究したい。また、一次医療圏から二次医療圏の搬送システムや、ドクターヘリを活用した三次医療圏への救急搬送に関しても、参考となる先進的取り組みを調査研究する意義は大きいとの思いからである。
次に、本市は韓国由来の大量の海岸漂着ゴミの処理に頭を悩まされている一方、沖縄県も中国等の外国由来の海岸漂着ゴミの処理に悩まされており、グリーンニューディール基金の配分は、本県に次ぎ全国で2番目に多い。予想される当該基金大幅減額後の課題は、多種多様な手法を検討し、できるだけ低予算で持続可能な回収及び処理を実施することである。同様の問題を抱える沖縄県の取り組み状況を調査研究することで、課題解決のヒントを探りたい。特に、沖縄県では離島のNPO等に参画いただいて地域協議会を開催し、官民共有のプラットホームの構築に取り組んでいる点は本市にとって大いに参考になると思われ、是非そのノウハウを現地で聴取したいとの思いからでもある。
対馬がかつて朝鮮半島との交易で活力があった様に、沖縄は琉球王国時代、大陸との中継貿易で栄えていた歴史を持っている。現在沖縄県は沖縄振興特別措置法に基づき自由貿易地域(那覇自貿)と特別自由貿易地域(特自貿)が設置され、貿易振興が図られている。本市では韓国人観光客の爆発的増加に比べて貿易振興は遅々として進んでいない。それは関税法等の法的要因によるところも大きい。本年の離島振興法改正を機に、本市は外洋特に国境離島を対象とする特別措置法の制定を国に要望している。対馬をかつての貿易の島へ蘇らせる鍵が沖縄にあるのではないか。また、上海航路開設にあわせて本県が計画している市中免税店拡大を、本市にも波及させるとすればどのような環境整備が必要となるか、現地で確かめたいと思いがあったからである。
最後に、国境に位置する地域は常に外敵からの侵入や反対に隣国への侵攻の第一線に立たされてきた。本市と類似した歴史的地理的背景を持つ観光先進地沖縄に学び、対馬を平和学習の聖地としてPRしていきたいとも考えている。
≪日時≫:1月19日午後2時~午後3時半
≪担当者≫:(医療対策班班長宮里治氏)、同班主査渡久山和之氏
≪内容≫:離島医療問題に関する調査研究
沖縄県は二次保健医療圏を、本島を北部・中部・南部の3つに、離島を宮古・八重山の2つの都合5つに区分している。昭和48年に本土復帰を果たした当時、沖縄県の医療施設に従事する「人口10万対医師数」はわずか33.5人で当時の全国平均110.5人に対して30.3%という低い充足率であった。平成18年になって沖縄県208.3人、全国平均206.3人となり初めて全国平均を上回るに至ったが、本県と同様に医師の偏在は解消されていない。
沖縄県では、不安定な医療提供体制の環境下にある本島北部保健医療圏と、離島の2保健医療圏を1つにまとめたかたちで、2つの地域医療再生計画を策定している。基金の配分は各々25億円であり、ハード面よりソフト面の充実に重点を置いている。主な取り組みは以下の通りである。
①人材の養成と確保:医療従事者の育成、確保、県内定着を図り、そのための継続的な体制を整備する。
②医療の機能分化と連携:限られた医療資源の中で、それを効果的、効率的に活用するため、医療の機能分化連携を構築する。
③離島・へき地の課題解決:離島・へき地における救急や周産期医療等、直面する課題の解決を図る。
①は次の2で③は3でそれぞれ述べるとして、ここでは、②についてのみ参考としたい具体的取り組みを紹介する。
診療所と中核県立病院間を繋ぐITを活用した地域医療システムの構築に離島圏4.7億円と北部圏3.8億円、県内20箇所の診療所に遠隔画像支援システムを導入するために1.2億円、その他にもWeb会議システム導入による連携推進事業等で都合約10億円つまり基金総額の2割が投入されている。救急時の画像支援もさることながら、胎児モニターを整備し妊婦の負担を心身ともに軽減を図っていることは、産科医不在地域にとって大変意義があるだろう。
また、民間病院・診療所とも連携し、医師交代勤務を導入しており、更には在宅医療特に在宅歯科診療を実施していることは本市においても参考としたい。
沖縄県の「人口10万対医師数」*1は、近年全国平均を上回っているが、医療圏別に見れば全国平均を上回っているのは5医療圏中県都那覇市を擁する南部医療圏1箇所のみであり、宮古医療圏は163.0人、八重山医療圏は154.7人であり、対馬市の169.0人を下回っている(平成20年調査)。
沖縄県には7つの県立病院があり、診療所の多くも県立である。県庁には医務課とは別途県立病院課も設置されており、本県以上に県が直接医療に関わっているようである。
資料1沖縄県の医療対策(医師確保関連対策)のP.6~P.13の中で詳しい取り組み状況が把握でき、本県と同様な取り組み*2も多く見られるが、ここではP.7の一覧表中本県より更に踏み込んだ施策を抽出して紹介する。
3医師確保対策事業①医師修学資金貸与事業
・貸与利率が年0%(本県14.5%)であることには驚愕する。
・返還免除の要件も貸与期間の約2/3の勤務年数と短期間であり、他県よりも受給者負担が軽く全国からの応募が期待できる(本県は平成22年度から貸与期間の2倍であったものを1.5倍に短縮)。
8沖縄県女性医師バンク事業
・女性医師の再就業、離職防止等に必要な情報の収集・発信及び再就業等を希望する女性医師と医療機関の間の職業紹介・斡旋等を行うための女性医師専用の相談窓口を設置して、女性医師の円滑な臨床現場復帰や職場環境の整備を図る(委託先:沖縄県医師会)。
10シュミレーションセンター整備事業
・沖縄県内の医師や医学生がキャリア形成のすべての時期(卒前教育・医師のスキルアップ・復職研修等)に応じて、実際の臨床の場で効果的な処置や治療を行えるようにするために、共同利用できる診療トレーニングセンター(クリニカル・シュミレーションセンター)を整備する。
*1離島等においては医師数の増減よりも人口の減少が著しく影響し、医師数は増加していないのに見かけの数値が好転する傾向もあり、埼玉県茨城県千葉県がワースト3県であることからも、面積をファクターに加える等しなければ医療充実を図る指標として相応しいかどうか疑問に感じるところもある。
*2『長崎県の離島・へき地医療対策 ・医師の養成制度 ・離島医療支援対策』(長崎県福祉保健部医療人材対策室)に詳しい。
資料2沖縄県地域医療再生計画についてのP.6とP.12に掲載されているように、離島勤務医の過重労働を緩和させ、勤務環境の改善による医師の継続的確保を図るためにも代診医派遣事業に8千4百万円の予算を充当している。
①ドクターヘリやドクターカーの活用状況と今後の充足計画について
資料1のP.15~P.16によれば、ドクターヘリは沖縄県ドクターヘリ、陸上自衛隊航空機、第11管区海上保安庁ヘリ、の3種類ある。特に海上保安庁ヘリは石垣航空基地を拠点としており搬送時間の短縮が魅力である。長崎県や県病院企業団独自のヘリを本市に確保することは初期投資もさることながら維持費も財政的に大きな負担となり困難であろう。北朝鮮の動静に注目が集まるこの機を捉えて、国防あるいは漁業権益の危機に対処する意味からも、本市に拠点を置く国家機関のヘリの配備を国に働きかけてはどうだろうか。
沖縄県では、現在ドクターカー*3は配備しておらず今後も配備予定はない。
②救急救命分遣隊の活用状況と今後の充足計画について
救急分権隊は配置しておらず、現在のところ配置する予定もない。但し、現場が遠隔地の場合に救急車が向かう途中に中継地まで地域の消防団に搬送を委託している地域もある。更に詳しく調査研究する価値があると思われる。
③近距離離島や陸の孤島に適応する救急船の建造あるいは配置計画について
ある程度の大きさの離島には、離着陸可能なポイントが確保されているため、限られた極小規模な有人離島にのみ救急患者を搬送する船が委託されている。この点についても、詳しく調査研究する価値があると思われる。
東日本大震災後に医療船に注目がなされ、4月には「病院船建造推進、超党派議員連盟(衛藤征士郎会長)」が設立された*4。災害時に道路が寸断された場合等、海路からの医療支援を円滑に行うことを想定しておくことが必要である。この議連が想定している大規模医療船の外に、小さな港にも対応可能な小回りの利く小型救急船の建造も重要と考える。特に、本市のように道路整備が遅れている地域では、平時でも陸路より海路が便利な地域を多く抱える自治体も少なくないはずである。本四連絡橋開通以前は瀬戸内海の離島に配備されていた実績もある。小型救急船についても調査研究が待たれる。
*3事前に長崎県病院企業団から提供された『ドクターカーについて』『普及に向け走り出した欧州型ドクターカー』に詳しい。また、長崎新聞(H24.1.291面)「長崎大学ドクターカー発導入」参照。
*4公明党衆議院議員遠山清彦著『志力の政治』(論創社)第1部6日本の防災体制を見直すー災害時に威力を発揮する病院船建造を に詳しい。
資料2のP.13以下に掲載されている沖縄権地域医療再生計画(二次)には、離島の医療従事者と離島の患者の負担を軽減する事業が多く計画されている。遠隔読影システムを構築し離島にいながらにして高度医療の受診を可能とする関連事業に大半の予算を注ぎ込んでいる。
≪日時≫:1月20日午前9時半~午前11時半
≪担当者≫:(課長大浜浩志氏)、一般廃棄物班班長比嘉隆氏、 NPO法人地球友の会沖縄協会理事長新川大蔵氏、同協会桃原美咲姫氏
≪内容≫:漂着ゴミ問題に関する調査研究
事前打ち合わせをしていた担当者の山本剛揮氏急病のため、急遽比嘉氏より資料3沖縄県における漂着ゴミ対策について資料4(緩やかな連携を目指して)沖縄クリーンコーストネットワーク(OCCN)に沿って説明を受けた後に、NPOと行政の連携状況について、新川氏にヒアリングを行った。
資料3のP.3「海浜地域浄化対策費」の通り、沖縄県では海岸管理者である県庁土木建築部海岸防災課が主体となって、海岸を所管する土木事務所が各地元業者に施工設計を発注し海岸漂着ゴミ回収を実施ししてきた。また、本市と同様の環境省による海岸漂着物の概況調査・モニタリング調査事業も実施されており、その際も地元業者に発注している。
本市では、離島漁業再生支援交付金を活用した漁業者による海岸漂着ゴミ回収がなされていた実績と経験を重視し、当該基金による回収のほとんどを漁業者に委託した。沖縄県も回収経験を重視して従来の手法である業者への発注による回収を実施した。事業概要については、資料3のP.1-Ⅰ-3の通りである。
沖縄県の海岸線はビーチが多く、岩場が多い本市とは異なり進入困難海岸の割合が低いために回収コストが比較的低く抑えられ、重点地区を設けることなく県内全域を対象に実施できたと想像できる。しかし、環境生活部から土木建築部に予算を分任し、更に県の出先の地元土木事務所に執行を依頼する煩雑な手続きを要したこと。また、施工設計にも期間を費やしたことから、執行が大幅に遅れ、平成22年度は基金を活用した事業は未実施に終わり、実質的には本年度のみの執行しかできておらず、非効率な事業であったことは否めない。
執行残を出すことなく多額の基金を市内に投下させ経済効果をあげたこと、短期間で大量のゴミ回収ができたこと等、迅速な回収作業を執行できた点においては、本市の取り組みは評価に値すると思う。
本市では、近年NPO「対馬の底力」という海岸清掃組織が自主的活動を行ってきたが、行政との連携が上手くいっていない。限られた人材や財源で、持続可能な海岸清掃を実施していくためには民間の協力は不可欠である。昨年年初来、沖縄県の民間海岸清掃組織の活発な活動に注目し、石垣島のNPO「海Loveネットワーク」や沖縄県庁の担当者に、沖縄県各地域の海岸清掃ボランティア活動の情報を提供いただいていた。概況は資料5の通りであり、本島地域や石垣島等マリンレジャーが盛んな地域ではマリンレジャーショップ等が中心となったボランティアによる海岸清掃が盛んである。しかし、小規模離島では自治体や自治会に頼らざるを得ない実態であり、地域により活動の度合いに温度差があることがわかる。回収物の処理については、本島地域以外では地域内での処理能力が不十分で、処理不能な廃棄物の運搬費用の負担に頭を抱えており、本市と全く同じ状況である。処理場までの運搬コストも嵩むため、軽トラックに搭載できる可動式油化装置の実用化に期待したい*5。
海岸清掃ボランティアに対する公的支援の概要については、資料3のP.4~P.9の通りである。県ではなく第11管区海上保安部環境防災課が主体となり、資料4最終面のOCCN活動のイメージ図の取り組みを試行しており、成果を挙げているようである。実際にこのシステムに登録してみると、Eメールでビーチクリーンアップの情報提供を受けることができた。官民共有のプラットホーム構築に向けて大いに参考になると思われ、更なる調査研究を進めたい。
*5日本マリンエンジニアリング学会海洋浮遊ゴミの対馬視察調査班現地視察報告書P.8~P.10に詳しい。同学会が、昨年9月厳原港で可動式油化装置のデモンストレーションを実施し来場者の注目を集めた。
「海岸漂着物処理法」と当該「基金要綱」との乖離が、NPO等のボランティアに対する支援を阻んでおり、積極的支援が可能な基金要綱となるよう、国に働きかけようとの意見で一致した。また、「海岸漂着物処理法」で規定されている海岸漂着物の処理主体は海岸管理者でそのほとんどは国であり、市町村には処理の協力義務しかいない。回収費用のみならず当然処理費用も国が責任を持って負担すべきである。ある一定範囲の地域毎に処理施設を設け、その初期投資のみならず、運転資金も国が責任持つよう働きかける必要を強く感じた。
NPO新川氏からは、企業の社会貢献活動と連携し文化交流等を通じてマスコミやタレントを活用したムーブメントを起こすことも重要との提案を受けた。
余談だが、沖縄県は東日本大震災の瓦礫が沖縄県に漂着する可能性が高いことを科学的に証明し、当該基金の1年延長の承認を得たそうである。
≪日時≫:1月20日午後1時~午後2時半
≪担当者≫:沖縄県庁商工労働部企業立地推進課主査座波航氏、同課主任金城利治氏、同課主任仲宗根圭奈子氏、沖縄自由貿易地域管理事務所所長比嘉淳氏
≪内容≫:沖縄自由貿易地域に関する調査研究及び現地視察 市中免税店に関する調査研究
本年の離島振興法改正を機に、本市は外洋離島を優遇する制度改正、更には国境離島を対象とする特別措置法の制定を国に要望している*6。沖縄県には全国で唯一自由貿易地域(FTZ)が設定されており、関税法上の保税地域制度と立地企業に対する税制・金融上の優遇措置を組み合わせ、企業の立地を促進し、貿易振興が図られている。本市の貿易拡大に向けてFTZの調査研究を行う。
訪問当日は予定より30分程早く現地に到着したため、管理事務所所長比嘉氏にFTZの建屋内を案内いただいた。県庁の担当者が到着後、管理事務所会議室にて制度の概要について資料6自由貿易地域那覇地区の概要と資料7特別自由貿易地域の概要及び資料8企業立地ガイドに従って説明を受けながら、事前に質問していた内容について資料9に副って回答を受けた。そのうち質疑が集中した部分について主に報告する。
*6 H23年7月本市策定の『新たな離島振興法に係る提言書』P.13⑫国際交流と貿易参照。
立地促進投資減税制度による恩恵を享受している企業は少なく、関税の課税選択性の実績も皆無である。関税暫定措置法で国内産業に影響のある品目は対象外となっている等、制度自体が骨抜きにされており、現在取り扱っている輸入原材料のほとんどが無税では、恩恵に与ることはできなくて当然だろう。過半数の企業が保税許可を受けているが、規模の小さい保税倉庫であり、資料6P.4の表から分かるように海外向け搬出の実績は設立以来少額で全くない年もあり、保税機能を活用した中継貿易が活発に行われるまでには至ってない。
特自貿は企業の立地が進んでいない地域に企業を集積させるために、より魅力あるインセンティブとして那覇自貿にはない所得控除制度が設定されたが、制度はあまり活かされていないため制度の相違による実態の相違はあまりない。
沖縄のFTZ制度は肝心なところに規制がかかっており、思いのほか自由に貿易が可能となる地域となってはいない。真のFTZ化するには特措法をもってしても障壁は高いようである。
貿易の拡大には、貿易相手が求めている貿易品目の開拓や製造が必要である。同時に、貿易船が自由に往来できる環境を法的にも港湾設備の面でも整えることが必要である。輸出については他所蔵置手続きを踏めばある程度可能となる。しかし、輸入し保税工場を活用した加工貿易を行うあるいは中継貿易を行うにあたっては、釜山港に最も近い比田勝港の活用が断然有利となるが、不開港のままでは埒があかない。1月17日長崎県地方港湾審議会で釜山航路増便に対応するため厳原港を拡充することが承認された*7が、未だに旅客対応にしか目が向けられていない。比田勝港の整備についても行政はグランドデザインを示すに至ってない。将来比田勝港を国際貿易港へ成長させうるような環境整備を念頭に置いた計画策定が喫緊の課題である。
*7長崎新聞H24.1.18ふるさと総合面『厳原港を拡充 港湾計画変更 県審議会が承認』参照。
那覇自貿の施設入居率は92%と高水準であるが、入居事業者の入れ替わりも頻繁であり、当初予定していた製造業の輸出関連事業者の入居は思うように進んでいない。その要因としては、沖縄に輸出品目が育っていないこと、貿易船の便数が少ないこと、急激な円高等をあげている。貿易を拡大するには保税蔵置場の用地確保が必要だが、隣地の空き地は米軍用地である等沖縄ならではの困難な事情も窺えた。現在貿易とは縁が薄い外資系金融機関のコールセンター等が入居しており、訪問時も新たなコールセンターが建設されていた。また、従業員用の託児所や売店が設置される等、FTZの本来の趣旨とは異なる利活用が進んでいる。FTZの本来の趣旨に近いものとしては、半導体の検査を行う企業が入居している。検査には高い技術が要求され、アジア諸国で製造されたものを日本で行う必要があるとのことであった。
担当部署が異なる観光政策課であるため、資料9P.3~P.5及び資料10沖縄地区税関HP沖縄型特定免税店制度に副っての簡単な説明を受けるに止めた。詳細は次々項の市中免税店に関する現地視察及び体験で述べるが、商店街の既存の店舗の売り上げ拡大を目的とするのであれば、かなり厳しいであろう。また、定期船内にも免税店が設置されるため、人件費等で分が悪く、サンプル販売主体の市中免税店での購入が進むか疑問である。
≪日時≫:1月20日午後3時半時~午後4時半
≪担当者≫:中城湾港開発推進協議会理事長門口誠氏、同協議会企業立地サポートセンターアドバイザー南出拓人氏
≪内容≫:沖縄特別自由貿易地域に関する調査研究及び現地視察
企業立地サポートセンターを訪問後すぐに、敷地内のIT津梁パークへ案内された。その屋上からは特自貿全域が一望でき、資料8P.5~P.6の地図と見比べながら担当者より説明を受けた。屋上から見える埋め立て地は広大で、目の前の金武中城港は開港指定を受けており、7つもの-10m級のバースを有する。ただし、一見して未活用スペースが多いことがわかり、資料7からも企業立地の苦戦状況が読み取れる。約100ブロックの分譲用地に実質4社しか入居していない。雇用者数も平成19年度末の503名をピークに減少傾向にある。更に、地域内からの海外向け搬入搬出額の割合が25%程度しかないことには愕然とする。ここでも貿易とは無縁なコールセンター建設されていた。
貿易関連企業立地が進まない最も大きな要因として、金武中城港に国際定期船が就航していないことを関係者はあげている。資料8P.10記載の通り、沖縄県は、特自貿からの直接船舶による物流を活発化させるため、平成16年度から地域内で製造した製品をコンテナ単位で県外等へ出荷する場合*8、物流コストを助成している。コンテナを使用する規模の企業は少ないため、平成23年度からは箱単位での助成を始めている。しかし、申請企業も県も事務量が膨大となり費用対効果の面で、当該助成制度のあり方そのものに疑問が湧く。しかし、貿易振興に対する沖縄県の真摯な取り組み姿勢には頭が下がる思いがした。
現在厳原港における貿易船の往来は週4便程度のみであり、定期貿易船就航を目指す前に先ずは不定期船の確保が容易となるような環境整備が必要である。資料8P.28の『カボタージュ規制の一部緩和』は世界第3位の貿易港釜山港に最も近い本市の貿易拡大に寄与する可能性があると思われ興味深い。沖縄のようにハブ港を目指すのではなく、釜山港のサテライトポートとして比田勝港の環境整備ができれば、十分に生きる道が開けて来ると思う。
例えば、キノコの菌床を韓国から保税状態で輸入し、比田勝港の保税工場で栽培し、それからサプリメントを製造する等二重の付加価値をつけ、保税状態のまま韓国に送り返すといった高付加価値加工貿易を開拓できないだろうか。
*8沖縄県は生活物資の多くを県外からの移入に頼っている反面、本土向け移出が低調であるいわゆる片荷問題を抱えている。そのため、輸出のみでなく移出にも助成を設けている。
≪日時≫:1月20日午後5時半~午後6時過ぎ
≪内容≫:市中免税店に関する現地視察及び体験
平成10年4月に沖縄振興開発特別措置法に基づき、国外のみに限らず那覇空港から輸入品を県外へ携帯して持ち出すことについて、関税払い戻し措置が図られることとなった。次に、平成13年4月より免税販売制度に改正された。更に、平成14年4月には内閣総理大臣が指定する空港外に設けられた市中の特定販売施設DFS GALLERIA OKINAWAが購入場所に追加された。
沖縄型特定免税店制度の実態を知るため、市中特定免税店で自ら免税品を購入し、翌日引渡しを受けることとした。DFS GALLERIA OKINAWAの外観は郊外型ショッピングモールそのものである。大きな立体駐車場からメインフロアーの2階に入った。店内は資料11ショッピンカードに示された図の通り有名ブランドがズラッと並んでいる。買い物のイメージは資料10沖縄型特定免税店制度の図の通りである。購入時に搭乗券(またはそれに代わる予約票)を提示し資料11ショッピンカードに必要事項を記入し代金を支払うと、販売記録票兼領収書が添付され手渡される。出発時に、搭乗手続きを経て指定されたDFS商品受取りカウンターでショッピングカードを提示して購入品を受け取る。受け取る際に係りの人に質問をしてみた。DFSからは30分おきに空港まで保税輸送がされていること。革製品等の微妙な風合いにこだわる方等からすれば、長崎県のサンプル販売方式では満足できないのではといった感想をいただいた。
実際に購入して沖縄県方式と比較した場合の長崎県方式のデメリットは次のようなことが想定できそうだ。まずは、商店街の小売店での免税品取り扱いという小規模では顧客の満足を得にくいと思われる。化粧品等は偽物の心配はあまりないとしても、有名ファッションブランド商品の巧妙な偽物を商店街の小売店に見極める能力があるのかが問題となろう。騙しているつもりがなくても信用が無くては購入が進まない。顧客は多くのブランドの中から品定めをすることに楽しみを覚えるため、沖縄のおもろまち規模が要求されると思われる。また、一般買い物客と免税品買い物客が混在していては、効率面や保税面の問題も生じやすい。このデメリット解消のため、沖縄のおもろまち規模のDFSを設けるとすれば、LV MHグループのような大手仕入先の利益が上がるばかりで、商店街にはわずかなシャワー効果しか期待できないであろう。
≪日時≫:1月21日午前中
≪内容≫:平和学習と先進観光地の地域資源活用に関する調査研究
今回国際交流については、物流面に重きを置いた調査研究であったが、本市は、他の自治体が羨むほど多くの韓国人観光客を受け入れており、人流面でも一層の拡大を図っていかなければならない。その大事なツールのひとつに先人達が平和を希求してきた対馬の歴史があげられる。
施設の入り口に献花販売所で一束250円の献花を購入したが、萎れたものばかりで実に残念であった。リピーターは多くは無いのかもしれないが、来館者の善意に応える活き活きとしたものを準備して欲しいと憤りさえ覚えた。また、周囲に売店が多数あるが件の売店と代わり映えしない店構えであった。ひめゆりの塔にちなんだ商品があるわけでもなく、お土産品も国際通りと同じようなものが定価販売されており、購買意欲がそそられることはなかった。
ひめゆり平和記念資料館に入るとすぐに、後から入ってきた外国人が職員に何か尋ね始めた。するとすぐに、英語が話せる職員がやってきて対応していた。説明版も二ヶ国語標記が施されている。現在本市で検討中の歴史資料館では外国語特に韓国語での対応は日本一と誇れる施設になるよう期待したい。
資料館の展示内容は長崎や広島の原爆資料館と比べるとソフトなものが多かったが、語り部の語りや後にひめゆりと称される女学生達の追想記はリアリティーが感じられた。しかし、大きくマスコミで取り上げられた集団自決についても、現在竹富地区で問題化している教科書選定問題についても全く触れられていない。非常にデリケートな部分であり、公の施設では真正面から取り扱うことの限界を感じた。
世界遺産も有する首里城公園にも足を運んだ。カーナビなしでもたどりつけるくらいの案内誘導版の整備や、駐車場の警備から館内の案内や展示物の管理に至るまで流石のおもてなしを感じた。入館料800円も、文化財の修繕等を顧慮に入れればそれほど高額とは感じなかった。外国人観光客も少人数のグループが多くみうけられたが、外国語による案内も充実しており安心して見学できているように感じた。
第17代対馬当主宗義調のことば「島は島なりに治めよ」には2つの意味を感じる。島の身の丈に合った統治と、島の歴史や風土に合った統治である。
現代の対馬島民は全てにおいて本土並みの生活水準を求めることで、本来の対馬らしい慎ましくも充実感ある生活を忘却しているところがないだろうか。身の丈即ち財政状況も勘案した上で、優先順位をつけて不便さの解消策を模索するときがきていることを自覚しなければなるまい。また、対馬の先人達は、水産資源や山林資源に恵まれた風土を活かすことで、田畑に適した農地に乏しく厳しい生活条件を克服し生き抜いてきた。先人の教えに倣い島の恵みを活かした貿易を今こそ再興するときだと考える。
一昨年昨年と国境問題研究の第一人者である北海道大学の岩下教授が対馬に来島し講演いただいている。教授によれば、国境離島というが法的に国境線が確定している国境離島は数少ない。国境線が不確定な地域は、正式な交流ができず国境である利点を活かすことができない状況にある。そういった観点からすれば、対馬は発展のチャンスに恵まれている島だといえる。
最後に、対馬は古から常に外敵からの侵入や、反対に朝鮮半島や大陸への侵攻の第一線に立たされてきた。防人、元寇、秀吉の朝鮮出兵、日露海戦等など多数の戦史がある。それらから学んだことは、対馬が栄えていた時代は朝鮮半島と友好関係にあった時代で交易が盛んであったということである。対馬の戦史を題材とし、修学旅行をはじめ、平和を愛する人たちが挙って来島いただける平和学習の島を築きあげたい。徒に仮想敵国を祭り上げ不安を煽るタカ派の国会議員達が集うことで注目される島に、決してしてはいけないと思う。
沖縄県庁の方によれば、離島ならではの困難や不便さのことを、沖縄の方言で「離島苦」と書いて「シマチャビ」というそうである。多少の違いはあれども対馬と共通した苦難がありますね。お互い協力して「シマチャビ」を克服できるよう頑張りましょうとのメールをいただいた。正式に政務調査の受け入れを申し込んだのは今年に入ってからというタイトなスケジュールであったにもかかわらず、快くお受けいただいたうえに多くの貴重な資料や情報を提供いただいた沖縄県庁をはじめ訪問先の担当者には大変お世話になりました。また、事前資料作成に当たり、長崎県政策企画部や長崎県病院企業団、門司税関厳原税関支署、海Loveネットワークの方々にもご協力をいただきました。関係各位にこの場を借りて改めて厚く御礼申し上げますとともに、今後の議員活動に反映させるべく精進して参りたいと存じます。